ダンジョンマスターと恋愛相談のはなし。
“フロアボス”という存在を、みんなは知ってるかい?
所謂、RPGにおいてダンジョンの最奥部にてクソ生意気な冒険者たちを蹴散らすために君臨する最強の存在・ダンジョンマスターのフロア版だ。
つまり、中ボス?
条件によるけど、1つのダンジョンに1体しかいないはずのダンジョンマスターだが、ダンジョンによってそれが100階上がるなり下がるなり出てくるのがフロアボス。
冒険者にとっては、最悪な存在が複数いるのは迷惑このうえないよね。
だけど、逆の立場を考えてもみてよ?
迷惑なのは、フロアボスやダンジョンマスターにとっても一緒。
だってさ、自分のテリトリーを荒らす冒険者たちなんて、はっきり言ってニンゲン社会においての犯罪者と同じだ。
自分の配下を殺すわ、金銀財宝や素材を勝手に持ち出すわ、自分の時間を奪うわ、家宅侵入・殺人・窃盗などなど余罪を含めればまだ出てきそうだよねー?
まぁ、世の中因果応報。
自分の犯した罪は、自分で責任を持たないと…ね。
「【死への誘い】」
「ぐああぁぁぁっ!!」
「隊長ー!!」
即死系の上位魔法【死への誘い】。
術者のレベルより低い対象者は、レベル差に応じて即死の確率が上がる。
パーティーの人数を半分ずつ減らしていくその魔法により、挑むニンゲンはすでに最後の1人になってしまった。
さて、窮鼠は猫を噛むのかな?
仲間の遺体の中で、たった1人立っているのは黒いローブをまとった魔法使いだ。
なまじ魔法に対する耐久が強いからか、少し前に倒れた剣士風の男よりもレベルが低いのに生き残ってしまったみたい。
おかげでかわいそうに、ガタガタ震えてる。
「ばっ…バケモノ!!」
……あーあ、興醒めだ。
そんなの、見ればわかるじゃんか。
対峙するフロアボスは、普通の馬よりも何回りも巨大なモンスターだ。
艶やかな、まるでビロードみたいな触り心地のする青み掛かった黒い毛並みに、鬣だけ黄金色をしている。
走るために特化した、しなやかに筋肉が着いた身体を持つ彼は大きさもさることながら、爛々と不気味に輝く真紅の瞳がその存在を魔物だと証明していた。
彼は【雷と瘴気を撒き散らす者】と呼ばれる、フロアボスだ。
ひたすら下り続ける、まるで地獄へと向かうようなダンジョンの中腹に存在する高レベルなモンスター。
ダンジョン自体だって、入るニンゲンが制限されて、国から調査団が派遣される最高ランクのSSSには届かないものの、十分注意が必要な場所だよ。
そんなところで、ニンゲンに友好的かつ異形じゃない者がいるわけないじゃんか。
馬に酷似してるってだけで、まだマシなんだから。
あーあ、がっかりした。
ちょっとは楽しませてくれると思ったのに、所詮はニンゲンか。
もういいや、 さっさと片付けてよ。
「ぎゃあああぁぁぁぁっ」
振り上げられた前足が、魔法使いに向かって振り下ろされる。
咄嗟に魔法で防御壁を張ったみたいだけど、呆気なく砕け散った。
反射的に頭は避けたものの、前足が肩を踏み砕き、魔法使いは汚い声で絶叫する。
うーん、聞いてて気持ちイイもんじゃないなぁ、煩いし。
馬の方もそう思ったかどうかはわからないけど、彼は何度も前足を踏み鳴らす。
蹄が固い地面を叩く音じゃなくて、そのたびに聞こえるのは濁音混じりの絶叫と骨の砕ける音と肉の潰れる水っぽくて粘り気のある音が断続的に聞こえてきた。
なんというか、“ぐちゃぐちゃ”って感じかな?
