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まだ何かあるだろうけど、絶対悪い子ではない

 宿に戻り、お茶を淹れてエレナに渡しベッドにそれぞれ腰掛けた。


 「え、えっと初めて会った時にも言いましたけど……私、本当に人見知りであがり症で……それは嘘じゃないし演技でもないんです……」

 「うん、これまでのあなたを見てたらよーく分かってるわ」

 「んぐ……そ、それで私がアイナさんに声をかけたのは、あまりにもその魔剣が珍しい魔力を帯びていたから……です。どうしても気になって、ちょっと様子を伺っていたら行く先を悩んでいたようでしたので。ご一緒出来たら、魔剣の事お話出来るかなーって……都合よく私と向かう方向も一緒でしたし」


 お茶を一口啜り、いつものおっかなびっくり様子を伺う素振りを見せながらエレナは語る。


 「だいたいは会った時に話してくれたのと一緒だったって事ね。道中、特に夜とか静かだったのはさっきみたいな結界魔術で私たちの周囲を遮っていたから?」

 「そそそ、そうです。少しでも静かにアイナさんに休んで欲しかったし、私自身もあれを使って一人であちこち行ってたりしてたので……あ、あはは」

 「でも、私は魔術はそこまで詳しくないけれど、明らかにエレナのあれは常軌を逸してたわ。ただの流浪の魔術師とは思えないんだけど?」


 顎に手を当てながら疑いの目を向けると面白いくらいに滝のような汗をかき、目を泳がせなるエレナに吹き出しそうになりながら、手を上げて話題を切り替えた。


 「言いたくないならそれでいいわ。誰にだって秘密はあるものだしね、それじゃ私の番かな」


 それから私は伯爵令嬢だった事などは伏せ、イグナリスとの出会いもちょっと変えつつエレナに話して聞かせた。


 「す、凄いですアイナさん。剣とお話出来る程魔力の相性が良いなんて、憧れます」

 『子供みたいにはしゃいでいるな』

 「イグナリスが子供みたいだって」

 「こ、子供……これでも私今年で17になるのですが……」

 「え?私と同じだったのね……」

 『色々な部位の大きさが違って同じだとは思えんな』


 イグナリスの言葉にそっと胸元を隠すようにして睨む。


 「どうしたんですか?アイナさん、イグナリスさんの事睨んで」

 「ちょっとね、なんでもないわ。それよりそろそろ寝ましょうか」

 「は、はい。おやすみなさい……アイナさん」



 気温が上がり、かけていた布が鬱陶しくなり身体を起こして、隣のベッドを見るとエレナの姿は無く、書き置きがあった。


 「先に買い物済ませときますって、あの子ったら黙ってた事のお詫びか何かのつもりなのかしら?別に気にしてないのに」

 『あの気の弱さだ。そういう人の機微に人一倍敏感なんだろう……難儀なものだな』

 「全くだわ、首都に着いたらお茶の一杯くらいご馳走になればそれで充分なのに」


 宿を出ると、大分日が昇っており晴天が広がっていた。


 「あ、アイナさん……おはようございます」

 「おはようエレナ、買い出し行くなら声かけてよ」

 「す、すいません!起こすのも悪いかなって……それに……」

 「それに?」

 「なんだか、うなされていたので気持ちが落ち着く魔術をちょっとかけておいたのですが、どう……でした?」


 買い出しを終えたようで纏まった詰めて膨らんだリュックを背負い、エレナは私を心配そうに見つめる。


 「え、そうだったの……確かに、なんだかいつもよりすっきりしてる気がする」

 「良かったです。朝ごはん食べたら、行きますか?」

 「そうね。今日も一日よろしくねエレナ」

 「よ、よろしくお願いしますアイナさん」


 お互いの荷物を手に、私たちは腹ごしらえを済ませエレナの目的地である首都に向かって村を後にした。


 この子がどういう事情で最初に出会ったあの街に来ていて、どうしてあんな凄い魔術を行使出来るのか。気になる事は尽きないけれど、少なくも悪意ある者ではない事は確信している。

 今はそれだけで十分だ。

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