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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
第2章 統一戦争篇
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0032 火力

 惑星テラースの「肥後」の国の基地は、中央アスラン大陸に位置する。聖華大陸とヴィクター大陸の間に位置する地域であり、開拓暦以前は、政治的にもナイーブな地域であり、「魔のトライアングル」とまで言われた地域である。そうであるが故に、「肥後」がこの地域に入り込んだのは、他の国々の基地に対する牽制と抑止の意味があった。

 しかし、だからこそ、「近江」「尾張」「播磨」「薩摩」の連合が、衛星軌道をこの戦争での戦場として設定し、そこに攻撃衛星や偵察衛星を配置したのは、この「肥後」の国の戦略を根底から覆す事態であった。まだ同盟国は存在していないが、単独でも充分に地の利にて他の基地を威圧できるからこそ、この基地の意味は存在していたが、衛星軌道の支配権が全てを決するとあれば、「肥後」にとっては本末転倒である。

 例え単独でも、衛星を破壊しなければならない。隣国との合従連衡は最初から考えない。しかし、衛星軌道でのあの初戦の映像は、「肥後」の軍にも伝わっている。だからこそ、彼らもまた独自のやり方で問題解決を目指していた。

 「肥後」は、基地に予備兵力だけを残して、全戦力を「近江」の攻撃衛星と偵察衛星に差し向けていた。


 マリスト・テレストラ戦姫軍曹は、訓練にて初めてこの対物ライフルを撃った時の快感を思い出していた。訓練にて用意された廃品に回された機甲、人型ロボットに撃ち込んでみた際に、全高6メートルの機体に大穴が開いた。あの時の快感は、忘れられない。か弱い女に神が与えた力が戦姫だと言われているが、男はそれを克服する為に機甲を開発して、進化させ続けた。

 その機甲を貫いて、大穴を開けた。マリスト・テレストラ戦姫軍曹は、男の戦姫であるが、この訓練の一撃で、あっと言う間にこの武器の虜となってしまっていた。男である自分がこうなのだから、女の戦姫であれば身体が芯から震える快楽で頭がどうにかなってしまうだろう。

 目の前に迫るのは、「肥後」の国の双胴戦艦4隻。巨神8体、機甲37機、戦姫55人と言ったところだ。それら全てに巨大で分厚そうな盾を左手に持たせて、右手には巨大な剣を持っている。無重力ならば、どれだけ重たい武器でも防具でも問題ない。

 どうだろうか。デブリの問題、無重力と言う特殊な環境下にて、こちらの戦闘方法は通用するだろうか。この訳の分からない戦場にて、どう展開するのかは、誰にも分からなかった。マリスト・テレストラ戦姫軍曹は、この運命について、一切の迷いも無しに受け入れる。これを考えた織田之真之介作戦中尉の知恵について、全幅の信頼を抱いていたのだ。

 こちらの戦力は、衛星近辺に常駐している双胴戦艦2隻、巨神4体、機甲19機、戦姫41人。これだけでどうにか出来るのか。援軍が急ぎ準備しているだろうが、それまで持たせるか、あるいはその前に撃ち払うか。

 マリスト戦姫軍曹は、衛星軌道にてスコープの無いままに、対物ライフルを差し向けて、巨大な盾を構える敵の機甲部隊に対して、大口径の巨大なライフル弾を撃ち込む。

 セミオートで撃ち出される対物ライフル弾により張られる弾幕を前にして、粉々に砕け散る機甲の盾。次々と穴だらけになって動きを止める機甲部隊、その更に後ろの戦姫部隊は何をか言わんや。

 戦姫部隊の対物ライフルの弾幕を潜り抜けた「肥後」の戦姫部隊が突っ込んでくるが、そこへ「近江」軍の機甲部隊が颯爽と現れて、全高6メートルの人型ロボットが手に持つ機関砲を撃ち放つ。民生用のスラスターの姿勢制御は、よく機能していた。

 最後に、「肥後」の国の双胴戦艦4隻の艦橋に向けて、「近江」軍の巨神が両手で構えるカタパルトにて、巨大な矢を撃ち出した。双胴戦艦の艦橋を貫き、抉った矢は、艦橋から機関に至り、これの機能を完全に停止させた。

 勝負あり。残された「肥後」の戦姫部隊は、生き残った巨神を連れて撤退していた。後に残るのは、重力に引かれていって燃えるデブリと、重力を振りきって宇宙の彼方にと飛んでいくデブリ、衛星軌道上にて周回するデブリ、宇宙ゴミだらけである。これが地上であれば、死屍累々、屍山血河と言ったところであろうか。

 織田之真之介作戦中尉と、鞍弐之光子作戦中佐は、自分達が考案した戦法の結果を見て、この後始末をどうするのかも考えなければいけないと考えていた。折角守った衛星が、このデブリで壊されたら元も子もない。ワープゲートと宇宙ステーションにも知らせなければ、あそこまで飛んでいくデブリもあるだろう。

 それから数時間後、攻撃衛星からレールガンの砲弾が、「肥後」の地上基地に1発、撃ち込まれる。その瞬間、「肥後」はこの惑星テラースにて繰り広げられる「宇宙統一戦争」に置いて敗北した、最初の惑星国家となったのである。


 ヴィクター大陸にある「三河」の基地にて、同大陸に基地を構える国々の軍人が集まってきた。「信濃」「越後」「加賀」「能登」「越中」。呼びかけたのは、「三河」の国の基地司令官、サラージュ・ヴァン・レジェスト大将である。

「「近江」が「肥後」を破った。攻撃衛星からの攻撃で基地に威嚇射撃を受けて、「肥後」は基地を引き払うそうだ」

 それを受けて、6国の代表者の顔が曇る。このまま「近江」「播磨」「尾張」「薩摩」の連合軍が衛星の数を増やしていけば、衛星軌道から好き放題に攻撃も偵察もやりたい放題だ。何かしなければならない。地上から衛星を落としても、近隣宙域には1個艦隊が護衛についている。このまま手を拱いていれば、戦わずして負けて、今後は惑星テラースは「近江」「播磨」「尾張」「薩摩」の4カ国が争う構図となるだろう。

「だが、まだだ。まだ「運命」に抗う手段はある。兎に角、あの「肥後」での戦いで我々が得た教訓は、この一点に尽きる。地上だろうと衛星軌道だろうと、そして宇宙だろうと、「戦争」で物を言うのは、「火力」! 何処であろうと、「火力」こそが戦局を握る。「火力」でしか道は開けない」

 サラージュ大将は、一番広い会議室に置かれた「人類史上最高の軍事的発明」であるアクリル板にて作った作戦図を蹴り倒す。

「もう戦場は地上ではない。衛星軌道の取り合いは、これまでに我々が経験した事の無い戦いだ。全ての常識はもう過去の物だ。だが、それでも基本は同じだ。「火力」で全ては決する。銃剣突撃も、近接戦闘も、「火力」の壁では無力だ」

 最後に1つ、付け加える。

「「肥後」だけが脱落したのは幸運だった。今後は、情けない戦いが出来る」


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