「だっ、だずげ…」
折れた腕で頭を庇おうとして、結局防げず腕ごと頭を踏み潰されてやっと魔法使いは沈黙した。
痙攣でまだ動いていたからか、彼は不必要なほど何度も肉塊を踏み続ける。
なんというか…小さい子供がする、地団駄みたい。
『…殿!クロノス・クロノス殿!聞いておられますかっ!!』
「へっ?なに?」
いや違ったわ、本当に地団駄だ。
聞いてなかったことに、地団駄踏んで自分の不満を表し…ちょ、ちょっと!
「中身とか、付属品とかこっちに飛んでくるから!」
服に張り付いた、繊維付きの球体をつまむ。
うげっ、死んだ魚みたいな虚ろな目と合っちゃった。
まあ、もとからもう、死んでんだけどね!
「あと、首がすっごく痛いからさ、ヒトガタになってよ」
『承知』
癇癪持ちみたいに地団駄を踏んでた彼は、さっきまでニンゲンを相手にしてた様子と打って変わって素直に言われたことを実行に移す。
黒い巨体は、背が高い褐色の肌をした細身の身体に。
黄金色の鬣は、同色の長髪に。
真紅の瞳は、妖しく輝く切れ長の目に。
馬のモンスターは、ニンゲンの男に似せた美丈夫にその姿を変えたのだった。
…ニンゲン界においての顔立ちの美醜は判断出来ないけど、基準は神界と似たようなものだろう、たぶん。
彼は簡単に返事して、簡単にやってのけたけど、実は結構複雑な魔法なんだけどさ、ヒトガタになるってのは。
さすが、この【永久凍土の冥界】のフロアボスだ。
「さすがだね、【雷と瘴気を撒き散らす者】。高度な術をいとも簡単に、やってのけるなんて」
「クロノス・クロノス殿!その、人間が勝手に付けた名で呼ばないで下さい!!」
ニンゲンの男に擬態した馬は、上半身をぐにゃんぐにゃんに曲げながら悶えてる。
あぁ、その気持ちはよくわかるよ。
【堕ちた刻の魔神】なんて、よくわからない呼び名がいつの間にか付けられてて随分と恥ずかしい思いをしたからね。
一体、どこから落ちたんだよって話だよ、まったく!
「んー、じゃあポルド。さっき、なにを言っていたんだい?」
「そうでした!このニンゲンたちが来る前にしていた話の続きをしていたのです」
現在、挽き肉になっているものに一瞬、視線を向けてから思い出す。
「ディアの話だったっけ?」
セレスディア。
彼女は【氷の女王】を冠する、【氷雪の城】に君臨するダンジョンマスターだ。
もともと彼女は、“結晶の乙女”というか弱い雪の精霊だったんだけど、どこぞの馬が一目惚れして気に掛けるようになってから、レベルがメキメキと上がるようになり…精霊の最終段階である【精霊王】になったという、経緯を持つ。
『気に掛ける』って言っても変な意味じゃなくて、神をダシにしてデートに誘ったりしただけだよ。
まあ、デートする場所が高レベルなダンジョンだっただけで。
デート先まで、確認してなかったのがいけなかった。
まさか荒らされていないって理由で、ニンゲンどころかダンジョンマスターたちにとっても、悪名高いダンジョンにわざわざ行くなんて思えなかったんだよね。
ダンジョン内に流れる瘴気が濃くて、そこで意識を保つだけでもレベルが上がるなんて、そんなとこで楽しくいられるのはそれこそ【雷と瘴気を撒き散らす者】しかいない。
それでも健気なことにセレスディアは、気絶しようが身体が痺れて動けなくなろうが、次のデートを断ることなく。
まあ…クールビューティーな外見なのに、中身は天然な彼女はデートって気付いてないっぽいけどね〜
好意は抱いてるよそりゃ、【精霊王】になれるだけレベルアップするほど、デートを重ねてたんだから。
『馬さん、馬さん』ってなついてるよ、可愛らしく。
ただ、それが恋愛感情かは…うーん。
こっちが生暖かい目で、ポルドから続きを促すと彼はフルフルと震えながらなにかを言った。
「セレスディア殿は…だから」
「えっ、なに?なにを言ってるんだい?」
声も震えてるせいか、よく聞こえない。
耳の遠い年寄りみたいなセリフを吐きながら、もう一度聞いてみれば彼は目をカッと見開いて叫んだ!
