雷はオレたちのキューピットだったり
今日はあいにくの大雨で、雷も激しくなっていった。
「うぅ……」
見覚えのある少女が、しゃがみ込んで大粒の涙を溢している。
「うおぉぉぉぉぉ。ゆりりん、姫ちゃんに何をした」
突っ立てため息を吐いているゆりりんが隣にいるのを見かけると、俺は慌てて近寄っていった。
「うざいな、お前」
俺はうかつだった。雨が嫌いなゆりりんは朝から不機嫌キワマリナイ。俺って今日もゆりりんと帰るんだよな、なんて思うだけで鳥肌が立った。
「………カミナリ」
あぁ。雷が怖いのね。
「姫ちゃん、歩が家まで送ってくれるから……」
ああ、女神様。今日のゆりりんは輝いてるよ。
「あ、うん。俺、送ってくよ」
『―――じゃあ』
ハモッタ。俺は「やっぱ幼なじみだな」と思いつつ、ちゃっかり姫ちゃんと二人っきりの時間に幸せを感じたりしていた。
昇降口で靴に履き替えていると「ゆりりんじゃ〜ん」と啓くんがクラスの男子生徒二人と歩いてきた。
「今、帰り?」
啓くんは何気ない一言で足止めをさせて、ゆりりんは「あーまぁ」とそっけない返事をした。
「オレっち、雷怖いっ」
右隣の微妙にイケメンで整髪量で髪を立たせた男子生徒に抱きつく啓くん。ゆりりんは冗談にしてはかなり大胆な行動だと感心する反面、ゲイっぷりに引いてしまった。
「歩は姫野と帰っただろー?いいなぁ。あいつだけ女の子とイチャイチャかよ」
そういえば、歩は意外に可愛い。容姿はジャニーズでも楽々と入れそうな感じだ。
「行こう、送ってく」
ゆりりんは「傘持ってないんでしょ?」と付け加えた。