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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
第2章 統一戦争篇
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0024 大海

 河から海に出た人類は、宇宙という無限に近いその空間を前にして、次々と宇宙開発に乗りだしていた。経済的効果・国威発揚・探究心、これらの動機づけにて宇宙へと出て来た人類は、その無垢な空間を貪るように開発していき、無数の惑星が地球とそこまで変わらない環境へと改造していった。

 そうして、気が付けば人類は、68もの惑星を開拓し、それら全てを統制するのは不可能である現実に直面していた。しかし、海に出て行った今、今更河に戻るのは不可能だ。惑星テラースから大海に出た68の島々にて政治を行うのは、不自然であり不可能であった。

 68の星々を繋げるワープゲートと、それに併設された宇宙ステーションの存在も又、一つの現実を突きつけられた。元々宇宙空間で戦争するのは困難の極みである。相手が爆発したら、飛んできた破片で自分も死ぬ。破片を防げるだけのバリアーをつけたら、お互いの武器は通じなくなる。そして、飛んできた破片がワープゲートや宇宙ステーションにぶつかってこれを破壊すれば、68の惑星を繋げる航路が大混乱に陥る。

 中央政府の統制が乱れて、多数の自治体に分断されたら、やる事と言えば「統一戦争」であるのだが、何処でどうやって、と言う基本的な問題が発生していた。

 このままで良いのではないか。と言う意見もあったが、68の星々がバラバラになって地方分権で物事を進めるのも、立派な一つの選択肢である。それでも、中央集権がある程度は機能していなければ、「狸」が居なければルール作りやトラブル処理も出来ない。何処の誰が一番なのか、決めなければならない。

 でも、何処で戦うのか。いやいや、うってつけの場所が、まだ残っているでは無いか。惑星テラース。今はもう辺境の惑星となって人もそんなに住んでいない、宇宙空間の様に有害な宇宙線や放射線も無い。破片も飛んでくることはあるが、それで死ぬ事は無い。特別な装備を用意する必要も無い。

 宇宙空間での艦隊決戦や空中戦は不可能だ。かなり面倒なアクロバットが必要であろうが、そんな面倒な真似をするくらいならば、慣れている場所でやれば良い。これが一番良い。

 68の星々は、次々と惑星テラースに自軍の基地を建設し始めていた。「「テラース」解放戦争」が終わって、人類が宇宙に進出し始めてから150年後。「宇宙統一戦争」の始まりである。


 海に出たのに、また戻ってきてしまったか。新しい港も町も出来たのに、ここへ来てまた古巣へ戻ってきて、そこで殺し合いをしようというのか。

 織田之真之介作戦中尉は、その母港である惑星「テラース」の砂を右手で思い切り掴んで、ゆっくりと砂浜に落とす。自分の星、「近江」にも海はある。砂浜も整備されている。こんな事、別に「テラース」で無くても、それこそ、何処の星でも出来る。

 「近江」は、その68国の中でも、そんなに大きな規模は持たない。そんな国でも、この遠い辺境の惑星に軍隊を送り込んで、基地の建設もしている。こんな所で、一体何をしているんだろうか。もっと外へ、もっと遠くへ行くんじゃなかったのか。

 仕方が無い、海に出ると言う事は、色々なリスクのある行為なのだ。これも運命だ。無計画に膨張した結果、その尻拭いに血を流すのも、宇宙規模に広がった生活圏を手に入れても、未だに戦争を卒業出来ないのも、みんな人の世につきものの運命なのだ。

織田之真之介作戦中尉は、特に見た目が個性的、と言う訳では無い。普段彼が見せる素振り、身振りにも特徴は無い。ただ、自分が正しいと思った時に、妥協や遠慮が出来ないのだ。それは作戦班として「近江」軍の作戦を練る作戦士官であれば、必要な才能かも知れないが、人間と言うのは何時でも何処でも正解ばかりを選んできたわけでは無い。

 今はまだ、何処の星も実際に戦闘行為には出ていない。これからこの星の何処かで行われるだろうが、今じゃないだけで、何時かはその手段に訴えることになるだろう。

 そうなったら、勝てるかな。イマイチ自信は持てない。だからと言って、「無理です。負けます」と言う段階では無い。150年間、「Ν財団」による宇宙開発の持つ魔力に惹かれて、後先考えずに生活圏の拡張だけを目的に頑張ってきた。なのに、また戦争だ。どうする、この進歩の無さの極み。

 開拓暦78年4月6日。織田之真之介作戦中尉は、砂浜にて両手で砂を弄びながら、色々と思案に耽っていた。どうしようかな。もう戻れないかな。作戦班とは言えども、他に就職先が無いからと言う不純な理由で選んだ進路であったが、気が付けば20代で士官である。順調に出世コースに乗っかってしまっている。今更「辞めます」と言って辞表を書いたら、握り潰されるに決まっている。

 真之介は、ひたすら砂を弄ぶ。まるで子供の様な仕草であったが、正直、織田之真之介、28歳の男性は、故郷の「近江」へ帰りたい気持ちでいっぱいであった。人間、極限状態に置かれると幼児退行すると言われているが、本当らしい。

 この砂の一粒一粒もまた、定められた運命の下にてここにあるのだろうか。であれば、自分はこの砂の様に弄ばれているのだろうか、あるいは自分で選んだ運命に基づいて生きているのだろうか。河から海に出てしまった今となっては、もう分からないのかも知れないが、せめて理由くらいは知りたいところだ。こっちの命は、人生は1度きりなのだから。疎かに生きていたら罰があたる。しかし、砂は何も答えてくれない。ただそこにあるだけだ。

 そろそろ基地に帰ろうとした時、デバイスリングから緊急召集を告げる音が鳴る。何処かでやらかした奴が居たのに違いない。

 河から海へと出た人類は、また故郷に戻って誰がトップなのか、それを決める為にお互いの身体に食らい付いていた。王が2柱なれば国は乱れる。ここで誰が一番なのか決めなければ、もっと遠くへ行けない。


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