「セレスディア殿は、白馬の王子をご所望なのだっ!!」
ホワイ?
「なに、どういう意味なんだい?ボク、ディアが乗馬に興味があるなんて、聞いてないんだけど?」
ところで、馬の王子ってどんなの?なーんて、分かりやすくボケてみる。
が、ポルドはそれどころじゃない。
生意気にも、キッと睨んできた。
「クロノス・クロノス殿!そういう意味ではありませんっ!」
「じゃあ、どういう意味だい?君の言葉じゃ、わからないよ」
兎に角、彼が必死だということだけはわかった。
「クロノス・クロノス殿は、セレスディア殿が可愛らしい趣味をお持ちだということはご存知だとは思います」
ポルドは遠回しに言ってるけど、つまりは少女趣味だということだ。
以前は良かったけど、現在のクールビューティーな外見に似合わず、ピンク色やらレースやらクマのぬいぐるみが好きで夢見がちで……ん?
なんだか、ポルドが言ったことと合わせて考えているとなんだか嫌な予感が…。
「もしかしなくても、君は…告白するのに白馬にでも乗ろうとしたとか?」
外れてくれ…って、直ぐに頷くなー!!
「やはりここは、本人の望む状況にしようかと」
「アホかああぁぁぁっ!?」
本気で乗ろうとする奴があるかっ!
あれは所詮は比喩でしかなくて、実際に白馬に乗ってる王子なんていない。
リアルで白馬に乗った王子って(笑)。
あっ、ちなみにこのダンジョンがある国には、王子じゃなくて姫が一人しかいないけど。
「大体、普通に告白すればすむ話じゃないの。なんで、そんな小細工が必要?」
いいじゃんか、普通に告白してまずは、男…牡?だと認識してもらえば。
「そんなことして、二度と会ってもらえなかったらどうすれば…」
あー…、今度は頭を抱えて悶えてる。
「えっと、じゃあ告白しなきゃいいんじゃない?」
「“お友達”はもう、堪えられないのです!!」
えぇー、めんどくさっ。
そんなこちらの気持ちなど気にもしないで、ポルドはすごい勢いでしゃべり続ける。
「受け入れてもらえる自信はありません。だから、少しでも勝機を上げるために、白馬が必要なんですっ!ですが、気の弱い馬は近付くだけで泡を吹いて倒れ、気丈な馬でも後ろに乗ろうとしたら…」
「したら?」
「交尾だと思われましたー!!」
ブフーーッ
「馬の姿で乗ろうとしたのかいっ!!」
そりゃ、時期じゃなくても勘違いされるって!
「では、どうしろとっ!?」
「普通にヒトガタで乗ればいい!!」
「逃げられます!」
そりゃ、【雷と瘴気を撒き散らす者】だからね。
自分等と同じ形でもヒトガタでも、無理というものだ。
こんなやり取りに脱力しつつ、吹き出したときに汚れた口元をシャツの袖で拭う。
ポルドを見れば、彼はヒトガタになっても首が痛くなるくらい見上げなければならない長身を小さくしてしょげていた。
他神にとっては馬鹿馬鹿しいことだけど、彼にとっては大事なことなんだ。
ずっとずっと片想いで、“大事なお友達”という立場じゃ足りなくて、でもギクシャクするのも嫌で、だけど小細工を用いるくらいに自信がない。
…本当に滑稽で、馬鹿みたいに純粋だなぁ。
「…【鏡面の泉】に、ユニコーンがいるって知ってるかい?」
「?」
突然、なにを言い出すんだって、不思議そうな顔をしてるポルド。
だから親切な神様は、説明してあげる。
「ユニコーンは言葉が通じる。事情を説明したら、協力してくれるんじゃないかな?」
「!!」
目を見開いたポルドは、説明を聞くにつれてだんだんと、キラキラした目になっていく。
その真紅の瞳には、希望が満ち溢れていた。
でも、期待させ過ぎないように、釘でも刺しとこうかな?
