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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
最終章 テラース最終戦争篇
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0092 捨て石艦隊

 惑星「テラース」の大海洋は、この星で最も広い海洋である。レイド・サム公国が島国としてアスラン大陸の極東に位置して、そこから更に東に向かって、ソメリト合衆国のある北ソメリト大陸がある。その合衆国の要衝であり、大海洋を制するのに必要とされているのが、グレイス諸島である。

 大海洋の西寄りの海域には、東南アスラン諸島と呼ばれる、大小合わせて数十の島々が犇めく地域もある。更に南に行くと、この星にて一番小さい大陸、バラーストラ大陸がある。これらの島々は、全て「同盟軍」の拠点として機能している。ソメリト合衆国にとっては、それでも充分であった。グレイス諸島のダイヤモンド湾は、それだけの価値のある拠点であった。


 幸い、レイド・サム公国海軍の奇襲作戦は、空母5隻のみに攻撃が集中して、湾岸設備、航空基地、石油貯蔵庫等は狙われなかった。2波に分かれた攻撃部隊も、1度の攻撃で満足して引き返していた。

 だが、それでも攻撃を受けた空母の内、3隻はスクラップとして破棄しなければならず、1隻は飛行甲板を丸ごと交換しなければならず、もう1隻は1本魚雷を受けただけで、簡単な修理で済む。つまり、現時点での所、稼働空母は0だ。残されたのは、巡洋艦や駆逐艦、それにポンコツ戦艦が10隻だけだ。

 ポンコツ戦艦を空母に改造するなんて狂気の沙汰には及ばなかったが、それに近い事をソメリト合衆国海軍は行っていた。ポンコツ戦艦の主砲、36.8センチ砲や40.6センチ砲、これらの主砲を半分は取り外して、対空砲を増設して、ついでにそれまで補助的な役割に過ぎなかった水上戦姫部隊の大幅強化に乗り出していた。

 無論、これには大艦巨砲主義や航空主兵主義問わず、全方面から攻撃を受けていた。主砲を外してまで対空砲を増設するのはやり過ぎである。戦姫部隊では敵艦への攻撃は出来ない。戦闘機相手に戦姫を戦わせるのは前代未聞であり、危険が高い。

 だが、西海洋艦隊から空母を引き抜く事は出来ない。幾らソメリト合衆国の巨大な経済力と造船能力を駆使しても、今すぐ大型空母が出てくる魔法のランプは無い。それに、レイド・サム公国海軍の戦艦を相手に主砲の撃ち合いをしたとしても、大海洋艦隊のポンコツ戦艦では荷が重たい。近々就役が見込まれる最新鋭戦艦の登場を待つしかない。

 それでも、国防省は妥協した。40.6センチ砲を主砲にしている4隻の戦艦はこの措置から外して、他の36.8センチ砲のみに限定していた。しかし、水上戦姫部隊の大幅増強だけは強行していた。


 メリー・マステアは、スクラップと化した空母の浮揚作業中の中、ドッグにて主砲の取り外し作業をしている最中に、急遽増派された戦姫達を前にして、カメラを向けていた。全員、不安そうな表情を浮かべて、緊張感で顔を固めて整列している。

 剣、槍、斧、得物にて敵と戦うのを得意とする戦姫であるが、戦闘機相手に空中戦をやって、果たして勝てるのかどうか。誰にも確証は持てなかった。過去に何度か模擬戦が行われていたが、満足のいく結果は出されていない。

 いっその事、飛び道具、ライフルや機関銃を持たせれば良いのではないかと議論されたが、戦姫にとってこれら文明の利器は、むしろ逆効果である。彼女らの振るう得物の方が、銃よりも遙かに強い武器だからだ。だからこそ、男はこれに勝つ為に「機甲ロボ」を作り上げたのだ。

