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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
第1章 解放戦争篇
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0020 デカい仕事

「そうか、「烈」「渇」「黎」は直接協力はしてくれない、と言う事か」

「事務次官殿、本官でも同じ立場であれば協力を拒否します。グレイス島に攻め込んで、これを占領するなんて。世界唯一の軍事大国の鼻っ面をへし折るのですぞ」

「もうへし折った後だ。空母3隻を一撃で沈めた後だからな。しかし、「黎」も協力を拒否するとは、驚きだな。やっぱり、誰もが失敗すると思っているんだろうな」

「事務次官殿、グレイス島を占領するのに、今の戦力で足りるのでしょうか。あんなゲテモノ軍艦で、どうにかなるのですか」

「ソメリト合衆国がこちらと同じ結論に至っていたとすれば、本官のアイデアが正しいという結論になる。単純な物量だけならば、勝負にならないんだからな」

「同じ物を造っても勝ち目は薄い、その理屈は分かりますが」

「そんなに不格好か?」

「ギャグかジョークだと思っていました。実際、艦長からは「操艦が難しすぎる」「慣れるまで時間がかかる」と言った苦情があがっています」

「仕方が無い。勝つ為だ」

 松友マキオ事務次官は、また呼び出し音が鳴った別の受話器を手に取る。

「何の問題だ」

「貴殿が一番知っているだろう。例のゲテモノ船についてだ」

「ああ、それについては今、抗議されていたところだ。で、今度は何だ」

「「渇」に派遣しているこちらの軍艦、1隻でも良いから護衛に回せないか」

「回せない」

「もっと悩んでから言って欲しかったな。国民の間でも、特にメディアの方からは不安を煽る憶測が流れている」

「そう言う時の為に広報担当が居るんでしょう。少しは同僚の働きに期待したらどうですかね」

「どうですかね、と言われてもだな、広報担当だって不安に取り憑かれているんだ。「黎」の軍が本土で守備隊として配属されているとは言え、我が国の保有する予備と訓練要員を除く全ての戦力を注ぎ込むんだぞ。もし「黎」が裏切って銃口をこちらに向けたら」

「その時は、グレイス島攻略に失敗した時です。成功すれば、その心配も無くなります」

「あのゲテモノ船に余程期待しているんだな。広報担当にはなんて言うつもりか」

「仕事しろ。以上だ」

「……分かった。誰よりも事務次官殿が働いているからな」

 通話を終えると、今度は別の電話が鳴って、それに出る。

「何の問題だ」

「ふざけているのか、貴様。聯合艦隊司令部作戦班の面子、あれは硫酸島守備隊の面子と同じじゃないか」

「何処がふざけているのでしょうか」

「せめて、北条ノリコ作戦中佐だけでも後方に残さないと」

「何の為に」

「今回の出兵が失敗に終わって、硫酸島が再び危機的状況に陥ったら、指揮するものが1人も居なくなるでは無いか」

「そこまで状況が悪化していたら、指揮すべき兵もいなくなっている状況ですので、同じ話です」

「……良いか、問題はそれだけじゃないぞ。司令官人事についても、完全に無名で実績の無い、女性将官じゃないか」

「牧村ケイコ戦姫少将ですね。何が問題なのでしょうか」

「貴殿は戦姫と言う兵種についてどう言う見解をお持ちかな。本官は補助戦力だと見ている」

「本官は次の戦いの主役だと考えています。何にでも使えますから」

「戦闘機に狙われたらどうする? 実際に第一次硫酸島防衛戦では、こちらの戦闘機が敵の戦姫を圧倒したという事例があるぞ」

「今ならば、その肝心の戦闘機が居ません。空母諸共沈んだので」

「なる程、貴殿が「年内に決着を」と言っているのはそれが理由か」

「それもあります。本国艦隊や西海洋艦隊からの応援が来たら、次も同じ展開で勝てるかどうかは分かりません」

「……しかし、その中で、何で牧村ケイコなんだ。彼女の経歴は、過去に起こした事件は有名だろう」

「それこそ、彼女を選んだ理由です。今回の戦い、本官が求めているのは人間関係を円滑に動かせる調整型でも無ければ、知恵を絞って奇策を用いて多勢に無勢を引っくり返す軍師型でもありません。多少の不安要素があっても獲物に食ってかかる闘将型、いえ、獰猛型が必要なんです」

「味方の損害を顧みずに、か」

「戦っている限り、犠牲は必ず発生します。そんな事でいちいち動揺する様な奴には任せられません」

「確かに、そうだな。分かった、貴官に任せる」

 受話器を戻す。最初に手に取っていた受話器を耳に当てる。

「すまん、何の話だったかな」

「あの、ゲテモノ船の話です。慣熟訓練なんてしている暇はありません。全部ぶっつけ本番になります。艦隊行動が出来ません」

「それは問題ない。作戦案ではそんなに複雑な艦隊行動はさせる予定は無い。そこは現場の判断にも任せたい」

 そこで、また電話機が鳴って、それを取る。

「何が問題でも」

「聯合艦隊という呼び名だが、あれについては色々とチクチク言ってくる連中が居るだ」

「そんな事でいちいち連絡するな。言わせる奴には言わせて置いて良い。それとも、コンバイン・フリートとでも呼べば良いのか」

「……はい、すみません。こちらで対処します」

「頼むよ」

 受話器を置くと、今度こそ最初の電話相手に答える。

「ゲテモノ船かどうかは、実際に使ってみれば証明される。本官だって絶対の自信がある訳では無い。でも、牧村ケイコ戦姫少将なら使いこなせる筈だ。「ドラゴン殺し」のあだ名は伊達じゃない」

「……分かりました。では、後ほど」

 受話器を置いて、夜食の天丼が運ばれてくる。味なんて分からない。今後も処理すべき問題が多い中で、食事の味をどうこう出来る様になるまでは、もう少し時間がかかりそうであった。


 とんでもない奴が司令官になった。聯合艦隊は、その話題で持ちきりであった。牧村ケイコ戦姫少将。自分を苛めてきた同僚との喧嘩に際して、模擬刀に見せかけて真剣を持ち込んで、相手の頭を叩き割った。しかも、その時の相手が由緒正しい名家のご令嬢だったのも問題となり、その名家の家紋が「竜」だった事から、「ドラゴン殺し」のあだ名を与えられていた。

 その「ドラゴン殺し」は、自分の罪について釈明なんてしなかった。敵か味方か、そのどちらかしか、彼女は認めていなかった。たまたま「敵」が同僚で、尚且つ名家のご令嬢だっただけであった。軍法会議にかけられて、軍刑務所に送致されるのは確実視されていたが、それを免れたのは「優秀な成績」の持ち主だからであった。身体能力は勿論、ペーパーテストでも優秀な成績をおさめている。これを惜しいと感じた戦姫軍が、軽い処分で済ませてしまっていた。

 その「ドラゴン殺し」は、生涯にて最高の舞台を用意されていた。動員するのはレイド・サムの全軍、攻め込むのは世界唯一の軍事大国ソメリト合衆国の要衝、これが燃えずにいられようか。今まで何人もの「敵」と相対してきたが、今回は特別デカい「敵」だ。

 部下達は、その「ドラゴン殺し」がどんなビジュアルなのか、知りたくて調べてみると、意外と穏やかそうな、大人しそうな表情と顔立ちで、とてもではないが「ドラゴン殺し」なんて異名を得るような人間には見えなかった。

「D・Y・D」の骨子は、こうして固められていった。


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