「まあ、実際に話を聞いてくれるかはー」
「ありがとうございます!早速、いってきます!!」
「へっ?」
全てを言い終わらないうちに、ヒトガタから馬の姿に変わって、ポルドは黒い疾風となった。
黄金色の残像を残して、すごい勢いで駆け出し、その姿は直ぐに見えなくなる。
…遠くで、なにかが壊れる音や悲鳴が聞こえるから被害は多少出てそうだ。
フロアボスが、自分のテリトリーを破壊してどーすんだ?
「…ハァ」
1人取り残され、溜め息を吐く。
ユニコーンは純潔な乙女にしかなつかない。
それは有名な話で、ニンゲンじゃなくてもセレスディアにならなつくだろう。
だけど問題は、さっき駆けて行った馬。
協力を取り付けるのに、どれほどの時間が掛かるのやら。
「まぁ、少しは痛い目に遭えばいいんだよ」
ポルドじゃなくて、変態ロリコン野郎が。
「フンッ、このボクにベタベタ触れようなんて、100万年早いよ」
神をも恐れぬその態度、さすがは変態だと純白の一角獣を思い出しながら毒づく。
【鏡面の泉】はその名の通り、鏡みたいに澄んだ泉だ。
静かで、凶暴な魔物がいないお気に入りの場所だったんだけど、のんびりしてるとどこからともなく現れては、ちょっかいを掛けてきてすごく迷惑だったんだよ?
だからこれは、一種の意趣返しってこと。
それはさておき、セレスディアとポルドのことを考えてみた。
仲は良好、小さい精霊時から優しくしてくれた“馬さん”にセレスディアはそりゃあなついてる。
ポルド自身も優しく彼女を見守り、欲望なんて感じさせたことはないだろう。
そのおかげか、まったくもってセレスディアに異性だと思われていない。
そんな状況を、打破するにはなぁ。
「いっそ、押し倒してみれば…」
ゾクッ
呟いた途端、冷たいなにかが背筋を撫でた。
周囲を見渡しても、薄暗いダンジョン内には誰もいない。
ついでにセレスディアの過保護な精霊や、魔法の形跡も。
「いや!もちろん冗談だし、あのヘタレ馬がそんな甲斐性あるわけがない」
誰ともなしに、呟きに対する弁解をしてみる。
神を震わせるなんて、一体なに者だ?
もう一度、周囲を見渡す。
近くには気配はなく、代わりに。
「ふ〜ん、無謀で愚かなニンゲンか。生意気な」
遠くに複数人の気配を感じた。
それが徐々に、こちらに近付いてくる。
もうすでにポルドの部下が片付けた、さっきの肉塊になってしまった存在を思い出して口角を上げた。
「ここのフロアボスの友人としては、不在なポルドに代わってもてなすのもやぶやかではないね」
もしかしたら、良い玩具が見付かるかもしれない。
そう思うと、口の端が更に上がって笑い声がもれる。
「ふふっ、楽しみ〜!」
期待に胸を膨らますのと、集団がここに到着するのは同時だった。
一行は、それぞれの武器を構えて一斉に向けてきたけど、こちらを見て戸惑った表情を浮かべる。
「…子供?」
「こんなところに、男の子か?」
ほとんどのニンゲンが、困惑気味に剣先を下げる中、先頭に立つニンゲンだけが警戒心も露な顔でこちらを睨む。
ふ〜ん、もしかしてなんか感じてるとか?
「全員、警戒を緩めるな!」
先頭のニンゲンの怒声に、緩まっていた緊張の糸が再び張り詰める。
1人だけ、アワアワしてるのがいたけど誰も気にしていないのが笑えた。
「いたいけな子供に対して、その反応はひどいなぁ〜」
「…ただの子供なら、こんなところにいて傷ひとつどころか、汚れひとつ着いていないのはおかしいだろう」
そーだったうっかりしてたよ、てへっ。
舌を出して、茶目っ気を出してみる。
…うん、相変わらず怖い顔してるね、ニンゲン。
ダンジョン内のみんなは良い子たちばかりだから、ここに来るまで快く道を通してくれたんだ。
おかげで、擦り傷ひとつ着いてないけど…、よくよく見ればさっきポルドが飛ばしてきた眼球やらのせいでシャツやズボンが汚れていた。
ニンゲン、これは気にしなくてもいいのかい?
