~神話~楽園1
人はその昔、楽園に住んでいたとされる。楽園とは幸せがあふれる世界。神界と下界をつなぐ橋。ただ幸せなだけじゃ満足できなくなった人間は、神の住居へと足を踏み入れてしまう。それに怒った神々は人を下界へとおとした。下界は、厳しかった。暗雲と呼ばれる闇が世界の表面を覆い、自分たちも、地形も見えない。魔物と呼ばれる凶悪な生き物さえいた。そこで人間たちは知恵をしぼった。そして、その生活環境の差で、種族は分かれた。
一つ、街をつくり、そこに定住することで動きやすくなった人種。彼らは特徴こそないが、十人十色の種族として人数は増える一方にある。
二つ、外敵から隠れるため、深い森に住みこんだ長耳族。長い耳と火を灯すために発展した魔術。とても勤勉な種族として知られる一方、その人口は減少の一途をたどっている。
三つ、黒雲と呼ばれる死の海の近くに住み、敵はそこに追いやって生き延びてきた人魚族。人魚になった理由として、魚を食べすぎたせいで魚に近づいたという説と、黒雲の悪臭が原因だという説が有力。
四つ、人種と同じく街に住んでいたが、戦いすぎたせいで肉体が大きく変わり、威力のある大きな武器を使えるようになったオーク族。女のオークは、その大きな体に頭を悩ませるという。
五つ、小さな洞窟に隠れて住んでいたため、体が成長しなくなった小人族。手先が器用なので、細工などをつくることが多いが、どうしても戦うことにあこがれる男の子にとっては悲しい種族。
六つ、獣と共存しているうちに、獣の特徴を持つようになった獣種。時々野生の本能が出てしまう。それぞれの獣の特区長を引き継いでいる。
そして最後に、有翼種。大きな羽を持ち、空に住む、人間とはかけ離れた種族だ。その姿は謎につつまれている。
このように、たくさんの種族に分かれた彼らは、暗雲の世界を照らすために魔術を生み出し、世界の各地に「暗雲の光」という魔石をおいた。それにより、今日まで暗雲は明るく照らされて消えているのである。
~楽園~ 著者 不明
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「ゼイン。早く起きなさい。ご飯ができたわよ。」
僕は本から目をはなした。お母さんの声が聞こえてきたからだ。
「わかった!すぐ行く。」
僕は丁寧に本を本棚に戻すと、お母さんの声がするほうへと歩いた。家に暗雲の光のかけらがないせいで、何も見えない。
朝の静けさが残る馬車の中で、僕はふとこんなことを思った。暗雲の光は、心の暗雲も照らしてくれるのだろうか。




