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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
第2章 統一戦争篇
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0033 宇宙統一機構・日本誕生

 「近江」「播磨」「尾張」「薩摩」

の連合の代表達は、「近江」の星へと密かに集められていた。最高行政施設の防備が固い地下三階にある会議室にて、今回の会合を呼びかけた「近江」の行政・官僚の事実上のトップ、内政大臣であるカリスタ・サマーズが、ワープゲートを通ってやってきた3人の代表に告げる。

「ご足労をおかけしました。何しろ、話す内容が内容なだけに、無線傍受などをされたら厄介な事になりそうなので」

「播磨」の大蔵大臣ダックストン・ゲルツ、「尾張」の首相ヴェスト・ハウフ・クラッツェ、「薩摩」の大統領ケルト・フォールト。それぞれの国にて実質最高の権限と発言力を持つ人間が、そこには集められていた。傍受されたら困る話題が今あるとすれば、ただ1つだ。即ち、「戦後」に関する話題だ。

 惑星テラースでの第二次衛星防衛戦と名付けられた戦いは、「近江」軍の圧倒的勝利に終わった。デブリの問題は、それまで言われていた程の大きな問題にはならなかったが、これは戦場が惑星テラースの衛星軌道に限定されていたからに過ぎない。

「で、我々を呼んだのは、もうこの戦争の趨勢が見えたから、でありますか」

「もっと先の事を見据える必要があります。ダックストン大臣。我々が勝ち残り、惑星テラースをリングにした戦いに勝利した後で、一体誰がどうやってその後の宇宙を統べるのでしょうか」

「……確かに。元々誰が船頭を務めるべきかと言う理由で始まった戦争ですからな」

「そうです、ケルト大統領。だからこそ、我々は「戦後」を見据えて、我々が勝利した後に一体どの様な世界を作ろうとしているのか、明確にしなければなりません。この宇宙全てを「近江」国とするまで戦うのは、最悪の展開です。それこそ、人類社会滅亡まで戦い続けるバッドエンドルートですな」

 ヴェスト首相は、ニヤリと口元を歪めて言う。

「で、「戦後」を見据えて、利益配分を決めようというのですか」

「利益ではなくて、新しい支配機構の創設です。この広大になりすぎた人類社会にて、中央集権を維持しつつ地方分権を何処まで認めるか、その提案を1つ示したいのです」

 カリスタ大臣は、殺風景な会議室の中にある椅子を示して座るように勧める。どうやら、長い話になるらしい。

「我が国「近江」は、宇宙規模の議会制の動員と、その中から選挙により指導者を選抜する、「宇宙統一機構・日本」の制度案を提案いたします。「日本」建国の折には、「議会星」を建設して、そこで議会を運営し、選挙の為の人員と設備もこの「議会制」にて準備します。「日本」は、今の所、68国中4国しかありませんが、この構想に参加したいとあれば、他の国々も参加させていく所存である。無論、これに異を唱えて、反発する国もあるでしょうが、これには惑星テラースの衛星軌道に置ける戦いにて全てを決する必要があります。「近江」国の提案する「宇宙統一機構・日本」のみが、今後の外宇宙への侵出を可能とする支配機構であると、確信しております」

 他の3人は、何をどう言えば良いのか、1分ほど分からなかったが、先に口を開いたのは、ダックストン大臣である。

「面白い! 完璧とは言えませんが、一国による独裁体制に比べれば、余程優れていると言えますな。但し、これは性善説に根差す精神によるシステムです。もし「日本」が「機能不全」に陥った場合、一体誰がこれを建て直すのでしょうか」

「機能不全と申しますと?」

「議会は議員で構成されます。指導者はその議員からの投票にて決まります。そこに利権や賄賂、身内贔屓による不正が蔓延れば、もはやそこには「日本」の矜持と理念は失われます。人間であれば、必ず不正が行われます」

