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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
第2章 統一戦争篇
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0025 逆説の運命

 その美しいルックスとスタイルが無ければ、彼は女装癖の変態であったが、マリスト・テレストラ戦姫軍曹は、例え自分のビジュアルが酷かったとしても、戦姫としてそこに居るつもりであった。織田之真之介の行くところ、何処へでもついていくつもりである。

 マリストは元来、暗い性格では無い。口数は少なかったが、偶に口から出てくる言葉は毒のスパイスが効き過ぎているか、あるいは練乳で塗り固められているかのどちらかであった。それでも、マリスト・テレストラ戦姫軍曹が、織田之真之介作戦中尉のエスコートとして選ばれた理由は、「強い」から、それと「無口」だからだ。他にも一つ、個人的な動機があった。

 マリスト・テレストラ、14歳にて惑星「近江」の田舎町の路地で、独りで遊んでいた。親も無く、親戚からも家から追い出されて、施設に入っても居着く事が出来ずに、独りで石を投げて遊んでいた。誰も見向きもしないで、むしろその存在を頑張って無視して、そこに居るけど居ないものとして扱われていた。

 そのマリスト・テレストラに、織田之真之介が、当時23歳で作戦下士官としてデビューしたての新人がやってきて、彼に告げる。

「暖かいご飯と寝床が欲しくないか」

「要らねぇ。俺は強く生きる」

「じゃあ強くしてやるから、付き合え」

 真之介のこの誘いを受けて、男ながらに戦姫として仕込まれて、マリスト・テレストラ戦姫軍曹と呼ばれるにまで昇進していた。最初の1人目は、反軍思想の過激派であった。

「くたばれ! 軍国主義者!」

 と言って、小刀を振るい翳してきた過激派の女性を、マリストは左手で顔を掴み、そのまま潰そうとした時、真之介は支持を出す。

「殺すな! 死体は黒幕や動機を吐かない」

 マリストは、彼女の顔を掴む左手を開く代わりに、今度は右手で女性の胸ぐらを掴みあげる。その後、慌てて駆けつけた警備の人間に引き渡された後で、マリストは尋ねる。

「どうせ下らない理由と動機だ」

 なのに、何故助けたのか。そう暗に尋ねるエスコートに対して、真之介は答える。

「必要な手順だ。捕まえて裁かなければ、あいつは反体制の英雄にされてしまう」

 確かに、それは嫌だな。必要な手順を踏まないと、そう言う事があるのか。2人目に対しても、マリスト・テレストラ戦姫軍曹に昇進が決まったその事件にて、今度は彼の左手が、相手の頭を潰すまでやった。

 織田之真之介作戦中尉に昇進した彼が所属していた派閥、決戦派と和平派に別れた軍部に置いて、和平派であった真之介を狙う決戦派の刃が彼を狙った時、マリストは一切躊躇せずに相手の頭を掴んで、そのまま握り潰した。

 何故殺したのか。今度は問われなかった。動機も黒幕も明らかであるこの場にて、マリストは何一つ異論・反論を受けないままに、自分の戦果第二号を見つめていた。人が死ぬのなんて、簡単で一瞬だ。男だから、女だから、子供だから、老人だから、そんな忖度を「死」は許さない。誰であろうと、一度「死」を迎えれば、もう帰っては来ない。

