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プロローグ




ボクがその人に出会ったのは、幼稚園のときだった。

そのときのボクは、他の人がなにを話しているのかよく理解できなくて、暗号を解いているみたいで、ただただ不安だった。

でも、そんな時に、『神様(かみさま)』は優しく話しかけてくれた。

ボクがわかるように、ゆっくり、優しく。

だから、ボクは一人にならずにいられた。

今思えば、その頃にはもう神様のことが好きだったんだと思う。

神様が自分のことを『僕』って言うから、ボクも真似して『ボク』って言うようになったし、神様が笑った顔をボクも真似した。

ボクはとにかく、神様と同じようにありたかったんだと思う。



次に救われたのが、小学校三年生のとき。

その頃から、ボクはみんなから悪口を言われたり、嫌なことをされるようになった。

ただ、それが辛かった。怖かった。

やっと他の人とまともに話せるようになったと思ったら、みんなはボクを拒絶した。

もう嫌だ。そう思ったとき、隣のクラスのはずの神様が、教室に入ってきた。


「みぃに、何してるの?」


そう言う神様は、とっても怖くて、でも、滅多なことで怒らない神様がボクのために怒ってくれたのが、嬉しかった。

これは後から聞いたんだけど、あのときに神様がボクの教室に来てくれたのは、一緒に登下校したときのボクの様子がおかしかったからだったみたい。


「自分たちと違うから、変だから、あんまり話さないから。みぃが何か言われたのも、たったそれだけの理由なんだよ。

だから、みぃは悪くない。悪いのは、あいつらなんだよ。」


帰り道、頭を撫でながらそう言ってくれた神様に、ボクはどんなに救われたんだろう。

今でも、感謝してる。



そして、小学校五年生のとき。

ボクは、大事な、かけがえのないものを失くした。

お父さんとお母さん、たった二人だけの家族を、自動車事故で失くした。

歩いていたお父さんとお母さんに、車が突っ込んできて、帰らぬ人となったと、真っ白な頭で聞いた。

でも、嫌なことはまだ続いた。

ボクは、親戚から厄介者として扱われたんだ。

「あなたの家が引き取るべきだ」とか、「あんなの引き取りたくない」とか、親戚以外もいるお葬式で騒いでいたのを覚えている。

それを見てボクは、誰のところに行くことになっても、全部失くしちゃうんだと思った。

どこに行っても、そこに神様はいない。

ずっと励ましてくれた神様も、家族も失くすんだから、もうどうでもよくなった。

そんなとき、神様がボクの前に来て、ボクの両肩に手を置きながら、目を見てこう言った。


「僕の家に来なよ。お父さんとお母さんがどう言うかわからないけど、絶対説得してみせるから。

僕の家なら、僕が守ってあげられるから。一人にさせないから。」


その言葉は、冷えた心に暖かく入り込んで。

暗い海の底に光が射した気がした。



だから、神様はボクにとって特別な人。

神様みたいな雰囲気を持った、不思議で、暖かい、ボクにとっての神様。

出会ったそのときから、優しくしてくれる神様。



次の話から本編です。

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