19.オトルスのプチ祝賀祭ときらきら屋さん
今更ですが、作中の名前は、一部以外全て適当に単語を並び替えたりして決めてます。
こんな名前存在しないだろ…というのもあると思います。
日差しの強い昼下がり、オトルス領では一部の者達だけで祝賀祭が行われていた。
普段はかなりの規模で行うはずなのだが、今回は大きめの部屋一つだけの規模だ。
領主に加えて関係の深い者のみ集まっているのだ。
領主のディバに、一人の男性が近付いてくる。
「流石はディバ殿、【迷いの森】を他領に押し付けるとは。見事としか言いようがありませんな」
「人聞きが悪いぞ、バスカ。涙を堪えて領土を明け渡したのだぞ?」
バスカと呼ばれた者は、笑いをこらえながら、「悪いお人だ」と言う。
「知っての通り、ロークス殿があまりに可愛そうなので、私は鉱山資源をプレゼントしましたよ」
「あれを資源と言うか。まあ資源は資源か、有用とは言わないがな!ガハハ!」
「たまたま、殆どの生物に有害なだけですな」
このバスカという男、不要な領土を押し付ける策に乗じていた。
オトルス領内の川に鉱毒が流れ出していたのだが、毒を吸い上げる装置で対応した後…
吸い上げられた毒の捨て場所が無いため迷いの森に投棄したいと打診したのだ。
仮に領土を押し付けられなくても、それはそれでオトルス領内に捨てているので問題ないという作戦だ。
ベチュラが吸い取った毒というのはこれの事である。
「まだ公表はしていないが、追加で良いニュースが二つあってな」
「何です?気になりますな」
「ロークスのやつが降参して、合意書に印を押したものを寄越した。これがまず一つ」
「おお、これで領主会議が楽になる、と」
「そうだ。二つ目は、満足に働けない奴隷を多数買い取りたいという話を振ってきた」
「働ける者ではなく…?意図が読めませんな」
ロークスは合意書を送る時、幾つか行動をしていたのだ。
その一つがまともに働けない奴隷の買取である。
条件として、言葉を理解出来る事と犯罪歴が無い事。
これを満たす者であれば、高くはないが多数買い取るという話だ。
「大方"資源"撤去の為に恩を売っておきたいのだろう。不良債権が片付いて良い事ではないか」
「だとすると、その後どう対応するのです?」
「ゼロベースで撤去費用の相談をしましょう、だな。ガハハ!」
「そこからまた話が膨らむのでしょう?私なら自害する所ですよ。ハハハッ」
祝賀祭はとても楽し気に進行し、昼だというのに酒を飲んでいる者も多数居る。
大きな問題が一気に解決したとみて気が緩んでいるのだ。
この状況は夜まで続き、その間領民は働き続けている…
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一方こちらはイスカ領、トリナムという農村だ。
いつの間にか、ここに滞在しているメンツが追加されている。
イスカ領主のロークス、冒険者のフラックが合流したのだ。
話があるようで、魔女とその二名だけで話を始める。
「魔女殿、奴隷の買取は成立しました。まず明日、五人ほどを連れて来るようです」
「感付かれなくて良かったわ。そこは賭けだったから」
「俺は詳しく聞いてないんだが…働けない者を買い取ってどうするんだ?」
フラックが質問すると、魔女とロークスはにやりと笑う。
「あの子たちのように、パペットにするのよ」
「そして教育に付いて来れた者をここの住民にして、他領に快適さをアピールするの」
パペットについては既に説明を受けていて、現物も見ているが…
フラックは何に向かっているのかピンとこない。
「フラック、例えば…奴隷が貴族より良い暮らしをしていたら、どうなる?」
「うーん?もし俺が奴隷だったらそこへ行く事を考える。が、当然受け入れられ…」
フラックが何かに気付く。
「移民受け入れ…この為か!」
「うまくいけば、勝手に人が増えていく…」
合点がいった顔でその後の事を考え始める。
元々あれこれ考えるのは好きなようだ。
ロークスはさらにその先の話を進める。
「魔女殿、以前質問した件は何とかなりそうでしょうか」
「大丈夫よ。そういうのが得意な、タイタニアちゃんを呼ぶから」
この村の規模なら数時間で破壊しつくす事が出来る…というような物騒な話が続く。
…
パペット三人組は暇になってしまったので、三人で固まって村を見て回っていたのだが…
何かの建設予定になっている土地で知った人影を見かける。
その人物もこちらに気付いて、手を振りながら向かってくる。
…が、とても人が出せる速度ではない。
三人の前で停止し、ぺこりと頭を下げた後…
「こんにちは!」
普通の挨拶なのだが、三人は固まってしまう。
以前森で遭遇した、アンデッドの少女である。
「お、おい!お前は消えたはずだろ!」
「これピンチじゃ…」
「まず鑑定しろと教わりました」
グリンはフラックから色んな事を教えて貰っているのだが、これだけは守れと言われている。
後に、フラック一族やチルドレンだとか言われる事になるが…遠い先の話である。
鑑定アイテムは、魔女に頼んで三つ以上常備している。
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種族:フォレスト・パペット Lv180
能力:稼働マナ軽減
技能:
<魔法石生成> マナを消費して特定属性の魔法石を作る事が出来る
<魔導爆破> 魔法石を使った攻撃の威力を上げる
<魔導誘爆> 魔導爆破の効果を大きく上げる
<加速装置> 注視している相手の近距離攻撃を回避する
<セルフメンテ> 【多面機構】を自由に改造と並べ替える事が出来る
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「「「パペット…?」」」
「あの時のお姉ちゃんに、体を作って貰ったの!」
そう、以前迷いの森で戦った後、魔女の手で作られたのだ。
かわいそうな程改造されていた訳だが、元に戻せる情報を取っていて、そこから再現したのだという。
勿論危険な能力は全て排除してあるのだが…自力で別のものを付けてきたようだ。
復讐にでも来たのかと思うと、そうではないようだ。
鞄からごそごそと赤い石のような物を取り出し、見せて来る。
「えっとね、この"きらきら石"のお店を作ろうとしてるの」
「これは…魔法が封じられている?もしそうなら、適性が無い人が使えたら嬉しいですね」
グリンが感想を言う。
少女は理解者が居た事が嬉しいのか、グリンに渡して手を握る。
「持ったまま空を見て、燃えろと念じると…」
言い切るより先に魔法石が起動する。
非常識のせいでグリンの順応力が上がっているのだ。
ドガァァァ!
空に大爆発が起きる。
攻撃魔法高レベルのものを使えないグリンが、凄まじい爆発を起こす。
火魔法で言えば、Lv100は超えている。
「「「はあ!?」」」
「適性が無くても魔法を使える、当店自慢の超高級品でーす!」
村の住人もこちらを見ている。
まんまと宣伝に使われてしまったようだ。
これをチャンスだと思ったのか宣伝を続ける。
「【きらきら屋さん】店長の、ピナです!」
自信満々のポーズで胸に手を当てる。
また名前ではサービス内容が判断できない店が増えてしまうようだ。
クエラセルとグリンが、戦術に使えそうなので真剣に議論する中…
リコラディアは自身の存在意義を問いかけていた。
ゲームでは、イベントクリアしていくとトリナムの店がどんどん豪華になっていくんですが…
今回の例では【魔法石店】と【きらきら屋さん】の二種類があって、何だこの名前?というやつが上位版の店になります。
他にも【ズバシュー屋さん】(武器屋)とかがあります。