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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
第2章 統一戦争篇
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0028 同族嫌悪

織田之真之介作戦中尉は、その話を聞いて、最初はまさかと思い、それが真実であるとエスコートであるマリスト・テレストラ戦姫軍曹からも聞かされた時、いつもの砂いじりを止めて、自分の部屋に向かっていった。デスクトップからウェアラブルまでの様々なパソコン、それらに記録させる様々な外部記憶メモリを、段ボールに無造作に放り込んでいく。何処へ行くつもりなのか。尋ねるマリスト戦姫軍曹に、真之介作戦中尉は答える。

「今日付で最前線勤務だ。となれば、基地で悠長に作戦を考える暇なんて無い。この基地で一番デカい双胴戦艦に乗り移って、今後の戦争計画を練るように、程なく司令官から矢の催促が飛んでくる筈だ。その前準備だよ」

 この真之介作戦中尉の言葉が終わるのと同時に、「腕スマホ」から呼び出しがかかる。画面を指で弾くと、こんな一文が立体映像で浮かび上がる。

「双胴戦艦「烏丸」への配属を命じる。他の作戦班も全員呼び出した。荷物を纏めてすぐに行け。」


 双胴戦艦。150年前の戦争にて、その有効性が実証された兵器である。元は大型のコンテナ船やタンカー船を魔改造してでっち上げていたが、今は「0」から「10」までそのつもりで建造する。「戦艦」と言う割には、デカい大砲は愚か、ミサイルすら積んでいない。代わりに、全高20メートルの巨神が、専用のリボルバー式弾倉の速射砲にて、敵を撃つ。そうでなければ、全高6メートルの機甲兵器、人型ロボット兵器が、右手にリボルバー拳銃、左手に盾を持ったポイントマンを務めて、後ろからポンプアクションショットガンで弾幕を張る。それを抜けたら、数十人の戦姫がこれを迎え討つ。

 各々の惑星国家が、自分の星の造船所にて建造して、この惑星テーラスまで運んでくる。造ろうと思えば、1ヶ月に1隻は建造できる。乗せる巨神や機甲、戦姫もすぐに用立てられる。それでも、惑星テラースにて全力で戦力を整えて、これを送り込まないのは、まだその時ではないからだ。しかし、その時が来るのは避けられないのは事実であった。


 双胴戦艦「烏丸」の浮かぶ港には、他にも大勢の作戦士官やそのエスコート、それに巨神や機甲、戦姫、それらが用いる武器弾薬がかき集められていた。皆、落ち着きの無い、浮き足立っている印象なのが良く見て取れた。

 150年だ、150年。その間、一度だって戦争なんてした事が無い。生活環境も大きく変わった。この広い宇宙の極一部ではあるが、生活圏は宇宙にまで広がった。68もの惑星に、同程度の経済基盤を持つ、理想的なユートピアを建設したのだ。その筈だった。楽園を建造した筈なのに、満ち足りている人間は居ないのだ。68もの惑星にまで開拓の手を伸ばした、もう充分ではないか。

 いや、まだだ。まだもっと遠くまで、もっと広いところへ、もっと高いところへ行きたい。その為には、今のままでは駄目なのだ。68の惑星にまで生活圏を広げた。生活を豊かにした。後は、誰が船頭となるのか、それを決めるのだ。

 その為に、この惑星テラースにて決着をつけるのだ。他の国では、後方から直接第一線の作戦士官や将軍を呼びつける所も出てくるだろう。自分の国、「近江」ではそう言う事は無い。つまり、この星にいる作戦班に全部任せていると言う事になる。

 そうだとすれば、拙いことになるな。「尾張」「播磨」「薩摩」との共同活動について、かなり危険な障壁になる作戦佐官が一人、「近江」の作戦班に抱え込んでいるのだ。

 鞍弐之光子作戦中佐。彼女はエスコートを連れながら、そこのけそこのけと言わんばかりに、威風堂々と港を歩いて行く。「近江」の士官学校での成績が良かった訳じゃない。別に名家の出身である訳でもない。それなのに、仕草が偉そうで、言動も偉そうで、その性格は「唯我独尊」という言葉がしっくり来る。何でそんなに「自分」が大好きなのか。よく分からないし、誰もそんな事に興味は無かった。

 士官学校の成績順位は211番中111番。凡人中の凡人である。ルックスだって普通の可愛い程度には普通だ。無論、これと言って戦績もない。ただ、人に不快な思いを抱かせる事に関しては天才的である。

 マリスト戦姫軍曹は、エスコートでついて回る光子作戦中佐の戦姫を見つめる。快不快はそこにはない。むしろ表情を殺して任務に尽くしているという雰囲気である。鞍弐之光子のエスコートは、度々変わる。エスコートが「やってられない」と言って出て行くか、光子が「あいつは使えない」として追い出すか、そのどちらかであるからだ。

 何故そんな協調性の無い奴が、作戦佐官にまで上り詰めているのか。「コネ無し」「金無し」「色気無し」の三重苦の女性が、ここまで上り詰められたのは、「はったり上手」であるからに他ならない。自説を貫く時、相手と対話する時、人と討論する時、こいつは自分の意見を曲げた事が一度だってない。口八丁手八丁、理屈だろうと屁理屈だろうと、何とでも言われようとも、自分の意見は曲げない。

 そう、つまり、織田之真之介作戦中尉と鞍弐之光子作戦中佐は、方向性は違えども本質は同じなのである。自分との意見が合わない相手に対して、忖度も遠慮も出来ない、自説を曲げ協調性を取るような真似はしない。


双胴戦艦「烏丸」の作戦指揮室にかき集められた作戦班の士官や佐官は、150年前と変わらない原理で造られた作戦図、透明のアクリル板にマジックペンで状況を書き込む形式の作戦図を前にして言う。

「「出雲」の国が、動き出したようだ。情報機関からの報告では、この惑星に次々と武器弾薬、それに食糧も運び込んでいるらしい。これに同調する形で、「信濃」や「越中」の国々の動きも活発化している」

 司令官の言葉に、その場に居る作戦士官や佐官は、全身が固まる。いよいよだ。150年の沈黙を経て、遂に談判敗れて暴力の出る幕である。

「でもな、まだ星の方では議論が続いている。いつぞやの、決戦派と和平派の争いに近い。その時は和平派が勝った。今度は決戦派が優位だが、どう思うかね、諸君。勝てるか、負けるか、勝てるとすればどうすれば勝てるか、負けるとすればどうしたら負けるか。これから、昼夜を問わずに議論してもらう。出来上がった結論は、同盟国の作戦班に持っていく。無論、「尾張」「播磨」「薩摩」が纏めた計画もこっちで検討する。忌憚のない意見を待っている」

 司令官はそれだけ言うと、作戦指揮室を出て行く。残された作戦士官と作戦佐官は、取り敢えず惑星テラース全体が見える作戦図を持ち出してくる。この瞬間、統一戦争と呼ばれる戦争が始まったとも言われている。


 もう狐狼を気取って独りで山の峰に立つ訳には行かない。それに気が付いた68の国々は、この惑星テラースにて次々と自分達に必要な同盟国を探し始めていた。諸事情により宇宙空間での艦隊決戦や空中戦が不可能である今、この星での戦いこそが全てを決する。ある意味、その先駆けとなった「出雲」の国でも、基地に配備されている双胴飛行船に、巨神、機甲、戦姫、武器弾薬、水と食料を積み込み始めていた。星からの救援物資や予備兵力も次々と運ばれてきて、宇宙の火薬庫とも言うべき状況になった惑星テラースは、その導火線に火がつけられようとしていた。


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