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DECIDE YOUR DESTINY  作者: 北村タマオ
第1章 解放戦争篇
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0018 運命を決めろ

 頭の中にある内はどんな企画も完璧である。これに類する格言・名言・諺は幾らでもある。脳内企画というのは、実際に形にしてみると、意外と凡庸であったり欠陥品であったりする。「才能の鉱脈は掘ってみないと分からない」と言う言葉もある。

 この時の防人庁長官の気持ちは、それにかなり近い状態であった。例の軍組織の抜本的改革案、後に「レイコ計画」と発案者の名を頂く事になる企画書を、早速会議に持ち込んで検討してみたのだが、予想通りの展開となっていた。

「上手く行くはずがない」

「他の部門の反対意見を抑えられる自信が無い」

「相手も同じ事を考えているという根拠は無い」

 全部、正論である。ガードの上から喰らっているパンチであるが、脳味噌まで衝撃が来る程の強烈なパンチだ。そんなのはこっちも百も承知である。6軍に別れている軍組織を全部一本化しろ、と言う話なのである。

 それでも、この意見に対する同意だけは、全体で共有する事は出来ていた。

「もう大名行列的な作戦は出来ない」

 大軍を準備して、物量でもって敵をゴリ押しで押し切り、デカい軍艦にデカい兵器を大量に積み込み、これを湯水の如く使い込む。その為に、デカい空母を造って、デカい戦闘機を積み込んで、デカい爆弾を落とす。それがもう時代遅れだと言われたら、その点だけは同意しているらしく、反対意見は出なかった。

 防人庁長官は、その点でどうにかこちらの意見への歩み寄りを見せてくれるのでは無いかと思い、一挙に突破を図る。

「大量生産・大量消費をモデルとした戦略・戦術について、抜本的な改革を行う必要があるのだ。第二次硫酸島防衛戦にて用意できた大量のミサイル・ドローン・無人機を、次また用意しろと言われても、そして同じ使い方をしても、上手く行くとは限らん」

 これについても、出席者は同意しているらしい。実際、「黎」の軍内部に置いても、あの数の誘導兵器を動員した事はかなり問題視されており、上手く行ったから良かったものの、もう2度と同じ手は使わせないと、「烈」や「渇」の軍部からは怒りの声が出ている。

「究極の力は戦わずして勝つ抑止力、と言うのは、もう昔の話だ。何故なら、もう戦ってしまっているのだから、抑止力としての力はもう意味が無い。ソメリト合衆国が我々より先にこの改革を成し遂げたら、3度目の防衛戦では手も足もで無いままに負ける可能性だってある」

「あ、それについて、一つ、疑問があるんですが」


 そう言って手をあげた奴の顔を見る。確か、機甲軍担当の兵站部門を担っている男だ。若手の中でも一目置かれているが、一目置かれているだけでこれまで見向きもされていない、否、されていなかった男だ。

 胸から提げている名札には、「松友マキオ課長」と印刷されている。課長の割には若い男だ。と思うと、長官を先を促す。

「硫酸島に、誰もが目を向けているのですが、このままその島を守り通していれば、この戦争に勝てる確証があるんでしょうか。これがゲームなら、勝利条件を満たせば判定勝ちになります。人間を相手にしているのであれば、もっとインパクトの大きい戦果なり成果なり示さなければ、ソメリト合衆国の戦意は衰えないですよ。こちらは聖華大陸の3大軍閥と同盟関係を結べましたが、南アスラン諸国との関係は贔屓目に見ても武装中立と言った感じです。彼らについても、こちらの同盟に加わるように外交省が色々と頑張ってくれていると言う話ですが、空母3隻沈めた程度では、あの腰はあげられないという感じです」

 ……宜しい。で、その「戦果」であり「成果」をどうやって手にするというのか。

「我が軍は勿論、聖華大陸の同盟国の投入可能な全戦力を賭けて、メソイド諸島、ダイヤモンド湾を取る。それも、可及的速やかに準備をして、そうですね、可能なら年内の内に」

「ちょ、ちょちょ、ちょっと待て」

 思わず声を荒げる防人庁長官は、マキオの言葉を遮って言う。

「確かに、大海洋に置けるソメリト合衆国の力は大きく削がれた。だが、敵は大海洋艦隊を失っても、西海洋艦隊もあれば、本国艦隊もある」

「ええ、だから、可及的速やかに準備して、メソイド諸島を取りに行くんです。それも「脅し」とか「努力目標」とかじゃなくて、本気で取りに行くんです」

「……とって、どうする?」

「では逆にお聞きしますが、このまま硫酸島を守ってどうするんですか。守備隊の作戦班には、本土決戦があるなんて寝言を宣う奴も居るらしいですが、そこまで追い詰められた頃には、聖華大陸の軍閥は手を引くと思います。連中だって慈善活動や浪花節で戦争しているわけでは無いので、見込みが無ければ簡単に切りますよ」

「それで、メソイド諸島に兵を進めると言うのか」

「他に手はありません。硫酸島を守っている間にヴィクター大陸の諸国が、今風に言えば「V・UNION」が動いてくれれば何とかなる。と言う考えは、我々が「テラース」最終戦争にて判定負け、いえ、降伏した原因となった希望的観測です。この際、「V・UNION」の存在は無視したままで、計画を進めるべきです。その時が来れば、連中の方から大々的に事を始めると思うので、先ずは我々から先鞭を担って戦うべきです。で無ければ、このままじり貧となってスッテンテンになるまで戦う羽目になります。そんなのは軍は勿論、有権者だって望みませんよ」

「松友マキオ、課長で良いんだな。君はこの軍の改革案についてどう思う」

「この改革案が無ければ、この場にてこの様な提案はしていません」

「つまり、この改革案ありきの侵攻作戦、と言う事か」

「ここからメソイド諸島のダイヤモンド湾に届くミサイルなんて無いですからね」


 防人庁長官は、そこで暫く黙り込む。周りの出席者の顔色も、先程までとは打って変わっている。

「松友マキオ課長、君、もっとデカい椅子に座ってデカい仕事がしたくないか。無論、デカい予算で、だ」

「何処までデカい椅子かによります」

「防人庁事務次官。君の言うメソイド諸島侵攻作戦の準備から発動に至るまで、全責任を持って当たりたまえ。その為のお膳立てと各省庁との協力態勢や話し合いのセッティングは、全部こちらがやる」

「全力を尽くします。ああ、それと、暗号名が必要ですね。この作戦。壁に耳あり障子に目ありですから、何か良い感じの呼び名は無いですかね」

「「DECIDE YOUR DESTINY」。略して、「D・Y・D」」

「「運命を決めろ」、なんて、拗らせた奴が思いつきそうな作戦名ですね」

「原形は留めていないから、そこから言葉の意味を理解するのは不可能だ。では、我々も運命を決めるぞ」



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