表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

しずかにいつくしんで

野獣は息をするのも忘れて、

目の前の少女を見つめていました。


きらめく白金の髪

新緑のような翡翠の瞳

朝露に濡れた薔薇のような頬と唇

神聖なる処女雪のような白い肌


すべてが神の御手により造られたのだと思わせるような、絶世の美貌があったのです。


あの平凡な男に、これほど美しい娘がいようとは、思いもしませんでした。


今は恐ろしい野獣の前で、なすすべもなく震えている姿に、この野獣でさえも激しく庇護欲を掻き立てられます。


「よく来た、娘よ。」


この世のものとは思えないほど冷たく恐ろしい声が、屋敷に響きます。


「お前は今日から私のもの。永遠にこの屋敷からは出られん。わかっているな?」


「はい‥‥」


「ここは魔法の屋敷。逃げることも叶わんぞ?」


「承知しています。ですからどうか、村の者には‥‥っ!」


澄んだ宝石のような瞳を潤ませ、祈るようにこちらを見つめる娘。


「そなた次第だ。さて、部屋を用意している。ついてこい」


「私の…部屋をいただけるのですか‥‥?」


「なに?牢屋がいいのか?」


「いいえ!ありがとうございます‥‥」


こんな野獣に。永遠に自由を奪った野獣に。

感謝する気持ちを分け与えるなんて‥‥

なんて愚かで愛おしい娘なのでしょう。


すでに野獣は、彼女のことが、いたく気に入りました。


まだ野獣が、このような醜い姿になる前。

嫌という程、貴族の女を見てきましたが、

そのどれもが少女の美貌と心の美しさには

届きもしないだろうと思いました。


それだけでも自分は、とても素晴らしいものを貰ったのだと、心が満たされた気さえしていました。








そんな野獣の背についていきながら、

少女はひっそりと微笑みました。


きらめく翡翠の瞳は、獲物を狙う狩人のように。

野獣の背を、ただただ一心に見つめていました。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