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雨の日はついてない

作者: アキト

では、どうぞ!

ついていない。

私は雨に打たれならがそう思った。



今日は朝からついていなかった。父さんも、母さんも会議があるらしく、起こしてくれたのはバイトに出る直前の兄。しかも、今日はどしゃ降りの雨だというのに、兄は勝手に私の傘を持っていってしまった。初めは折り畳み傘があるから良いかな、なんて思っていたが、強風に煽られて骨が完全にいってしまった。鞄にしまうなんて事はできないから手に持ちっぱなし。私の身を雨から守る物から、ただの邪魔なゴミに成り果ててしまった。いっそのこと、不法投棄をしてしまいたいくらいだ。


走る度に水がはねる。焦げ茶色のローファーは水をしっかりと吸ってしまって、ただでさえ遅い私の足を更に遅くする。制服も髪も、どこもかしこも水浸しで、水溜まりを通った車が水をかけてきても変わりがない。あぁ、鞄の奥の方にビニール袋で包んで入れた携帯電話は大丈夫だろうか?望みは薄いが、帰りに迎えを呼べるので無事でいてもらいたい。

ちらりと、防水加工のされた腕時計見る。残りは五分をきってしまったが、もう目の前には学校がある。このペースなら教室にチャイムが鳴る前に辿り着けるに違いない。ギリギリ間に合うかもしれないということに、私は安堵の息を漏らした。

さぁ、ラストスパートだ!重い足に鞭を打ち、スピードを上げる。後はそこの横断歩道を渡りきれば学校の敷地内に入る。


しかし、神様は無情だった。


信号は赤に変わってしまった。反対に、青になった車は進み出す。その時、軽自動車がまるで馬鹿にするように私に水をかけていった。

残りはあと三分。ここから走って間に合うかどうか怪しい。

早く、早く。早く!

こうして待っている間にも時間はどんどん過ぎていく。周りに私のような生徒は一切いない。もしかしたら、もう出席をとりはじめているのかもしれない。

出席をとり終えたあと辿り着いた私。遅刻は確定してしまった。硬い(ハゲ)はきっとどやしてくるのだろう。そして、それを見た同級生たちが私を指さし、笑うのだ。

その光景が脳裏に浮かぶ。……嫌だ。嫌すぎる!それだけは避けなければ!!


車側の信号が黄色に変わり、車が減速し始める。

赤になり、車の走る音が遠くなる。

そして、今。歩道の信号が……青に変わった。


アスファルトを蹴る!滑り、転びそうになりながらも、昇降口へ急ぐ。もう一分をきってしまった!ゴール(教室)を目指して、走る。

そして、扉に手をかけた瞬間。


私は額を強打した。


頭の中が真っ白になる。そして、すぐ何故で埋め尽くされた。

何故、私は額を強打した?何故、扉が開かない?

暫く雨の当たらない屋根の下にいると頭が冷えてきた。そして、恐ろしいことが脳裏をよぎる。

いや、そんな……はずは……。

恐る恐る鞄を開ける。そこには保護されている携帯電話。唾を飲み込む。電源をつければ、液晶の左端にはメールを受信したことを表す手紙のマーク。そして、それを開ける。



読み終えたとき、私は膝をついた。内容は『本日休校』。着信した時間は、いつも通りならば、出発する前の時間。

もう、乾いた笑いしかでてこない。壊れた玩具のように笑う私は酷く不気味で、滑稽なことだろう。





あぁ……。本当に、今日は。


ついてない。



誤字脱字等がありましたら教えてください。



こういう事って……あるよね!ね?!

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