ショッピングモール
「元気だねぇ……」
ショッピングモールの水着売り場でワイワイと騒ぐ4人の高校生くらいの男女を見ながら、僕は思わずそう呟く。
「ん?どーかしたの?」
「あ、いや、あそこにいる人たちが元気そうだなって思ってさ。」
「あー、たしかに。暑いのに元気だね。」
水着売り場の前に置いてあるソファーに座って休憩している僕たちは、アイスクリームを食べながらなんとなく水着売り場を見ている。
何故か荒ぶっているらしい女子を男2人と女子1人でなだめている光景を見るのはなかなか面白い。主に珍しいという意味で。
「そういえば、みぃは今年水着買うの?」
「んー、どうしようかな。去年買ったのあるし、たぶんプール行かないよね。」
「結局行くの面倒になって家でゴロゴロする気がするね。」
今日だって、急に母に強引に連れられなければ家で2人ゴロゴロしていたはずだ。
こんな暑い中どうして出歩かないといけないのだろう。
僕は持たされている荷物を見て、はぁっとため息を吐く。
ちなみに母は歩き疲れた僕らを置き去りにして何処かの服屋に行ってしまった。
「何しようね。」
「何しようか。みぃは何かしたいことある?」
「んー、なんだろ……特にないかなぁ……」
「だよね〜」
暑いとどうしてこう無気力になってしまうのだろうか。涼しい家でゴロゴロとしていたい。
あの荒ぶってる女の人の名前はあずきと言うらしい……などとどうでもいいことを考えながら、アイスクリームが溶けきる前に食べきってしまう。
アイスクリームが無くなってから10分くらいみぃと話をしながら待っていると、唐突に僕のスマホが震えてメッセージを受け取ったことを知らせてくる。
「どうしたの?」
「母さんが、『買い物終わったから帰るよ〜。車まで来て』だってさ。」
「なら、そろそろ行く?」
「そーだね、行こうか。」
僕が両手に荷物を持って立ち上がると、みぃが「あっ……」と声を出す。
「神様、荷物片方もつよ?」
「別にいいよ。これくらい持てるし。」
「むぅ……いいからいいから。」
みぃがそう言って荷物を奪おうとするので、僕は仕方なく軽い方の袋をみぃに渡す。
みぃはそれを右手で持つと、空いている左手を同じく空いている僕の右手に絡ませる。
「じゃあ、行こ?」
「うん、行こうか。確か屋上の駐車場だよね?」
「ボク、覚えてないよ?まぁ、違かったら他のところ探そう?」
「そーだね。」
僕たちはそう言い合うと、手を絡ませたままエスカレーターに向かって歩き出した。
ちなみに、車は僕の記憶通り屋上に停めてあって、そこで待っていた母に「遅い!」と文句を言われたのだった。




