第三話 既読の外側
その友人とは、もう半年会っていない。
忙しいのだと思っていた。
送ったメッセージは、いつも「未読」のまま。
でも不思議と、既読がつかないことに安心していた。
読まれていないなら、拒まれてはいない。
ある夜、久しぶりに長い文章を送った。
「最近どう? 少し話せない?」
送信。
未読。
スマホを伏せる。
数分後、通知が鳴った。
“メッセージが取り消されました”
驚いて画面を見る。
取り消した覚えはない。
履歴は、空白になっている。
翌日、共通の知人から連絡が来た。
「知らなかった? あの子、半年前に事故で亡くなったよ」
冗談だと思った。
でも、葬儀の写真が送られてくる。
日付は、確かに半年前。
私は、昨日まで普通にやり取りしていたはずなのに。
トーク履歴を開く。
未読のまま、並ぶメッセージ。
最後の一文は、消えている。
ふと、画面の上部に小さな表示が出る。
“あなたはこのトークを保存しています”
そんな設定、した覚えはない。
震える指で、もう一度送る。
「本当に、もういないの?」
送信。
未読。
数秒後。
小さく、文字が変わる。
未読。
そのまま。
でも、入力中の点が、
ゆっくり三つ、現れては消えた。
返事は来ない。
ただ、既読にはならない。
まるで、
読んではいけない位置に、
私が立っているみたいに。




