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人の話を聞かない王子

 ユリウス様と合流するため一番最初に辿り着いた会場にエレナと戻る。


 「戻ったか、アイナ嬢。ん?エレナ嬢も一緒か」

 「陛下、お聞きしてもよろしいですか?なぜこの場にエレナが?」


 国家機密で口外する事が出来ないエレナだが、最高権力そのものの国王がいるこの状況で部外者扱いされるのも、嫌だったのでとりあえず聞いてみる。


 「うむ、エレナ嬢には普段から様々な任務を依頼しているのだが、今回は新開発したという魔道具の実戦想定の試験運用をしてもらったのだ」

 「そ、そうなんです。これなんですけど……」


 おずおずとポケットから奥の部屋で小さく光っていた物をこちらに見せてきた。


 「へ、陛下。アイナさんには全部お話してもよろしいですか?」

 「うむ構わん。我が国が誇る<救済の伯爵令嬢>だからな!」

 「……」


 私は敢えて反応をスルーし手渡された魔道具を眺める。


 「それは、集音器といって離れた所にいる音、声を聞きとり保存するという物なんです。新しい術式が思いついて試していた所、陛下が今回の作戦に投入してみようとご提案されたので、開発者である私が使用して確かめていたんです」

 「なるほどね……でもエレナって正直運動得意そうではないのに、あんな密偵みたいな事してて不安ではなかったの?」

 「そ、それはまあ……不安ではありましたけど。悪い事してる人を捕まえるのに役に立ちたかったので……それに良くない事にも使われる可能性があるし、試作したこれに関しては私の魔力でしか作動しないようにしてたので……」


 集音器を大事そうに両手で持ちエレナは言う。


 「して、成果は得られたかエレナ嬢」

 「はい。このように」


 エレナが言うと淡い光を集音器が放ち始めた。


 『あの方は何と言っておられる?上手く流せば今よりも良い地位を約束するというから、融通してきたのだぞ!それも今日でおしまいになったがな!そちらに不手際があったのではないのか!?


 おやおや、随分な言いようではないですか?襲われたのは貴方が用意した会場だというのに。こちらを疑うとは責任転嫁が過ぎますよ?おまけにネズミが入り込んでいるのに気づきもしていないとは』


 間違いない、私が駆け付けた辺りの音声だ。


 「録音時間に難がありますが、長くするならより大きな宝石を用意しなければならず、工作員などの手持ちにするには不向きになりますし、一個にかかる費用が跳ね上がるのが難点ですね」


 エレナは私より先にあそこにいて、録音を開始したはずなのだが私も聞いた会話の部分しか録音されてなかった。


 「ふぅむ……せめてあともう少し長く取れればのぉ、形は変更可能か?」

 「形は可能です。今回は潜入し盗聴目的ということでなるべく小さくしてみたので……」

 「女性の工作員などにはブローチやペンダント型にしても、いいかもしれませんね」


 今まで黙って聞いていたミハエル王子が話に入ってきた。


 「エルヴァナの装飾品はとても素晴らしかったです。デザインをあちらから取り入れた物にすればただの装飾品に見えるでしょう。あとは魔力を流して実際に使用する時に光ってしまうのをどうするかですが……」

 「作動しているかの確認のために、敢えて分かり易くしてみただけなので、光量はもっと小さく出来ます」

 「ふむ……それは楽しみだ」

 「魔道具に関しては、この辺にしておこうか。問題は逃げていった男たちが何者かだが……」


 顎に手をやり思案するユリウス陛下にミハエル殿下が耳打ちする。


 「……ああ、確かに。この声はそうか……」

 「ええ、父上。明日の国交議会の場で揺さぶってみては?」

 「そうしよう。わが国だけの問題ではなくなってきたな」


 意見が纏まったようで、私たちに向き直る。


 「皆の者ご苦労であった。引き続き捕らえた者たちの護送を頼む。ミハエル、アイナ嬢とエレナ嬢を送ってやってくれ。私は残る」

 「かしこまりました」


 私とエレナはミハエル殿下にエスコートされながら待機していた馬車に乗る。


 「えっとアイナさ――アイナ様明日の剣闘士大会応援してます!」

 「何急にかしこまってるの?今まで通りでいいわよ。私も今まで通りで話すから」


 小さな野花が咲くような笑顔をエレナはみせ、馬車を降りていった。


 「アイナ嬢、明日の大会後の予定は?」

 「すぐに帰ります。領主の仕事がありますので」


 ミハエル殿下が対面の席でにこやかに予定を聞いて来た。

 観光も、エレナとお茶もしたい。だが今は領主の仕事に戻ってお母様にはゆっくりしてもらいたいという想いが強かった。


 「陽の光を浴びて、もう一つの太陽のように赤く輝く君の美しい髪と、宝石のように眩い光を放つ瞳を見つめて午後のお茶を共に過ごしたいと思っていたのだが、残念だ」

 「申し訳ありません、またいつかの機会に……」

 「約束だよ?<救済の伯爵令嬢>殿」


 その名で呼ぶなと言ったはずなのに……なんなのこの人は!!


 「それでは、ごきげんようミハエル様」


 貴族らしくつつましい笑顔を浮かべ私たちは馬車を降り、解散した。

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