「では、思い切ってAIに任せますか」

 カリスタ大臣の返答に、ダックストン大臣は眉を顰める。かなり痛烈な返答であったからだ。

「人間であれば、不正や腐敗は必ず現れるでしょう。ですが、だからと言って人間そのものを否定するのは、過激なだけで中身のない屁理屈です。後世の人間を信じる、と言うのは小っ恥ずかしい表現ですが、人間のやる事に絶対は有り得ないのです。理屈だけで出来た社会機構は、感情によって打ち倒されます」

「「日本」はそうならないと?」

 ヴェスト首相は、挑戦的な言葉とは裏腹に、無感情・無表情な口調と顔で言い放つ。カリスタ大臣は、相手を諭す様に言う。

「その役割が終わった時には、柱の一本も残らずに消え去るのみです。その次には、別の制度がこれに替わるでしょう」

「確かに、人類社会の生活圏が限界に来たからこその、「宇宙統一戦争」ですからな。これまでにない、新しい社会機構が必要だという理屈は分かります」

 ケルト大統領はそう答えて、次いでこうも付け加える。

「「宇宙統一機構・日本」、良いではありませんか。我が国は支持します。ワープゲートで惑星68国が繋がっている今、一体どの星が船頭を果たすのか、そう言う議論の末に戦争が起きるのであれば、こう言う力業で分断を鎮めるのは、悪くは無いでしょうな。今必要なのは、多少強引でも全体を纏める組織であり、法であり、枠組みです。制度の問題や細かい調整は、後々改めていけばいいのです」

 ダックストン大臣とヴェスト首相は、納得した表情を浮かべる。ケルト大統領が何を言わんとしているのかを理解したからだ。なる程、こんな大事な議論を、超光速通信や、近隣の宇宙ステーションの会議室でやる訳にはいかない。双胴戦艦の艦内の会議室など論外中の論外である。


 かくして、「近江」は自身が掲げた「宇宙統一機構・日本」の構想を宇宙全体に発布、これに賛同する国あらば受け入れるとしていた。

 無論、その発布と騒ぎは、実際に戦場となっている惑星テラースにも波及していた。これだけは、「矢張り」と言うリアクションは無かった。誰も彼もが「まさか」「そんな馬鹿な」「どうして」と言うリアクションにて、「えらいこっちゃ」と右往左往していた。

 その中で、冷静な顔をしている作戦中尉と作戦中佐が1人ずつ居る。織田之真之介作戦中尉と、鞍弐之光子作戦中佐である。2人は「宇宙統一機構・日本」の構想自体はそこまで評価していなかったが、このタイミングでこの発表を行ったのが、最大の衝撃となっているとみていた。

 第二次衛星防衛戦にて、「近江」国が圧勝した後でのタイミング。他の同盟国、「播磨」「尾張」「薩摩」も「日本」への参加を発表している。今度は、「日本」対「反日本」と言う構図になっていくに違いない。それが良いのか悪いのかは兎も角、もし「反日本」が圧倒的に多くなってしまったら、どうするつもりなのか。こいつはギャンブルだ。自分の手持ちのチップ、全部使って賭に出ている。それでいて、全く勝機が無いわけでも無い。

 矢張り、政治家は「狸」だ。嘘とはったり、口八丁手八丁、海千山千の政界にて登り詰めた「狸」だからこそ出来たのだ。これが「英雄」とか「皇帝」とか「大王」だったら、戦争が自身の勝利に終わった時に、玉座でも作らせて、そこで戴冠式でもやりながら発表するだろう。

 今度は、軌道エレベーターでも建造するべきかも知れない。衛星も有効ではあるが、軌道エレベーターの方が効率的であり、一度に運べる物資の量も種類も段違いだ。

 はてさて、「宇宙統一機構・日本」の船出は、波乱に満ちている。今後も波に耐え抜けるかどうか、無事海原に出られるのか、まだ分からない。


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