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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
第2章 統一戦争篇
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0027 消えた補給線

 どうにもキナ臭い。あいつ、何か為出かすつもりらしい。でなければ、こんな話が回されるとは思えない。無論、自分の所にだけこんな話が回された訳では無いだろう。そこら中の国々に話を回しているに違いない。その国々の中で、どれだけの数の国がついていくのか。その数によっては、この惑星テラースの血と海と空は真っ赤に染まる。

 「播磨」の国の作戦大尉、マーク・カシノミは、さっきまでの会話を思い出す。


「「出雲」の国と共に手と手を携えて、この宇宙を共に支配しましょう。「播磨」の国の力は、何処の国よりも我々が高く評価しているつもりです。そうでなければ、この様な場を設けはしません」

「では、失礼を承知でお聞きしますが、他の国々の力はどの程度の評価をしているのでしょうか。既に幾つかの国々に対して、同じ場を設けて、同じ話をしたのでしょうが、返事はどうだったのでしょうか」

「様々なリアクションでしたが」

「そこは2択しかない筈ですが。「はい」か、「いいえ」か、そのどちらかだけだと」

「人間、色々と言葉だけで何とでも言えるものです」

「ですが、我々は2択しか用いませんが」

「構いません」


 結局、マーク・カシノミ作戦大尉は「いいえ」を選択して、「出雲」から送り込まれた交渉役である作戦中佐を追い払った。「出雲」の国は、そこまで力のある勢力とは言えない。68国で名高い軍師や指導者が居る訳では無い。良い意味でも悪い意味でも特徴は無い。

 だからこそ、か。この惑星テラースに置ける膠着状態を抜け出す為に同盟国を見つけ出して、共に戦う「同志」を求めているのだ。この「播磨」の国だけにこの話を持ちかけた訳では無く、他の国々にも片っ端から同じ話をしたに違いない。

 戦姫のエスコートを連れて行きながら、マーク・カシノミ作戦大尉は一つの腹案を抱えて、基地司令官のデミノス・クラーク中将の居る司令室に向かう。デミノス中将も、この件についてはマーク作戦大尉と同じ考えであった。

「奴等、仕掛けるつもりだ。近々、同盟国を集めて、この星を戦場にするつもりだ」

「中将閣下、何で「出雲」が仕掛けてくるのでしょうか。連中、何か事情でもあるのですか。不景気とか、財政難とか、、政情不安定とか、色々とあるでしょう」

「それは知らない。但し、同盟国を募り始めているのが「出雲」だけと思うのは危険だ」

「他の国でも同じ兆候が現れると?」

「間違いない。気が付けば、大海にて浮かぶ岩の如く孤立するぞ。こちらもこちらで、同盟国を探さなければ、何時までも狐狼を気取って山の峰に立つわけにもいかないだろう」

「それは流石にダサすぎますな。ですが、そこで焦って相手を選ばずに同盟交渉なんてしてしまったら、手の思う壺じゃないですか」

「なら、調度良い、君が選びたまえ。68国が引き裂いた惑星テラースに展開している国々の中で、組むべき相手を選んでくれたまえ。なるべく早く、そして理にかなった選択を頼むよ」


 マーク・カシノミ作戦大尉は、その時は快諾したのだが、後々になって受けたのを後悔し始めていた。自国を除いて67国もある国々の内から選べというのだが、ワープゲートによる超移動空間航行によって、68の惑星に根付いた国々にて兵站戦と言う概念が消滅していた。ワープゲートを一つでも破壊すれば、自分達の通商ルートを失うのだ。船だけ狙うのもNGである。飛び散った破片が何処へ飛んでいって、何処にぶつかるのか。デブリの処置については、開拓暦が始まる前より問題となっていた。

 つまり、戦場となるのはこの惑星テラースの6つの大陸のみ。そこから外の宇宙にて戦争なんて出来ない。「補給線」への攻撃が完全に禁じ手となった特殊な環境下に置いて、どうやって優劣をつけるのか。

 「出雲」の意図が、そこから滲み出ていた。なる程、これでは手当たり次第という話になる。経済・政治・軍備、どれを取っても如実に差が出ていない今、一体何を根拠として同盟を呼びかけるのか。餌も無ければ針も無いままに糸だけ垂らして魚を釣ろうという話である。

 マーク・カシノミ作戦大尉は、「播磨」の国の基地のある聖華大陸と呼ばれていた陸地に基地がある今、最も重視すべきは地政学的条件であるとして、近隣の旧レイド・サム諸島に基地を構える「近江」の国に先ず話をつけるべきであると結論づけていた。他にあるとすれば、南アスラン大陸の島々に基地を構える、「尾張」の国にも話をつけるべきだ。その近くの列島に基地を構える「薩摩」はどうだろうか。

 誰もが同じ立場で同じ条件ならば、考えている事も同じ筈だ。問題は、どう言う条件で同盟を結ぶかだ。かつて惑星テラースに存在していた「東アスラン同盟」や「V・UNION」と言った合従連衡は、建設的な解散を果たしていたが、今度の同盟関係はどうだろうか。どう言う形で終わらせるのか。

 こいつはもう、こっちの判断だけでは、現場の人間だけでは判断できない。マーク・カシノミ作戦大尉は、惑星「播磨」に戻って元老院に審議させるべきであると判断していたが、デミノス・クラーク中将の返答は意外なものであった。

「そこについては、もう話をつけた。こっちに任せても良いらしい」

 いや、そんな話はしていない。決定権の問題ではなくて、判断基準の問題である。

「それについても、君に一任されていると思ってくれて良い。で、最初に交渉すべき相手は、何処であるとみる」

 「近江」が一番近くて、連携もしやすいと思います。その後、南の「尾張」と「薩摩」にも話を持ちかけたいと思います。

「……まぁ、地政学的条件に則って判断すると、近い地域の基地から、と言う事になるな。良いじゃないか、やってみせたまえ。こちらも出来る限り便宜をはかるから、やってみろ」

 了解しました。出来る限り、やります。


 そうとあえば、後はもう話は簡単である。「近江」「尾張」「薩摩」の各基地へとアポイントを取り、順番に交渉をしていく。経済協力・軍事協力・民間交流、何でも良いから相手からのOKを取り付けるつもりであった。

マーク・カシノミ作戦大尉は、連絡機に乗り込みながら、頭痛を感じていた。これからどうやって交渉しろと言うのか。地政学的条件だけでどうにかなるのか。それだけで、肩を並べて戦ってくれる仲になるというのか。

 自分はとんでもない仕事を引き受けたのかも知れない。マーク作戦大尉は、座席に座って、瞼を閉じて、腕を組んで、考え込む。考えても考えても、なかなか良い答えが導き出せない。


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