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バレンタイン!




で、できたぁ……


ボクは、自分なりに上手くできたラッピングを見て安堵の息を吐く。

今日は2月13日。バレンタイン。

今作り終わったのは、当然神様に上げるためのもの。


神様はボクがなんとかして外出してもらったから、今家にいるのはボクだけ。

チョコを作ってることはバレてないはずだから、これはサプライズ。

バレないために使った調理器具をちゃんと元の場所に置いておいたし、できたチョコは鞄に隠しておいたから、きっと神様は気づかない。


ボクは明日渡した時の神様の反応を想像して、思わずにやけてしまう。

喜んでくれるかな?びっくりするかな?

もしくは……


「ただいま〜」


玄関のドアが開いた音がしたと思ったら、神様のそんな声が聞こえてきた。

ボクは座ってたソファーから立って神様を出迎える。


「おかえり、神様。」

「うん。いやぁ、外すごい寒かったよ。あ、これちゃんと買えたよ。」


そう言って神様が手渡してくるのは、神様を外出させるために買ってきてほしいと頼んだもの。


「ありがとう、神様。」

「ううん。ちょうど僕も外出する予定だったしね。」


神様とそんな感じで話しながら、二人揃ってリビングに入る。

すると、神様は「ん?」と声を漏らした後、すんすんと匂いを嗅ぐ。


「あれ?なんかチョコの匂いしない?」


……あ、忘れてた。

神様、すごく嗅覚がいいんだった。


「えっと、そ、それは、ボクがさっきまで板チョコ食べてたからじゃないかな?」


ボクはそう言ってゴミ箱に入ってる板チョコの空箱を指差す。

あれはチョコを作るのに使ったものだけど、たくさん失敗しちゃったから、その分たくさん板チョコ使うことになった。

だから、今ゴミ箱にはかなりたくさん空箱があるんだけど、もともとボクは甘党だから、誤魔化せる……はず!


「あ、なるほど。こんだけ食べたらそりゃ匂いするよね。って、かなり多いじゃん……」

「チョコたくさん売ってて、つい食べちゃった。」

「まぁ、僕も甘いもの好きだし、その気持ちわかるよ。」


そう言ってうんうんと頷く神様。

よし、なんとか誤魔化せたみたい。






そして、一夜が明けて今日は2月14日。

ついに、バレンタイン当日!


ボクはそわそわしてるのがバレないように普段どおりに振舞って、放課後になるのを待った。

教室とかで渡すのはなんとなく恥ずかしかったから、家に帰ってから渡すつもりだった。


だったんだけど……


「タイミングがない……」


ボクは、思わずそう呟いて溜息を吐く。

いざ渡そうとすると、ちゃんとできてるかとか味は大丈夫かとかいろいろ心配になって、結局渡せてなかった。

どうしよ……渡せないのはやだけど、渡すのも怖い……


「みぃ、どうしたの?なんか心配なことでもあった?」

「え?い、いや、大丈夫。」

「そう?ならいいんだけど。なんか、思い詰めてるというか、そんな風に見えたから。」


神様はそう言うとボクの目を覗き込むように見る。

心配するような神様の目が、なぜかとても安心して、ボクは思わずくすりと笑ってしまった。

そしてボクは手の届く距離にある神様の顔に手を伸ばして、両手で頬をおさえる。


「みぃ?」


神様が不思議そうに呟くけど、ボクはなにも答えない。

その代わりに、神様の唇に自分の唇を重ね合わせた。

しばらく神様の唇を堪能してから顔を離すと、不思議と決意が固まっていた。


「ねぇ、神様。今日、バレンタインだから、作ったんだ。」


そう言って、手の届くところに隠しておいたチョコを神様に手渡す。

神様は一瞬キョトンとした顔をしてたけど、次の瞬間には嬉しそうに笑顔を浮かべた。


「ありがとう、みぃ。大事に食べるね。」

「うん。ホワイトデー期待してる。」

「そっかぁ、困ったな。みぃの手作りチョコの三倍のものを用意できる気がしないや。」


そう言って困ったような笑顔を浮かべる神様に、「神様がくれるものならなんでも三倍以上だよ」と言おうとして、やめておいた。

たまには、考えてる神様を見るのも悪くない。



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