「人は、何の為に生きて、何で人は死ぬ」

 いきなり哲学的な問いを投げかけられて、織田之真之介は10秒ほど固まった末に返答する。

「それは、順序が逆だな。生きる為に何かして、その結果として人は死ぬ。お前は生きる為に何をするつもりだ」

 そう言うお前は生きる為に何をしている。

「働いている。分野こそ違えど、お前も俺と同じだ。人の生き死にに纏わる仕事だからな」

 何の為に殺すんだ。

「それは俺達が決める事じゃない。俺の仕事は作戦を考える事、お前の仕事は俺を守る事。それだけ考えていれば良い」

 人生、もっと意味があって、理由があると思っていたけど。

「そう言う奴らの気持ちは俺にも分かる。生きる事に理由や動機を求めるのは楽だ。だが、それでは「運命」には勝てない」

 運命とはなんだ。

「俺達に常に付き纏っている死に神みたいなものさ。ちょっと気を抜けば、「運命」は何時でも俺達の命を取りに来る」

 じゃあ、「運命」に勝たなければ、生きてはいけないのか。

「そう言うわけじゃない。でも、人は「運命」とは共存できない。人には意志があるからな。勝手に「運命」に悪戯されたら嫌だろう。俺達「人間」は「運命」には勝てない。だから「人間」は生きて戦い続けなければならない」

 ……よく分からない。だから、俺は今の所、お前を守る為だけに生きる。

「つまらない生き方を選ぶと、「運命」に絡み取られるぞ」

 今の所、俺に出来るのはお前のエスコートだけだ。それも給与の為、生きる為だ。俺は立派な人生とか、豊かな人生とか、そんな物には興味無い。俺はお前を守る為に生きる。それで充分だろう。

「……まぁ、好きにしろ。それも「人生」だ。お前が「運命」を決めるんだ」


 「近江」軍の作戦室には、既に大勢の作戦士官が集められていた。リングデバイス、通称「腕スマホ」と呼ばれる端末にて呼び出された作戦士官達は、その場を取り仕切る将官の顔を見る。

「こいつはまだ未確認情報だが、ヴィクター大陸に「三河」が建造した軍事基地にて、小規模ではあるが破壊活動が起きたらしい。まだ「らしい」レベルでの情報であり、隣接する「丹後」の基地が関与していると言う確証も無い。現地民による犯行の線も消えていない」

 では何故呼んだ。そんな声にならない雰囲気が伝わってくるが、将官はこれをバッサリと斬る。

「ヴィクター大陸だけでなく、ナーヴェリア大陸の方でも、同じ様な情報が齎された。アスラン大陸でも、北ソメリト大陸も。ここでは、旧レイド・サム諸島では見受けられないが、どうもこれからキナ臭い状況になるかもわからん」

 織田之真之介作戦中尉は、その場の空気を要約して言う。

「備えておけ」

「そう、そうだ、備えておいて欲しい。元々、そのつもりで貴官らはこの星に集められたのだ。今更嫌とは言わせんぞ」


 作戦室から作戦士官が一斉に出てくる。あの将官の演説の後で、何故一斉に出て行くのかというと、休憩の為だ。このインターミッションが終わったら、この戦争が終わるまで休み無しのぶっ通しの徹夜地獄が待ち構えているのだ。

 やる気のあるなしに関係なく、真之介は自分の部屋には向かわずに、基地の傍にある砂浜まで向かっていた。食っていく為に軍人に、それも前線に出なくてもいい作戦士官になった癖に、「正しい」と思った事は誰が何と言おうと押し通すのだから、元々この基地にて「居場所」なんてものは最初から無い。

 その後ろに、マリスト・テレストラ戦姫軍曹がついていく。それは「戦姫」と言うよりは、「騎士」のそれに近い。「飼い犬」と言う程可愛げのある風貌では無かったが。

 その腰に提げている物が、彼の性格を、スタンスを、如実に表していた。デカい・長い・強そうなリボルバー拳銃が2丁、それに背中に常識の範囲内での大剣が背負わされている。「飼い犬」と言うよりは、「闘犬」、否、「狂犬」の類であろう。

 陽が出てからおりるまで、砂を弄くりながら、織田之真之介は独り、思案に耽る。そこにどんな深淵の意志があるのかどうかは分からない。もしかすれば、その頭の中に国家百年の大計でも練っているのかも知れないが、傍から見ると砂遊びをしている小学生にしか見えない。

 出来れば、ずっとこうして居たかった。こんなクソつまらない、クソの面白くない星で骨を埋めるつもりは無い。人間、ベッドで寝かされて死ぬのが一番幸せとも言うでは無いか。


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