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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
最終章 テラース最終戦争篇
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0094 反攻の準備

 もうそろそろ陸に戻ってきてくれないか。本社よりその連絡が来たのは、マッドネリー諸島海戦が終わってから1ヶ月後程度であった。空母艦載機をまた再編しなければならないレイド・サム公国海軍と、空母の修理にもう少し時間が居るソメリト合衆国大海洋艦隊。当面、海軍の動きは無いだろうと踏んだデイリー・ステート新聞社の編集部は、次のメリー・マステア従軍記者と、その助手の元戦姫の傷痍軍人、フェルニナ・ケールの赴任先として、北ソメリト大陸戦線への移動を命じていた。

 グレイス諸島から、デガラスDDー4輸送機に乗せられて、北ソメリト大陸の西海岸の飛行場へと向かい、北へと向かうその途中、フェルニナは隻腕・隻眼でずっと「メリー姉さん」と仰ぐ記者のカメラを弄くっていた。何時か自分も使える様になりたい、これで生活していきたい、この純粋無垢な感情は、「情熱」と言えるだろうか。これからこのカメラが写していく現実がどんな物なのか、そしてどう言う連中が見るのか、どんな需要があって、どこへどうやって供給されるのか、まだ知らない人間の、否、知っていたとしても気にしない人間の反応であった。


 デイリー・ステート新聞社だけでなく、他のメディアの新聞記者も集められて、記者会見が行われていた。近々、この北ソメリト戦線にて大規模な反攻作戦が行われると言う噂があったが、本当かどうかは怪しいところだ。この基地にて広がっている光景は、かつてメリー・マステアが見た光景と同じものであった。

 被弾して不時着した後で爆発する戦闘機、大穴が穿っているまま飛行場によろよろと言う風に帰還してくる四発、双発爆撃機、大穴を開けられて戻ってくる機甲ロボ、そして負傷して、あるいは戦死者として戻ってくる歩兵。同じ光景が、北の方の敵基地でも繰り広げられている筈だ。

 メリー姉さんは、その血に濡れた包帯と火薬、それに消毒液や油の臭いが染みついた光景には慣れてはいなかったが、懐かしい雰囲気には感じていた。海軍の潮の香りや海の青さもまた懐かしい。鉄の板1枚下は底なしの地獄の世界である、あの世界が懐かしいとも思ってしまう。

 北ソメリト戦線指揮官の大将は、報道室に集められた記者を前にして、定例報告を行う。

「「同盟軍」による攻撃は、日々激しさを増しています。我が軍はこれに対して、全力で応戦中です。確かに犠牲は発生していますが、それ以上の成果を我々はあげています。敵の南下を抑え続けているのです。ですが、この問題の根本的な解決策は、「同盟軍」の西海洋艦隊の制海権を奪う事です。大海洋艦隊の今後の活躍次第では、西海洋艦隊から艦船を引き抜く事になるかもしれませんが、現状ではそれは自殺行為に近いです。今でこそ「防御」の一択しかありませんが、いずれは「攻勢」に回り、「同盟軍」の制海権を奪い、北ソメリト戦線での主導権を握れます」

 指揮官の大将の話が終わると、記者との質疑応答となる。犠牲者が1万を超えたと言うが、近々更なる人的動員、徴兵が行われると聞くが本当か。

「我が軍は何処へ行っても、何処で戦おうとも、死ぬ覚悟は出来ている。それはソメリト合衆国市民の神聖な役割であり義務である」

 同じ台詞を、遺族の前でも出来るのか。神に誓って言えるか。

「勿論だ」

 マッドネリー諸島海戦では、水上戦姫部隊に航空機の代わりをさせて、多くの犠牲者を出したが、同じ事がまた起こる可能性は無いのか。

「既に2隻の空母の修理は完了している。同じ轍は2度も踏まない」

 レイド・サム公国海軍は今の所、空母の航空隊の再建に従事しているが、これが終わった場合、次の戦いで優位にたてるのか。

「それは海軍の領分であって、陸軍の我々として言えるのは、北ソメリト戦線の補給ルートを主に担っているのはヴィクター大陸の同盟軍であり、我々は西海洋での制海権については注視している。ただ、これだけは確かである。西海洋艦隊が「同盟軍」の制海権を奪えるまで、1隻たりとも大海洋に船を回す事は許さない」

 レイド・サム公国海軍は兎も角、同盟軍艦隊については、「テラース」最強のメリスト連邦王国海軍に勝たなければならない。その自信があるのか。

「自信の有る無しにかかわらず、やらなければならない場面がある。今は兎も角、「同盟軍」の南下に対して、防御に専念するしか出来ない。反攻作戦はまだまだ先になる。「同盟軍」の補給ルートが健在な間は、防御に徹するほか無い」

 それでは、噂の反攻作戦はまだ先なのか。

「当たり前だ。海軍が「同盟軍」の補給ルートを寸断出来なければ、幾らでも援軍がやってくる。その程度の事も分からずに、作戦をたてる奴はいない。大海洋だろうと西海洋だろうと、その基本方針は変わらない」

 では、全ては海軍次第というのですな。

「迂遠ながら、そうと言うしかない。どちらにせよ、海軍の事は海軍に任せるしかない」


 記者会見が終わると、メリー姉さんはフェルニナに対して、バッサリと告げる。

「負けているわね。今の所、敗色濃厚と言う所よ。これを逆転させるには、かなり困難な道のりになるでしょうね」

「そんなに? だって、開戦前までは世界一の貿易大国だったのに」

「それと同時に恨みも買ったわ。なかなか高くつく商いだったけどね」

「でも、流石に負けると言うのは。これでも、1度は軍で戦姫として任務に就いていた私としては、「同盟軍」全部合わせても、合衆国軍と同等程度です。兵器や武器・弾薬の増産体制が整えば、余程のミスをしなければ勝てます。いえ、少なくとも負けはしません」

「あなたの言うミスは、既に1度起こしている。レイド・サム公国海軍のダイヤモンド湾奇襲が、それよ」

「それが、噂によると海軍、とんでもない発注を造船所に出したらしいですよ。板切れ1枚載せた船体程度の凡庸な性能と設計で、兎に角大量生産に向いている大型空母を、40隻纏めて注文したそうです。勿論、他の補助艦艇も、「兎に角造れ」と言わんばかりに、金を惜しまずに注文しているそうです」

「40隻、全部揃った頃には、戦争は終わっているでしょうね。そんな戦力比になった時点で、「同盟軍」は降伏しているでしょう」

 メリー姉さんは、フェルニナと共に基地の中で、「記者」を示す腕章をつけて歩きながら、今後の展望について話していた。40隻の大型空母発注、最初聞いた時は噂程度にしか思っていなかったが、それから数日後にはそれが事実であると知った時には、耳を疑ったものの、そのくらいの事は経済的にも工業力的にも可能であると、メリー姉さんは理解していた。


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