一章 俺に何をしろと。2
妹は中学3年生で、頭もよくスポーツも出来る。
俺とは血が繋がってないんじゃないか?
俺なんか頭は中の下。スポーツはバスケをやっていたのでそれなりに。
鼻血が止まったのを確認して立ち上がる。
「おっ、もう8時か。」
床に置いてあるバックを手に取り、玄関に行って靴を履く。
そんないつも通りの作業を済ませ玄関のドアを開ける。
飛び込む太陽の暖かい日射し。
「まぶっ。」
つい目を瞑ってしまった。
5月、まだ暑くは無いこの季節。
太陽の日射しは暖かいが、少し肌寒い朝だ。
自分の家を後に、いつもの通学路を歩き出す。
「ふふーんふーふん♪」
やっぱり鼻唄を歌ってしまう。
キモい奴がキモい歌を歌っても、キモさ倍増である。
いつもの横断歩道を渡り、いつもの店の前を通る。
ここまではいつも通りだった。
違和感にはすぐに気付いた。
いや、なんというか、うん。
「ここ、どこだよ。」
少なくとも俺の知っている場所では無い。
一瞬、道を間違えたかなとも考えたがそれは無い。
なぜなら俺の目の前に広がる景色には、メルヘンなお城が建っていたからだ。
(あはは、嫌だな。楽しみすぎて幻覚を見ているんだな)
どうせまた鼻唄を歌いながら歩けば、幻覚も解けるだろう。
確証は無い。
あるわけが無い。
「ふふーんふーふん♪」
目を瞑って歩く。
歩く。
歩く。
歩く。
歩――――――――――
―――ドン。
何かにぶつかった。
(きっと戻れたんだな。あはは)
ゆっくり目を開けるとそこには·····
「なんだ小僧。」
(ぎゃあああああああああああああああっっ!)
竜の頭。
竜の体。
おまけに翼と尻尾までついている。
俺が知る限りでは、この生物は「ドラゴン」というのでは無いだろうか。
「どうしたんでぃ?親分。」
ドラゴンの後ろから、ひょっこり何かが正体を表した。
(ぎゃあああああああああああああああっっ!)
人の頭。
蛇の体。
おまけに小さな羽とトカゲの様な足がついている。
え、めっちゃキモいんだけどコイツ。
俺よりキモい。ウケる。
「何だお前えええええっ!」
ひょっこり姿を表したキモい奴が、俺を睨みつける。
ヤバい。
なんかコイツ見てると具合が悪く――――――
――――バタッ。
変な違和感に教われた俺はその場に倒れる。
俺の体から意識が抜け出るような感じだ。
幽体離脱的なやつである。
「親分、コイツどうしますかい?」
慌て始めるキモい奴にドラゴンは静かに、まるでゴミを見るような目付きで言った。
「―――連れていけ。」
聞き捨てならない言葉を最後に、俺の意識が途切れた。