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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
第4章 名誉皇帝篇
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0068 外人部隊

 巨大な虎に乗った騎士が、行列を作ってダロス皇国の首都・ヴァゼリンの道を歩いている。「竜虎」と呼ばれるこの巨大な虎を用いた「竜虎騎」と呼ばれる彼らの力は、地上での戦いのみでは戦姫のそれを凌ぐとされている。つまりは、この歪な虎もまた、「女性」にのみ与えられた「戦姫」としての「力」に対抗する為に作り上げられた、奇怪な動物であった。繁殖力も高く、面倒見も人間が全部やらなければならず、誰の助けも借りずに野生に放たれたら生きてはいけない。

 空にて編隊を組んで飛ぶ戦姫達もまた、優美かつ壮麗、美しさと力強さを兼ね備えている、皇国の持つ「力」を示している。

 そして、馬に曳かれて移動する大砲である。世界に名だたるダロス皇国の砲兵隊は、その大筒から撃ち出される砲弾を完璧に照準して、命中させる事が出来る。現時点で世界最強の砲兵である。

 最後に、巨神部隊だ。これも、野生の巨人を人間が調教した結果、兵器として転用出来た巨人である。その骨、その筋肉、その皮膚に至るまで、この世界にてこれ以上の武器は無い。

 首都・ヴァゼリンの中央広場にて、これらの行列は進んでいき、やがて全ての騎兵、戦姫、砲兵、巨神は、その視線の先に居るグーデラティス・フォン・バチス皇帝に最敬礼して、やがて跪く。

「我が忠勇なる皇国の兵達よ。汝らが唯一恐れるべきは怖れである。敵を前にして、怖れを抱いて剣を交えずに逃げるのは、皇国の恥であり、兵としても尚、恥である。その牙で、その剣で、その砲で、その銃で、打ち砕けぬものはこの世には無い。行け、我等が忠勇なる皇国の兵達よ。英雄の名は汝らにこそ相応しい!」

 皇帝陛下の演説を聞き終えた兵隊は、一斉に頭を垂れる。観衆は、「皇帝バンザイ」を唱える。絵になる光景というのは、この場の為にあった。


 対して、クァンタム共和国の戦闘省の総合作戦本部にて、呼びつけられたレオポルド・ヴァスチーユ軍狼中佐は、敵の戦力を知らされて、予想通りの数字を聞かされていた。

「歩兵部隊6万、竜虎騎兵3万、砲兵1万、戦姫部隊2万、巨神部隊600。これは最も少ないとみなした上での予測値である」

 馬鹿げて多くは無い。そして、少なくも無い。どうやら総合作戦本部の作戦士官達は、現実的な判断力を失わないまま、仕事をしているらしい。

「と、これは第1陣の数字である。第2陣についてはまだ情報がない。また、第3陣の存在も示唆する情報がある」

 そうくるか。レオポルド・ヴァスチーユ軍狼中佐は、産まれたばかりの民主主義国家が革命直後の混乱から抜け出したばかりで、軍・民・官、全てに置いて「トゥリトル・トゥレイト」の状況が続いている。皇帝の勅命にて全てが決まる国の軍隊に、市民に銃を持たせる国の軍隊が勝てるのかどうか、これはその試金石であった。


「……それで、本官が呼ばれたと言う事は、本官に迎撃の任務を与えるおつもりでは」

「おつもりも何も、君はまた皇帝や王の下で戦いたいのかね。自分の手柄を全部奪われて、名誉はやるが実利はやらぬと突っ返されても文句が言えない国に戻りたいのかね」

「それは嫌です。でも、寡兵にて大軍を敗れと言われても、同じ手は2度も使えません。本官は人間なので」

「戦う相手も人間だ。そう腐るな」

「軍狼中佐の権限で動かせる兵には上限があります。それで、ヴィクター大陸最強の陸軍国の全軍相手に戦って勝てと言われたら、無茶だと言うほかありません」

「メリスト連邦王国軍に勝った人間の言葉とは思えないな」

「あれは条件が良かったからです。もし一つでも条件が悪ければ、今頃はこの首都にて戦争の指示を出すのはメリスト連邦王国の軍務省になっていた筈です」

「とは言っても、我々は兵力が湧いて出てくる魔法の壺や、どんな願いも叶えてくれるランプの妖精も持ってはいない。虎の子の第17軍と第9軍は絶対に温存しなければならない事を考えると、如何しても寡兵で戦わなければならないだろう」

「しかし、大隊規模の軍狼部隊では、どう足掻いても先程述べた第1陣相手には勝てません。ましてや、同規模の第2陣、第3陣が来るとすれば、今こそ虎の子を使うべきではありませんか」

「それが出来れば、わざわざ君を呼びつけはしない。第17軍と第9軍は、首都・ハリスの防衛の為にこちらが用意できる最低限の戦力だ。これらの部隊が戦う時は、文字通り首都決戦となっている」

「そもそも首都まで攻め込まれた時点で、負けが確定している状態ではありませんか」

「何も、1個軍狼大隊で突っ込めと言っている訳では無い。色々と融通するつもりだ。取って置きの予備兵力が出来たのでな、貴官に預けたいと思っている」

「……その予備部隊、どの程度の規模ですか」

「1個師団程度の外人部隊だ」

「外人部隊、本官はその様な部隊は存じませんが」

「君が兵糧攻めで捕虜にした10万の敵軍の内、「傭兵」と言う形でこちらに参加を表明した外人にて編成された部隊だ。ヴァスチーユ師団と言う名称も公式に決められた」

「……言葉も通じない、訓練も思想も異なる、文化だって違う。そんな1個師団で如何しろと言うのですか」

「悪いが、今回我々が貴殿に出来る事はそこまでだ」


 総合作戦本部の扉を閉める時の音は、そこまで大きくは無かったが、胸の内から沸々と「怒り」がこみ上げたレオポルド・ヴァスチーユ軍狼中佐は、さっき閉めたドアに思い切り蹴りを入れていた。

 外人部隊の他に、レオポルドに任せられたのは、メリスト連邦王国との通訳として補佐する副官が付いた程度で、1個師団で敵の第1陣を相手に、いや、もしかすれば第3陣まで全部相手にしろと言われたとしたら、無茶苦茶な話である。

 一体、戦闘省は自分が達成した軍事的成功から何を学んだのか。寡兵でも強大な敵に勝てる? いやいや、寡兵で大敵に勝てたのは、敵が兵站をあまりにも軽視したからだ。加えて、あまりにも危険な総力戦を仕掛けて、裏をかかれたのも理由の一つだ。これらの条件が無ければ勝てなかった。ダロス皇国の軍隊が、全く同じミスをしてくれるとは思えない。そこまでサービス精神があるとは想えない。

 ただ一つだけ救いがあるとすれば、今回もまた敵が「戦力の逐次投入」に終始しているところだ。対クァンタム同盟が総出で軍隊を動かせば、その時は確実に負けるだろう。

 ……まぁいい。今は兎も角、自分に任されるという「外人部隊」の様子でもみてこよう。あんまり期待しないで居ておこう。


 別に期待しては居なかったが、見てみると、なる程、軍隊に行っていなければ何をしていたのか分からない連中ばかりだ。それでも、1個師団、1万4千人の規模の転向者が現れて、外人部隊として戦ってくれるというのであれば、それはそれでありがたい話だ。相応の待遇とやらだって、保障するのはクァンタム共和国であって、レオポルドの仕事ではない。



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