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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
第2章 統一戦争篇
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0034 決戦計画

 68国に分かれた宇宙の人類社会に衝撃が走る。「宇宙統一機構・日本」の構想と発想は、この時、似た様な構想を持っていた国は「近江」のみで、他の67国には無かった。それだけに、この発表は青天の霹靂であり、今後の対応を迫られる事態になっていた。

 即ち、「日本」に加わるか、加わらないか。加わらなければ戦争だ。いや、中立を宣言すれば受け入れてくれるだろうが、その際には宇宙の覇権を争う資格は失われる。つまり、「負け」だ。

 その混乱と焦燥の中で、真っ先に動いた国が一国存在していた。以前、「近江」と一戦交えて、戦争にならずに引き分けとなった「安房」である。

「我が国は、「宇宙統一機構・日本」の構想を全面的に受け入れて、これに参加する旨をここに表明します。第二次衛星防衛戦に置いては、衛星軌道での戦争が如何に悲惨な結末を齎すのかを如実に現しています。「日本」の構想はその悲惨な結末を一時的には止められる、現時点で唯一の方法です。宇宙空間での戦闘は未だ不可能であり、衛星軌道での戦闘は消耗が激しく、このまま68国がお互いに国力の限界まで争い続けていたら、その後の建て直しに成功するかどうかは分かりません。「近江」国の提示した「日本」の構想には、問題が無いわけではありません。あくまでも、これ以上の武力衝突を避ける為の臨時の手段として参加する旨をここに表明します」


 惑星テラースにある「安房」の国の基地にて、アベンダス・カラキュラ作戦中尉は、食堂にてその映像を見終えると、不味い食事を急いで食べると、作戦指揮室に飛び込んでいた。彼のエスコートの松下之佐知美戦姫曹長は、アベンダス作戦中尉に告げる。

「これで、終わっちゃいましたね。最初の戦いで醜態を見せたからと言って、いの一番に「日本」に降るなんて」

「いや、ここからだ。忙しくなるのは。衛星軌道での戦闘は、今後も激しくなる。「安房」の、国の発表の意図は、このまま狐狼となって山の峰に立つのがダサすぎるからだ。そんなの誰も得をしない。狐狼なんて、要するに一匹狼、群れから逸れた落ちこぼれだよ。今までのナーヴェリア大陸の勢力図では、狐狼でも何とかなる環境ではあったが、これからの「日本」と「反日本」の争いになったら、もう「中立」なんて損するだけだ」

「……それで、山の峰から降りたとして、次の群れではどの様な位置を狙うのですか。狐狼にはならないで、群れに入るのであれば」

「群れに入るのであれば、こちらにもするべき事は幾らでもある。例えば、軌道エレベーターの建造とか、攻撃衛星や偵察衛星の配置とか、この基地の制空権の確保とか、色々とやらなきゃいけない事があるだろう」

「……でも、一度戦った相手ですよ。第一次衛星防衛戦で、お互いに醜態を晒した国同士で、それなのに」

「朝令暮改も良い所、か。良いんだ、これで。初志貫徹して山の峰で格好付けて立っていたら、猟師に撃ち抜かれて無様に死ぬだけだよ」

 佐知美戦姫曹長は、アベンダス作戦中尉の背中を見た。今まで見てきた彼の背中の中で、一番寂しそうな背中であった。誰よりも「力」を信奉し、その「運命」に従ってきた男の背中である。「力の運命」に従ってきた男であれば、こう言う結末もあるのだと認めるしかない。

 松下之佐知美戦姫曹長は、「負け」を知った作戦中尉の背中を見ながら、その背中に向けて誓う。

 私はあなたが諦めない限り、あなたの背中を預からせてもらう。しかし、もし諦めたとすれば、その時は別に惜しくもなく捨て置いて良い。そこまで「負け」がこんでいたら、自分だって生きているかどうかは分からないのだから。

 その時は、あなたの背中で死んでやる。だって、あなたの様に面白い人間、居なくなったら世の中寂しいもの。「敗軍の将」と雖も、まだやる事は幾らでもある。


 「安房」のこの発表に引き続いて、次々と色々なリアクションが様々な形で現れていた。同じ様に賛同する国、反発する国、攻撃する国、援護する国。そのカオスの中で、徐々に宇宙は二手に分かれ始めていた。「日本」と「反日本」の二手に、である。しかし、「反日本」には「宇宙統一機構」に対抗する主義主張が無かった。「日本」と言う構想に対する反発以外に動機づけの薄い「反日本」は、大急ぎで自分達の正当性を保つ思想、戦後における支配体制の形を示すしかなかった。

 それが出来ない限り、この戦争は「宇宙統一機構・日本」の勝利に終わる。既に敗北宣言を出して惑星テラースの基地を引き払った「肥後」の国も、あっさりと「日本」への加入を表明、これも皮切りとなって、惑星テラースにて他国と同盟を結んでいない、山の峰に立っていた狐狼達は、自分達の将来を見据えて、次々と「日本」へと参画していた。

68頭の狼の「群れ」は、二手に分かれ始めていた。それは、「日本」にとって理想的な情勢であった。「日本」対「反日本」。分かり易く青と赤で塗り分けられている現状は、「日本」が構想中の「決戦計画」にとって状況を想定しやすい環境である。


「本国へ帰還せよ、か」

 「近江」国の織田之真之介作戦中尉は、それを聞いた最初は嫌な顔はしたが、その報告にはもう1つ、報告が加えられていた。

「帰還次第、作戦大尉へと昇進する」

 同じ通知は、鞍弐之光子作戦中佐にも届いていた。こちらは「作戦大佐」への昇進である。何のつもりで、この大事な時期に作戦班の中心人物となるまで成長した2人の作戦士官を引き抜くのか。何か大きな仕事でも任されるのだろうか。昇進だから「クビ」や「降等」ではあるまい。

ワープゲートに隣接する形で宇宙空間に浮かんでいるステーションには、他の国々の、「日本」に参画した国の宇宙船が集められていた。「近江」だけの話ではないらしい。もっとデカい話だ。向かう先も一緒ならば、そこで大々的に会合してやる事と言えば、1つだけだ。

 これから先、近い内に大規模な軍事行動を起こす為の準備に入っている。惑星テラースでの衛星軌道上での戦いに終止符を打つ戦いの始まりだ。


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