17.勇者ジャスティス・ポアナと負の連鎖
今回ダンジョンの話が出てきますが、入りません。
入った場合の話を考えてみると非常に単調だったので全カットです。
あと、黒爪ギルドの人物が出揃わないと進まないイベントがあるので、ちょこちょこ出していきます。
大体出るたびに何か壊れます。
未知への探求、それは冒険者にとってポピュラーな動機である。
お宝や不思議な現象等、個々にとって価値あるものを探しに行くのだ。
冒険者ではないが、出発の時が近付いている者たちが居る。
ここは【迷いの森】、魔女の住居だ。
魔女とパペット三人組が集まり、話をしている。
「今日は森の外に出た時の話をするから、よく聞いてね」
「まず大前提として、マナが減ってきて危なそうなら、戻ってくること」
そう、パペットはマナで動いているので、切らしてしまうと実質死亡したようなものだ。
道中はグリンがマナを吸い取って分配し、持たせる。
グリンが動けないほどの重体になってしまうと、一貫の終わりだ。
一応マナを含んだ水等で少しは耐えられるが時間の問題である。
「当面は、これを使って活動範囲を広げていく活動をする事になるわ」
魔女は謎の布袋と、植物の種らしきものを持っている。
「この種を撒くと頑丈な草の絨毯が出来上がって、その上にマナを走らせる事が出来るの」
「外に行く時、こまめに撒いて行ってね」
「どんな草かは見てもらった方が早いかな?」
そういって、以前使った鑑定魔法に似た魔法を使う。
「雑草を品種改良した結果こうなりましたー」
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種族:ジャスティス・ポアナ Lv15
状態:種
能力:マナ収集 マナ運送
技能:
<雑草魂> 草一本生えない劣悪な環境でも生きていける
<正義の心> 付近の衰弱した対象に、自身の体力とマナを分け与える
<百折不撓> 根の細胞一つからでも復活する
<自己犠牲> 周囲の毒を浄化するが、自身が死亡する
<仲間想い> 生態系を破壊しない
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「草に負けた気がする」
「ま、まぶしすぎるわ…」
「毒持ちに食べさせた結果が気になります」
様々な意見が出る。
「さて、今見たこの子を保存用の布袋に入れて、思い出した頃に撒いてくれれば勝手に育つわ」
「とりあえず、扱いが上手そうなグリンに預けておくから」
「分かりました」
グリンは腰に布袋を付けておく事にしたようだ。
「今後の方針はアナタ達に任せるけど、近いうちに森を改造するから憶えておいてね」
「外資獲得のための施設…"ダンジョン"を作ります」
「入場料にマナや金品を要求すれば、間接的に人を使えて楽出来そうでしょ?」
想像が出来ないので「ふーん」で終わる内容だが、一人だけ違う反応する。
「本当か!規模が大きいなら…俺にもチャンスが回ってくる」
クエラセルには嬉しいニュースらしいが、別にダンジョン自体はどうでも良いと話す。
過去に何かあったらしく、それが今回の話で解決するかもしれないのだ。
「中に入るのは外部の人達と敵役だけよ?こちらサイドは眺めて待つだけ」
「それで良い。人探しだからな」
クエラセルは機嫌良く納得している。
魔女は、一日一回の入場権をオークション…などと黒い案を呟いている。
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一方、ギルド【黒爪】では…
「ボルドー、今日はいつもの酒を飲まないのか?」
「フッ、今までの安酒で満足していた俺とは違うのさ」
ギルド内の飲食スペースで二人が会話している。
ボルドーと呼ばれているのは、以前宝石を破壊した男性だ。
「じゃあ何にするんだ」
「水と硬いパンをくれ…」
「…」
実は宝石代を弁償するため、節制しているのだ。
食事を抜いては無理が出るので、禁酒と、夜の食事をグレードダウンした。
心掛けは立派だが、初めから自重することは発想にない。
「ククッ…お前に相応しい素敵な食事じゃないか」
「あぁ!?」
先に食事していた魔導士風の男性が笑いをこらえている。
ボルドーはパンと水を叩きつけるように置き、男性の元へと行く。
「まあ落ち着け。それ以上近寄ると、明日の仕事に影響が出るぞ」
「確かに。お前の仕事だけだがな」
「…気に入らんやつだ」
ピリピリした雰囲気の中、注文を聞いていた男性が気付いて止めに入ろうとするが…
「消えろ… アイシクル・ランス!」
「当たんねーよ」
「ロック・スタンプ!」
「余裕余裕、俺からも一撃だ!」
「くっ…」
実はボルドー、案外強いのだ。
巨大な氷の槍や岩の塊をスイスイ避けてパンチを食らわせている。
「ああぁ…修理したばっかりの店が…」
既に床は全張替えが必要である。
厨房に氷の槍が突き刺さり、これも修理が必要だ。
被害者となりえるのは、ギルドマスターだけではないのだ!
「お前にだけは負けん! ダーク・ソード!」
「あ、あれは…店終わったな」
…
「ボルドー、デスピオ、この状況は何です?」
飲食スペースが店ごと全壊、余波で倉庫と受付の一角を破壊したところ、ギルドマスターのフェイリアが駆け付けたのだ。
デスピオと呼ばれているのは、魔法を使っていた男性だ。
「「こいつが暴れてこうなった」」
お互いに指を差して押し付けあう。
こういう時だけは息ぴったりの組み合わせなのだ。
両名、実力はあるのだが、喧嘩腰なのですぐに衝突する。
ここはフェイリアが状況を確認して、"刑"を決める。
「ボルドーは井戸水汲みを三人分追加」
「うげ…」
「デスピオは修理代全額負担とギルド内の汚水溝を全て掃除」
「は?冗談でしょう」
「元々最初に仕掛けた事と、破壊の殆どはあなたの魔法です。異論がありますか?」
「クッソオォォォ!!」
実はデスピオ、普段はクールを装っているが、とても乱暴な性格と言動である。
しかし勝てない相手には挑まないので今まで生きて来れている。
「はあ…折角リフレッシュしたというのに台無しです」
フェイリアは問題を解決したら、財政状況との戦いを始めないといけないのだが…
ガシャーン
遠くから何かの壊れる音と、何者かが走る音が聞こえる。
ゲームでは、草を植える活動をすると種を選べるのですが、文面では伝わりにくすぎるのでポアナだけにしました。
種を作るにもマナが必要ですが、ポアナは植えて時間が経つほど勝手に増えてマナを運んでくるので序盤にぴったりです。
設定的には、熱を加えると食用(超苦い)です。