「んじゃ、自己紹介でもしてあげようか!」
気を取り直して、元気よく宣言すれば突然の展開に他のニンゲンは更に戸惑った顔をする。
だけど、今度こそ武器を下ろすことはしなかった。
先頭のニンゲンだけは、魔を祓う銀色をした瞳を鋭く細めている。
ここにいるニンゲン全部の視線を独り占めにして、頷きひとつ。
胸に片手を当てて、優雅に見えるようにお辞儀をしてみせる。
「ボクの名はクロノス・クロノス。【天空の刻迷宮】のダンジョンマスターさ」
尤も今日は、出張フロアボスだけどね!
ウィンクしながら言えば、みんなポカーンとしてて笑える。
その様子に満足して、目を細めた。
「さーて、自己紹介も済んだし、あそぶと」
「撤退だっ!!」
…言葉を遮られて、気分は一気に急降下した。
「ちょっとさぁ、ヒトの話を遮っちゃいけないって教わらなかったの〜?」
「生憎、魔神に堕ちた神から逃げるのに、礼儀作法など構う余裕などないので」
先頭のシルバーグレーの瞳のニンゲンが、皮肉げに笑って前に立つ。
その間に、そのニンゲンの命令に従って他のニンゲンたちは素早く元来た道を戻り出す。
「あぁ、なるほど!ボクが堕ちたのは、魔神なんだねぇ」
長年の疑問が解けて、スッキリはした。
玩具が多少逃げてしまったけど、まあ彼は残るみたいだからいいか。
「いいのかい?君、置いていかれてるよ?」
「ここで俺の命令を聞かない奴がいたら、減俸にしてやる」
よくわからないけど、『ゲンポウ』とやらは嫌なことらしい。
「ふ〜ん、まあいいけど。玩具が減るのはつまんないけど、疑問を解消してくれたご褒美だよ。見逃してあげる」
その代わり。
「だけど、君は駄目だ。ここでボクとずっと、一緒に遊ぶんだ」
「断る。俺は、待ってる人がいるんだ。絶対に戻る」
折角、神に気に入られたのに喜ぶでもなく即座に断る潔いニンゲン。
いっそ、清々しいくらいだ。
こういうときの『待ってる人』って、女のことだよね?
セレスディアに教えれば、恋愛話好きの彼女は喜びそうだ。
死地にて剣を振るう男と、それを待つ女。
うん、彼女は喜ぶだろうけど…なんかおもしろくない。
「ボクの誘いを断るなんて、ムカつくなぁ。まあ勿論、ボクが君の意見を聞く義務はないけど!」
おもしろくない、モヤモヤした気持ちを抱えながら高圧的に言い放つ。
傲慢な言葉に、ニンゲンは眉をひそめながらも剣を構えてこちらを睨み付けてきた。
その鋭い瞳に自分の姿が映るのと、緊張で張りつめた空気が周囲に充満して、釣られてこちらもほんの少し緊張してしまう。
でもそれを上回るくらいにこれからのことが楽しみで、さっきまでの気分が払拭されて徐々に高揚してくる。
顔が自然ににやけて、対称的にニンゲンの顔が強張った。
「さぁ、遊ぼうか!」
「お断りだっ!!」
キッパリ断るこのニンゲン、名前が気になるけどまあ、付き合いは長くなるだろうからそれは追々。
今はただ、嬉々と剣を振りかぶって肉薄するニンゲンを迎え入れるだけだ。
…あぁ、そう言えば。
ポルドの告白はどうなるかなぁ。
暇潰しにこのニンゲンと遊んでるからさ、良い報告待ってるよ!