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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
第1章 解放戦争篇
23/51

0023(第1章 完) 運命の結末

 バラランティス・メサイアは、自宅の庭から空を見上げる。87年間、この国の経済の中枢を担ってきたのは、愛国心からではない。自分の力が何処までこの世界にて通用するのか、それを試す為である。

 結果的には、そこまで通用しなかったな。グレイス島攻防戦の結末を見れば、それは明らかであった。この400年、世界の覇道を征っていたソメリト合衆国の断末魔の叫びを聞いていた。


 レイド・サムの聯合艦隊から運ばれてきた全高20メートルの巨神は、ダイヤモンド湾へと次々と足を踏み入れていく。目の前には、基地守備隊の巨神が立ち塞がっている、全高20メートルの筋肉と金属の塊が殴り合う光景は壮観であった。

 そうして巨神が大立ち回りを演じている間に、機甲と戦姫がグレイス島へと侵入し、島の守備隊司令部目がけて進軍していく。機甲の最前列は巨大な盾を左手で構えつつ、右手に巨大なリボルバー型榴弾砲を備えている。

 巨神、機甲、戦姫の入り乱れる戦場の中で、巻き添えを食うのは逃げ遅れた、否、逃がそうとしなかった避難民であった。もし事前の取り決め通りに行われていれば、犠牲者は出ない筈であった。

 避難船も、旅客機や輸送機も、流れ弾を喰らって、巻き添えを食って、そして時には盾にされて次々と沈没するか、撃墜されていく。「軍隊は約束を守らない」と言う鉄則は、ここでも適用されていた。例え世界唯一の軍事大国と雖も、このジンクスからは逃げられなかった。

 盾にされた住民は、抗議をする間もなく粉々に砕け散る。楽園は血で染まる。逃げ遅れた人々、逃げようとした人々、逃げ始めた人々、全てが踏み潰されて、爆風で吹き飛ばされて、流れ弾を受けて。次々と死んでいく。

 そこには、「国民を守る無敵の軍隊」という虚飾は存在しなかった。「負け」がこんできた軍隊のするところであった。「負け」がこんでいる。絶対にソメリト合衆国の軍隊が陥ってはならない状況である。

 8隻の「戦闘指揮艦」は、11隻の双胴船から出て来た戦力を防ぎきる事は出来なかった。それでも、残存兵力を収容して、グレイス島から避難する住民を警護出来たのは、不幸中の幸いであった。

 しかし、そんな健気なソメリト合衆国軍を見守る真似もしなかった。避難民諸共、レイド・サムの軍隊は容赦なく攻撃していた。守備隊も機能しなくなり、逃げ遅れた民間人を多数抱え込んだ末に、守備隊司令部はレイド・サムの「降伏勧告」に応じていた。


 バラランティス・メサイアは、改めてニュースの記事を読む。1面トップでこれだ。

「ソメリト合衆国軍 大敗」

「グレイス島での大失態 民間人を盾にする」

 まぁ良い。仕方が無い。いや、本来は仕方が無いなんて雑な言い回しで済ませられる事態ではない。民間人を守るべき軍隊が民間人を守らないどころか盾にしたのである。しかし、元々軍隊を信用していないバラランティスにしてみれば、どうでもいい問題であった。

 こうなるべくしてこうなったのだ。また「1」から、否、「0」からの再出発である。バラランティスは、その未来の投資先を見上げていた。

「宇宙か」

 悪くは無い投資先だ。しかし、今度はソメリト合衆国を頼るつもりはない。「V・UNION」が不穏な動きをする前に、ソメリト合衆国は急いで「戦争の終結」を計るだろう。そんな国で宇宙開発なんて出来やしない。

 それでも、いつまでも生きていられるわけでもない。自分はもう御年87歳、自分の意志を継ぐ弟子筋が必要であった。

 バラランティスは、自分の両手を見る。何ともボロボロになった両手だ。この手では、もう跡継ぎを探すくらいしか出来ないだろう。

 宇宙開発。それを担う若い才能を集めて設立した財団、「Ν財団」こそが、「ゼータ商工会」に替わる新しい世界の支柱となってくれる。

 なんだか急に眠たくなってきたバラランティスは、自宅へ戻ると、椅子に座って、目を瞑る。妻は亡く、娘とは疎遠、孫は顔も見たことがない。でも、後腐れが無いように全部準備しておいた。あとは、次の世代の時代だ。

 バラランティス・メサイアの魂が天に召された日、ソメリト合衆国政府は軍によるグレイス島奪還作戦の計画中止を発表、名実共にレイド・サム率いる東アスラン同盟の勝利が確定したのである。


第2章へ続く



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