8.全自動清掃用アンデッド
書き忘れてましたが、スキル的なもので武器が付いている時、それを解除しないと素手になれません。
あと、命属性と死属性の解説をするつもりでしたが、タイミングを失ったのでちょっと書きます。
普通の種族は生死判定が初期値1で、0になると生きているけど意識なし。
-1になると体力まんたんでも死…という特殊な判定です。
命属性はこれを増やす、死属性はこれを減らすものが多いです。
アンデッドは-1以下で生存、0以上で死になります。
即死系が欲しかったんですが安直すぎたのでこんな感じになってます。
自然に囲まれた空間に数人が集まって、のんびりと休憩している。
【迷いの森】の中にある、キャンプに向いていそうな開けた場所だ。
客人のロークス、フラック両名とのやり取りも終わり、後は帰るだけとなったのだが…
グギャアァァ…
断末魔のようなものが聞こえる。
「あら、結構早く来そうね」
魔女は楽しそうに何かを待っている。
当然それ以外の者は言っている事の意味が分からない。
「はい、パペット三人衆集合!」
「予定より早いけど、実戦訓練をしてもらいます」
なんと唐突な訓練が始まった。
「クエラセルとグリンは前に出て、リコラディアは二人の後ろへ」
魔女がてきぱきと指示していく。
今回の作戦は、クエラセルが敵を引き付けて、その間にグリンとリコラディアで仕留める形だ。
客人二人は後ろで見ているように指示する。
準備が終わり、暫くの静寂の後、初陣の敵が現れる。
「あは、あはは 美味しそうなのが、たくさん。迷っちゃうね」
「あはぁ…」
敵らしきものは、ゆっくりこちらへ歩いてくる。
尋常ではない殺気を放っている。
「何なんだコイツは!」
もはや反射で鑑定しているフラックが、声を上げる。
なまじ高性能なアイテムのため、色々見えすぎて理解が追い付かないようだ。
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種族:リビングデッド Lv180
状態:能力低下(40%) 体力低下(10%)
能力:擬態 復活(10回)
技能:
<集魂結晶吸収> 命属性の魔力を体力に変換し、解毒する
< 惨劇> ステータス開放、生物全てに攻撃、体力全回復で停止
<死双刃> 死属性武器x2 【対象の命属性-1】付与
<体力吸収> 生物の命属性が-1になった時、対象の残体力を全て吸収
<自分改造> 自身の【動屍機構】を自由に並べ替える事が出来る
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「非常識な存在に対して、常識で相手取るのがダメな例ね。大丈夫、勝てるから」
「アーク・リプレイス」
何かの魔法を使うが何も起こらない。
「それからこれと…これと…よし」
「ほら、行った行った」
魔女がクエラセルとグリンの背中をグイグイ押す。
しかし、明らかにとんでもない存在を前に腰が引けている。
だが、そうこうしている内に、小さき襲撃者の間合いに入ってしまう。
「いひ、いひ いただきまーす!」
見た目からは想像できない速度でクエラセルに飛び掛かる…
ように見えたが、無理な方向に体を曲げ、傍に落ちていた紙くずに攻撃する。
そして紙くずが消滅する。
「あれ…?」
「なに…これ…こんなのイヤ!」
何やら怒っている。
そして体を確かめるような動作をすると…
バチン!
妙な音がした後、少女らしきものが粉々になる。
…が、すぐに再生する。
付いていけないフラックが半ばヤケで鑑定アイテムを使う。
今日だけで半年分ほどの収入が飛んでいる計算だ。
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種族:リビングデッド Lv180
状態:特になし
能力:擬態 復活(9回)
技能:
<集魂結晶変換> 所持している命属性の魔石をゴミへ変換する
< 活劇> ステータス開放、攻撃された場合必ず反撃する
<素敵刃> 木製武器 【ダメージ1固定】付与 ゴミを優先で狙う
<素敵吸収> 落ちているゴミを吸収する
<素敵改造> 清掃に限り他者が【動屍機構】を操作可 自身が操作した場合命属性+1
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「やつを外から操作した?…訓練と清掃特化で」
「これはもう、気の荒いペットよりも安全な存在かもしれないな…」
ロークスとフラックは敵に対して本気で同情した。
「この訓練で、一時間耐えたら解放してあげるから頑張りなさい」
魔女はアンデッドの少女に向かって餌をちらつかせて訓練を強化する。
「クエラセルは何としても自分に注意を向けさせる」
「リコラディアはとにかく魔法を当てる」
「グリンは回復しつつ相手のマナを吸い取る」
「これを意識してやること、相手は多くの命を奪っているはずだから遠慮無用よ」
訓練メニューが発表された。
「なに?こいつ想像以上に早いぞ」
「魔法が当たっても効いてないように見えるんですけど…」
「なかなか…維持が難しい相手です」
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一時間後…
一方的な展開だったが、規定時間になった。
それを待っていたかのように何かが現れる。
「まったく、自力で戻れないだけでなく教材にされるなんて…」
「…ママ!」
布に包まれた頭蓋骨と腕のようなものが浮いている。
全てを諦めたかのような雰囲気で、語り掛けてくる。
いつの間にか、アンデッドの少女が元気を取り戻して抱きついている。
「森の、久しいな。うちの子は好き放題されて再起不能だ」
「随分見た目が変わったけど久しぶり」
魔女と、頭蓋骨は見知ったような口ぶりで話す。
実はこの両名、以前は共同でパペットの原案ともいえる自動人形の研究を行っていたのだ。
しかし研究中にこの頭蓋骨の娘が重病にかかり、不治と分かると、怪しげな研究をはじめたという。
それ以来顔を合わせていない。
「見ての通り何をしても結果が出ない。この子も私も…もうどうでも良くなった」
「失敗しちゃったから、怒ったの?ママ」
少女が話しかけるが返答せず、おやすみ、と言い頭をなで…
「マ…」
途中で少女が粉々になる。
「あの墓で待っている。都合がよくなったら私を消しに来な」
アンデッドが増えると困るだろう?と言って脅威の存在は去っていく。
静寂が戻る。
「今まで生きていた事に感謝しなければいけないな、フラック」
「ああ、今日は初めての事が多いが…祈るのも初めてだ」
「アイテム切れで最後のやつが何者かわからなかった事だけが悔いだ」
今日一日でとんでもないものを立て続けに見た客人二人はどっと疲れてしまったため、
後日改めて今後の話をすることにした。
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遥か遠方の墓地…
「もうすぐ消えるとなると、見えてはいけないものが見えるのかね」
「無かったはずの花畑があるし、娘が居る」
「体はあの木偶か。あの状態からよくここまでやれたもんだ」
「ママー!」
「本当にあいつだけは嫌いだよ」
ゲームでは、墓場を見つけてボスの頭蓋骨に勝てれば仲間になります。
他のゲームと違って、ボス時のステータスのまま仲間になります。
戦闘では極端な高火力キャラですが、行動最遅で魔法以外の耐久が全くないので実際はなかなか難しいです。
MPがなくても、魔法石というアイテム(アイテムで魔法発動みたいなもの)で戦えるので準備さえすれば場持ちは良いです。
あの少女が街を襲うのは、ボツネタに書いてあったやつの関連スキルです。