 しかし、この場にいる戦姫の中で、「脅えている」者は1人も居ない。中には、キリト国国境線の最前線にて実戦を経験した戦姫も居るらしく、数人は平然として整列に加わっている者も居た。

 それでも、此処に居るほぼ全員が船に乗るのも初めてならば、軍艦に乗るのだって初めてである。それに対して、水上戦姫部隊に所属していた戦姫から簡単なレクチャーを受けていた。あれはするな、これも止めろ、ここはこうしろ、そこはそうしろ。色々な注意点や問題点を説明すると、早速出撃である。

 旧式戦艦の改造が終わったら、早速出撃である。空母の修理を待っている余裕は無い。稼働空母0の今だからこそ、レイド・サム公国海軍の次なる標的は、諜報部や上層部でなくても、素人目にも明らかであった。

 グレイス諸島より西に離れた島であり、大海洋のもう1つの要衝、マッドネリー諸島の武力制圧である。グレイス諸島の占領の為の足がかりとして、マッドネリー諸島は絶対に必要である。それを阻止する為ならば、10隻のポンコツ戦艦の犠牲くらい屁でもない。


 それは正に、大艦巨砲主義にとって冒涜とも言える光景であったが、現時点にて最も現実的な措置として、自分を納得させていた。戦艦の主砲を下ろすなんて、平時であれば狂気の沙汰であるが、空母に改造するよりは手間は要らない。

 メリー・マステアも、自身がこれから乗り込む予定の旧式戦艦「アステア」から、2番砲と3番砲を外されている光景を見つめていた。こればっかりは軍事機密に触れるので、カメラは持ち込めなかった。対空砲、機関砲でハリネズミの様に武装している「アステア」は、これから困難な船出を要求されている。

 デイリー・ステート新聞の編集部でも、メリーを下ろすべきだとする意見が多く出たらしいが、意外な人物がこれに反発した。編集長である。

「マッドネリー諸島が陥落したら、次はグレイス諸島に攻めてくるんだぞ。こんな重要な海戦に、記者の1人も寄越さないなんて有り得ない。本人が希望しなければ、別の記者を探す。それだけの話だ」

 メリー・マステアは、無論、この話を受け入れていた。10隻のポンコツ戦艦と、急拵えの水上戦姫部隊、そして巡洋艦や駆逐艦を合わせれば、30隻程度の艦隊となる、この捨て石艦隊は、突貫工事により改造された後に、大急ぎで出撃していた。

 敵は恐らく、空母機動部隊だけでなく、戦艦部隊も根こそぎ動員してくるに違いない。今度こそ、決着をつけてくるだろう。これに対するのに、こっちは10隻のポンコツ戦艦で対抗しなければならない。

 残る2隻の修理可能な空母に関しても、これが戦列に復帰するまで待つわけにはいかない。どうしてもと言うのならば、西海洋艦隊から引き抜くしかないが、全世界に広がる同盟軍の艦隊に対抗するのに、西海洋艦隊から空母を引き抜く事は出来なかった。

 もう負けたらどうしようなんて、誰も言わなかった。ただ目の前に居る「敵」に対して、持てる武器を全部使って戦うのみである。


 同じ頃、レイド・サム公国海軍は、就役したばかりの6万トン級戦艦「さらと」を旗艦として、第1航空艦隊と、戦艦が主力の第1艦隊、旧式戦艦で構成された第2艦隊も含めて、その主力の全てが投入された作戦が決行されていた。その中には、メリスト連邦王国の大海洋艦隊も参加していた。

 その規模は、ソメリト合衆国大海洋艦隊を完全に上回っている。誰もが自分達の勝利を疑わなかった。相手はポンコツ戦艦が10隻。こちらには最新鋭の戦艦「さらと」を初めとして、11隻の戦艦がある。空母に関しては、0対6である。

「これで負けたら馬鹿」

 と言う浮かれた気分にて出撃した聯合艦隊。彼ら、彼女らの向かう先に、何が待っているのかは、まだ分からない。


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