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殺人音  作者: 鳳仙花
2/8

学校

それから朝。

強い日差しが俺の顔を照らし、自然と目が覚めた。

とりあえず朝の習慣として、目覚まし時計に目をやる。


「久々に目覚まし時計より早く起きたな…」


設定しているアラームまで、まだ時間がある。

だが不思議と、もう一度寝る気にはなれない。

昨日、夕食前に眠ったことによる二度寝のせいだろう。


「はぁ……」


思わず溜め息が漏れた。

昨日の殺人音のことを、ついつい思い出してしまう。

それにしても変な夢だった。

何だったんだろう、アレは。

女が綾香に似ていたのが気になる。

もしかして未来の綾香とか?

………いや、まさかな。

俺に未来予知なんて、できるワケがない。

どうせできるなら、もっと近い未来を見たいものだ。


「よっと」


俺はベットから降り、学校へ登校するための支度を始めた。

顔を洗い、身支度を整え、朝食を取る。

朝食はいつも一家団欒だ。

一家団欒と言っても、医者の父と主婦の母の三人家族だ。

だから食卓にはすぐに家族が揃う。

ちなみに朝食はいつもお吸い物、白米、煮物、目玉焼き、とオーソドックスだ。


「お、今日は早いな、光」


父親が笑顔でそう言ってきた。

だが俺は朝だからということもあったせいで、つい無愛想に返事してしまう。


「ああ、お父さんか。おはよう」


「……どうした?気分が悪いのか?」


妙な所で洞察力が高い父親だ。

さすが医者、とでも言うべきだろうか。


「いや、昨日早く寝たせいでな。ちょっと頭痛が」


「お、きっと難病だな。お父さんが診てやろうか?」


俺はご飯を口の中に運んでから、父親の冗談交じりの誘いを断った。


「何言ってるんだよ。そこまでする必要ないよ」


すると母親がきつめの口調で注意してきた。


「食べながら喋らない」


「う…………」


注意されたときって、自分が悪いと分かっていても、気分が悪くなるものだな。

そんなことを思いながら箸を進めた。


「ごちそうさま」


朝食を終えた後、俺は近くに置いたカバンを手に取り、玄関でシューズを履く。


「行ってきます」


俺は呟くように言い、外へ出かけた。

今日は風が穏やかで、晴れていて良い天気だ。

さて、早めに学校へ行って綾香を驚かすとするかな。

そう思ってスキップするように学校に向かって行った。

そんなことをしていると、校門に着いたころ、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「あ、光じゃん!おはよう!」


この声は綾香だ。

俺は声がしてきた綾香の方へ向き、いつものような態度で挨拶を返した。


「おはよう」


「今日は早いね」


「早く目が覚めちまったからな。あ、そういえば殺人音のことだけどよ」


殺人音という単語を口にしたとき、綾香の目が一瞬だけ虚ろになったように見えた。

その僅かとも言える異様な反応に、俺は思わず数秒近く呆けた。

だから綾香は促す言葉をかけてくる。


「で、どうだったの?」


「あ、ああ………それでな」


口調や表情は普段の綾香だ。

さっきの目は気のせいだったのか?

そんな疑問を持ちながら、俺と綾香で歩く足と話を進めた。


「一言で言えば、奇妙だった」


「奇妙?」


「俺の言ったことが、そのままパソコンから聴こえてくるんだ」


「なにそれ?」


「俺にだってよく分からねえよ。で、その後、女の子の笑い声が聴こえてきた」


玄関を通ってげた箱に着き、俺と綾香は上靴を手に取る。


「外からじゃなく?」


「いや、間違いなくパソコンからだ。そして白くて小さな手が………」


俺は言葉を止め、何となく綾香の手に視線を移した。

すると綾香は俺の顔を覗き込むように、首を傾げてきた。


「どうしたの?」


「いや、別になんでもない」


特に根拠はないのだけど、綾香の手はあの小さな手が似ていた気がする。

……そんなワケがないか。

夢のせいか、妙な意識のし過ぎだな。

俺は気を取り直し、上靴に履き替えて、さっきの話を続けた。


「そして小さな手が画面に出てきて、パソコンの電源が切れた」


「パソコンの電源が?なんで?」


「さぁな。ちょうどパソコンの接続でも悪くなったのかな」


学校の三階にある教室に向かい、俺と綾香は長めの階段を上り始める。


「それで大丈夫だったの?」


綾香が心配そうな顔で聞いてきた。

たまにみせる細い目からの綺麗な瞳。

綾香のこういう表情って、見ていて可愛いと思ってしまう。


「ああ、何ともなかった」


「良かったぁ」


今度は綾香が笑顔の表情になった。

この表情も、見ていて可愛い。

そう思ってしまうのは、明らかに惚れているせいだ。


「じゃあ、殺人音を聴いたら死ぬってのはただの噂だったんだね」


「あぁ、そうだな」


………本当にそうなのだろうか。

確かに俺は死ななかったし、誰かが死んだとも聞いたことはない。

でもあの夢、殺人音とは無関係とは不思議と思えない。

それにそもそも、すぐに死なないだけかもしれない。

自分の声がそのままパソコンから聴こえたり、パソコンの電源が突然消える不思議な現象は、普通に考えてありえるだろうか。

俺の勝手で狭い観点で言えば、ありえるワケがない。

そんなことを考えている俺の顔を見て、綾香は尋ねてきた。


「どうしたの?難しい顔をして?」


「……あ、いや何でもねえよ」


「なんか光、今日は変だね。もしかしてまだ寝ぼけてるの?」


「あはは、そうかもな」


俺は適当に会話を交わしながらも、あることを考えていた。

今日家に帰ったら、殺人音を聴いた人の体験談をネットで調べてみよう。

確か前に流し目で見たことがある。

有益になりそうなものはなかった記憶だが、今だったら何かが分かるのかもしれない。


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