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ショートストーリー

むかしむかし、遠い森。

作者: だくさん



むかしむかし。


遠い日の僕は森を歩いていた、なにかを求めて。


見たことあるような花、ないような花。

見飽きたほどの果実、見たこともない果実。

見たかった動物、見たくもなかった動物。


走馬灯のように廻る世界が僕を取り囲んでいた


異様な森の中で、僕は異様だった


時間を戻って、僕は歩く


ただ手を伸ばして、落ち葉を拾った


幽玄な森は風のように語る


――かくれんぼをしよう、君が鬼だ


空から零れる雨が僕の邪魔をした


見つけないで、私を。


きっと私は貴方を傷つけるから


見つけるよ、僕は。


見つけて君を傷つけてあげる、もう一度。


雨が強くなって、落ち葉がひとつ手から抜け落ちる


まるでなにかを忘れるように、空は泣く


来ないで、なにかを失うくらいなら。


行くよ、でも僕はなにも失くさない。


木が揺れて雨がまた強くなって、周りが見えなくなった


見えるのは僕の足元だけ


紅く鮮やかな果実は泥にまみれていた


君に見せてあげる、こんなものがこの森にはあるんだって


笑って走る僕は空を見る


灰色に飾られた空の向こうで淡い赤色が輝いていた


僕は歌う、誰にも聞こえない曲を

僕は語る、誰にも聞こえない詩を

僕は叫ぶ、誰にも聞こえない愛を


僕は嘆く、やっぱり君を見つけなきゃよかったと


かくれんぼは終わった、なにも新しいものは見つけずに。


僕は風のように語る、頬を撫でて。


――だから、代わりに鬼ごっこをしよう。


「君が鬼だよ」


僕は君から逃げる、追いつけないほど遠く。


むかしむかし


遠い日の僕は森を走っていた、なにかに求められて。






誰にも聞こえないものは、そばにいて心で伝えるだけ。

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