9.大魔法の片鱗と小さな天才
まだ出てない他の勢力を混ぜなくて本当に良かった。そう思いました。
やっと作品タイトルの話を入れられます。
【迷いの森】では、当面の問題が片付いたことで次のステップの話に移ろうとしている。
話をする前に見る場所がある、ということで…
魔女とパペット三人が、ある一区画を隅々まで踏み抜くような形で森の中を歩いていく。
行き止まりに着いたりもするが、迷っている訳ではない。
もちろん、あえての徒歩だ。
「はい、歩くのはこれでおしまい」
一時間ほど歩いた後、最後の行き止まりにある広場で足を止める。
時間経過で辺りが薄暗くなった以外は、目ぼしい変化はない。
パペット三人は何の意味があったのか理解できていない。
「次は、そこの水を飲んでね」
広場の奥に小さな泉が複数ある。
三人は言われた通りにするが、特におかしな所はない。
「さて、何かに気付いた人は居ますかー」
残念ながら誰も返事をしない。
それを分かっていたかのように、魔女は泉の前に移動する。
片手を泉の中に入れ、しばらく待つと…水がキラキラ光り始める。
「ではヒント、この水をもう一回飲んでみなさい」
三人はもう一度同じように飲もうとするが…
「何だこの水?触れられるが…飲もうとすると、口の中に入る前に消滅する」
「わたしは飲めるけど…」
「これは水ではなくて、目に見える量のマナですか?」
「はい、正解者が出ました」
「それはマナそのもので、収めきれない量を取り込もうとすると、入らない訳ね」
魔女は嬉しそうな顔で返答する。
三人はすくった水を見つめて固まっている。
普段から馴染みがあるとはいえ、この量を下手に扱うとどうなってしまうのか想像できないのだ。
魔女が「次のヒントはね」と言い、地面をトントンと叩く。
瞬間、泉からマナが溢れ、森の歩道の上を塗りつぶすように広がっていく…
行き渡ると歩道が金色に光り、空気が振動する。
「リコラディア、答えをどうぞ」
「ええっ?」
今度は名指しされ、不安そうだが…心当たりが無い訳ではないようだ。
「自信はないけど…魔導回路、かな…?」
「はい、よくできました。勉強していた証拠ね」
パチパチと拍手され、少し照れくさそうにしている。
が、クエラセルとグリンはピンとこない。
「分かりやすく言うと、さっき歩いてきた部分が魔法の設計図になっているの」
「そこにマナを大量に流して…行き渡ったらあとは発動するだけね」
「え…これを発動したら一体…」
「今日の部分は何の術なんだ?」
リコラディアは感付いたのか少し怖がっている。
そして、珍しくクエラセルが魔法の話に食いついてくる。
「みんなの使っているような術で換算すると…風属性全体魔法のLv3000分と似た感じ?」
輝いている床の上で三人が抱き合い、震えているシュールな光景が出来上がる。
それもそのはず、下手に動いたら自分が消えるのではないかと思う程のエネルギーが集まっている所でそんな情報を持たされたのだ。
魔女は見せたいものを見せ終わったので、元の状態に戻していく。
「あはは…まあ、そのうち慣れると思うわ」
魔女は笑いながら言うが、三人にとってはトラウマものであった。
「森中にこれと同じ仕掛けのものがあって、それらを同時に起動することで一つの大魔法が発動する…」
「ただしその起動までにマナが全く足りないから、三人にはマナ収集を手伝ってほしいの」
「あ、もちろん攻撃魔法ではないから安心してね」
ちなみに攻撃魔法にするとレベル十万台は軽く行く、と言われ三人は抜け殻になる。
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その頃、オトルス領では…
「おい、急げ!早く運び込まないと見つかって首切られちまうぞ!」
「そうは言うがよ、コイツこぼしたりしたら全員死ぬぜ?」
「まあ慌てるな。こんな時間にこの場所で出会うのと言えば魔物くらいだろう」
謎の団体が大きな筒状の荷物を運んでいる。
オトルス領南側にある【迷いの森】の周辺に置いていく。
最後の荷物を運び終わったのか、多数いた人影はバラバラに撤退する。
一人だけ残って様子を見ている。
「アンロック」
最後に残っていた一人が魔法を使うと、人影は完全に消えた。
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遥か遠方の墓地…
「ママ、【動屍機構】の作り方、教えてほしいな」
「今更どうするんだい?アンデッドも作らないよ」
「えっとね、この体にある魔導回路ってやつ、改造したいの!」
「こんな風にして…【動屍機構】をこうして…」
新たな体を手に入れた少女が、粘土質の地面に図面のような絵を二つ描いていく。
魔導回路の絵と…もう片方の絵は網目状に模様が付いている。
「それじゃあダメだ。バランスが取れなくなって崩壊する」
「ううん、こうするの」
網目状の絵を薄く掘り起こし、もう一つの絵の上にそれを乗せる。
そして境目に水をつけて擦ると、上下の絵がくっつく。
「こ、これは!」
「それでね、これを…」
また絵を掘り起こし、今度は横と裏側に網目を入れる。
「じゃーん!名付けて多面機構!」
"絵だった粘土塊"を見せる。
上下がくっつき、魔導回路が見えなくなった状態で網目が全面に張られている。
「困ったな、私は死ねないじゃないか。この先を見てみたい」
ふう、とため息をついた後、少女に技術を伝授していく…
ゲームでいう所の進行ですが、前話の形態で襲ってくるのが少女を最後まで倒した場合のお話で、今回は少女イベントの前に頭蓋骨を倒した時のお話です。
諸々のカットを繰り返している内に、何かいい感じで入ったので混ぜてみました。