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領主のお仕事

 屋敷に戻って、改めてお母様の帰還を喜んだ後、お父様や家臣たちのお墓参りをして数日が経った。


 『ふむ、かなり仕上がってきているな』

 「ずっとやってきたものね」


 動きやすい軽装で日課の鍛錬で汗を流して休憩をしていると、イグナリスから型を褒められた。


 「ほどよく筋肉もついてきたようだし、立ち回りも鋭さが増すだろう」


 たしかに二の腕にしっかりと力こぶが出来る程度に鍛えられた私の肉体は戦いにおいては、評価されるべきなのだが……。


 「アイナ様、領民からの意見書が届いております」

 「分かったわ、今いく」


 ユリアから声をかけられ屋敷に戻る。


 「あら、あそこの夫婦子供が生まれるんですって!え、名前を私に決めて欲しいって書いてあるんだけど!?」

 「ふふ、きっと<救済の伯爵令嬢様>から名前を付けて貰えば、御利益があるとおもっているんでしょうね」

 「ちょっとユリア、揶揄わないで。なんだかこの間の奴隷市場を潰してお母様を取り戻してから、変なあだ名付けられて困ってるのに!」


 じーっとユリアを恨みがましく睨むをさっと目を逸らされてしまう。


 「まぁまぁ、それだけアイナが皆から好かれているという証拠なのでしょう。<救済の伯爵令嬢>様、名前を授けて差し上げてはいかがでしょうか?」

 「お母様まで……はぁ、分かったわ。午後から丁度あの村の視察に行く事になってるから、そのついでにお祝いと一緒に名づけに行くわ」


 お母様まで執務室に入ってきてユリア同様揶揄ってくるのだからタチが悪い。

 やりたい事をただやっただけで、別に有名になりたいとかそういうことではないのに、いつのまにか領民たちからの視線が日に日にキラキラとした眩しい物になってる気がして、変な気持ちになる。


 「次は……あ、これは大丈夫ね。これも特に問題はないから……」


 それ以降も様々な意見書に目を通して、領民たちの要望を一纏めにしていき、後に判断を決め決定を下したりして一日が過ぎていった。


 「本日もお疲れさまでした。アイナ様、お茶をお持ちしました」

 「ありがとう、ユリア。助かるわ」


 軽く伸びをしてから椅子から立ち上がり、ソファに移動してユリアが淹れてくれたお茶を啜る。

 自然に、ほぉっとため息が漏れ一気に気持ちが解れていく。


 「仕事終わりにユリアが淹れてくれたお茶を飲むと、本当に気持ちが解れるわ。ありがとう」

 「そう言って頂けると、尽くし甲斐があります。ですが、御無理はなさらないようにしてくださいね?時折遅くまで執務室の灯りが点いていると、見張りの者からアイナ様を心配する声が届いておりますので」

 「あ、あはは。ごめんなさいね、やっぱり付け焼刃の領主だから少しでも様々な事を覚えて、お父様みたいに立派な領主として務めを果たしたいから、ついつい気を張ってしまって……ね?」

 「アイナ様、私共では領主としての責務を肩代わりする事は出来ませんが、お手伝いする事は出来ます。それに今はヘレン様もいらっしゃいます。まずはご相談やお願いをするのをお忘れなきようお願いします」


 心底心配そうな顔で私を見て来るユリアに、頬を掻きながらぎこちない笑みを返す。


 「うん、そうよね。私一人でメロディアを支えるなんて無理だもの、みんながいてこそのメロディア。それは忘れないわ」

 「はい。それでは私は控えておりますので、お休みの際はお声がけをお願いします」

 「ええ、ありがとう。このまま寝室に行くわ」

 「左様ですか。では、お茶を下げますね」


 一日の最後にユリアが淹れたお茶を飲んでおしゃべりをするのが、最近の楽しみだったりする。

 だいたいはユリアから私への、お説教というか諭しの時間になってしまってるけれど、話し相手がお母様以外にもいるというのは、ありがたい事だ。


 「話し相手と言えば、エレナ元気かしら?」

 『また忙しく国からの依頼で、あちこち駆け回っているのではないか?』

 「かもね、久しぶりに会いたいなー」


 立ち上がり誰も見てない事を良い事に欠伸をひとつして、寝室へ向かった。

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