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10.闇夜の剣閃

次の展開に行く前に、育ち具合の確認のため、ソロ特訓シーンを挟みました。

無茶な特訓等で密かに鍛えられています。

完全に日が落ちた【迷いの森】、魔女の住居にパペット三人組が集まっている。

森に隠された仕掛けを見た後、戻ってきたのだ。


魔女は戻った後すぐ何処かに出かけてしまったので、三人だけだ。

今日は自由時間、明日は森の中で自主訓練をするように言われている。

夕食の野菜スープを食べつつ、何をするか話し合っている。

本来パペットなので食事はしなくても良いが、人の心を忘れないように食べる習慣は残した。


「ちょっと気になる所があってな、とりあえず夕食の後そこへ行ってみたい」

「誰か一緒に来るか?」


そう言ったのはクエラセルだ。

なんでも、ここに戻る途中の道で謎の明かりを見つけたのだという。

火を使ったものではない、鈍い反射光のようなものだと話す。


「気を付けるのよー わたしは保湿に忙しいからパス」


保身ではなく保湿である。リコラディアの場合は言うまでもなくお肌事情だ。

パペットなので必要ないのだが、重要性を感じなくなると終わりなのだそう。


「気になります…が、夜出歩くより明日全員で行けば良いのでは?」

「それとボクは日課のメモ整理が追い付かないので、今日は行けません」


グリンの方は真面目を絵にかいたような行動だが、この森ではむしろ珍しい性格だ。


「夜だけ起きる現象かもしれないからな…今日のところは一人で偵察だけしてみる」

危険生物は居ないという話だったしな、と言いスープをかき込む。


-------------------------------------------


「さて、この辺のはずだ」


クエラセルは、歩道から少し脇に入った道なき道を行く。

草丈が腰辺りまであるため、地味に体力を減らされる道のりだ。

火の魔石を使った簡易ランタンを持っているのだが、時折消して様子を見てみる。

…が、特に光るものはない。


「見間違いだったのか…?」

「休んだ後、少し進んで何もなかったら戻るか」


丁度草丈が低い所に出たので、座って休憩することにした。

ランタンを置き、鉄のカップに水を入れぐっと飲む。

実はこの水、グリンに頼んでマナを注いでもらっている。

疲労回復などの体調管理に使えないかの実験だ。


カップをしまう前に、水分を飛ばすためにカップを勢いよく振る。

…その瞬間。


ガキイィィン!


一瞬鈍い光が見えたかと思うと、何者かによってカップが弾かれる。

後ろの木に当たり、跳ね返ってクエラセルの前に落ちるが…鉄製だというのに切り傷が入っている。


「何者だ!」

問うが返答はなく、動く気配も見せない。


目を離さないまま、ランタンの光量を最大まで上げる。

段階的に調節できるのだが、最大では五メートル程の距離までは明るくなる。

そこには、百五十センチ程の細い木が生えていた。

筒状の葉が付いており、その葉の中に別の葉が収まっている不思議な恰好だ。


「木…?まさかこいつが?」

警戒を解かずに観察していると…木がゆっくりお辞儀するように体を動かす。

そして次の瞬間、筒状の葉から、勢いよく収まっている葉を取り出した。

金属がこすれる音が聞こえてくる。


よく見ると、取り出した葉の外周が光を反射している。

クエラセルが見たのはこの反射光であった。


木が、取り出した葉の一つをこちらに向け、剣の方に向かって何度か突くような動作をする。

かかって来いと言っているのだ。


「これはとんでもない訓練になりそうだな…」

「だが、好きなように動けるのは悪くない」

剣を構えると、木も構えを直す。


実はこの木、ブレイド・サッサというLv20の近距離戦特化の植物だ。

耐久面は無いようなもの、遠距離攻撃を一切しない、更にその場から動かないため魔法で楽勝な相手なのだが…

攻撃性に突き抜けており、近接戦闘ではLv40以上相当とも言われる。


「まずはその葉を貰おうか!」

武器と思われる葉が六つ付いているため、全て同時に操作された時のことを考え数を減らす作戦だ。


ボキッ!


枝ごと葉が落ちる。

想像以上に脆かったことに、クエラセルは逆に驚いた。

ブレイド・サッサは、葉の二つをキンキンと打ち鳴らしており、喜んでいるようにも見える。


「これなら行けそうだ。残りもいただいて行くぞ」


改めて剣を構え直すと、ブレイド・サッサは、構えを変え…

当たらない距離で、二つの葉による凄まじい剣舞を見せる。

葉は長さ二十センチ程しかないが、風を切る音が聞こえてくる。

そして、暫くすると止まり、葉の一つをこちらに向け、突くような動作をする。


「何だこいつは?なぜ先に動きを見せる?」

謎が深まるばかりだが、勝機のある強敵とみて挑んでいく。


ガキン! カァン! ガキイィィン!


森でするはずの無い音が途切れなく聞こえたまま、数分が過ぎる…


「あ、あぶねぇ…」


クエラセルはあちこちにかすり傷を負っている。

一方、ブレイド・サッサは追加で枝を二つ落とされている。残り三本だ。


やはり葉の二つをキンキン打ち鳴らした後、構えを変え…

今度は三本の葉による剣舞を見せる。

二本は今までと同じ動きだが、合間合間に三本目の一際鋭い攻撃が挟まる。


「三本目に当たるなという事か。しかしこれは死ぬかもな…さてどうする」


クエラセルは命の危険を感じたが…

ブレイド・サッサは、容赦なく葉の一つをこちらに向け、突くような動作をする。


踏み込みを使いつつ二本をかいくぐり攻撃するが…

三本目がうまくスキを潰しているため攻めきれず、かといって捨て身では大惨事になるので防御を放棄することもできない。

色々と試してみるが決定打にならず、疲労が溜まり膝をつく。

傷もかなり増え、長引くと危なそうだ。


「くそっ!何かが足りていない…一体なんだ?」


考えていると、ブレイド・サッサは二つの葉を収め、残った枝をプルプルさせ…

近くにあった木を凄まじい力で縦に斬り、深々とえぐる。

そして…葉の一つをこちらに向け、突くような動作をする。


「…そういうことか、先に一撃で倒してしまえば勝てるわけだ」


クエラセルは、ベチュラの試験時に放った技を思い出し、力を溜め…全力で放つ。

「これで…どうだ!」


ガキイィィン!


なんと、あっさりと剣を弾き飛ばされてしまう。

ブレイド・サッサは、葉をキンキン打ち鳴らした後に収め、お辞儀をするような動作をする。

それ以降動かなくなり、森に静寂が戻る…


「あれは…鍛えてくれたという事、なのか?」


持ってきていた水をブレイド・サッサの根元に掛けてやり、お辞儀をしてから来た道を戻る。

ゲームでは、ブレイド・サッサ自体は素材しかないのですが、今ある素材を生かして登場させました。

一応繋がるようなイベントはあるんですが、再登場するかは未定です。

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