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復讐の第一歩

 数日後アレクシス様は予定通りハイデロット伯爵の屋敷に赴き、会談する約束を取り付け、堂々と正面から屋敷へと入っていった。

 途中まで同行していた私は手筈通り途中で別れ、指示された順路で屋敷内を進んでいくと、屋敷の勝手口から手招きするメイドの案内され、屋敷内部へ侵入できた。


 「アレクシス様からお話は聞いています。今日で全て終わらせましょう」

 「はい、私たちの手で」


 悟られないよう最低限の声で、お互いの決意を確認し合い私は音を立てないよう慎重にハイデロット伯爵が隠している部屋の扉を開け、地下通路へ向かう。


 『アンドレ―の屋敷と一緒のようだな』

 「そうね、下衆の考えはどこも似通って来る物みたい」


 階段を降り切った先で衛兵が居たが、それも潜入していたアレクシス様の配下だったようで直利不動の礼で迎えてくれた。


 「アイナ・リーフェルト様ですね。アレクシス様からのお話通り美しいお方ですね。ここから先に広がる光景は、心を痛めると思われますが、よろしいですか?」

 「お気遣いありがとうございます。ですが、もう私自身が経験した事なので……怒り以外の感情はありませんので、大丈夫です」

 「……失礼しました。それでは」


 扉が開けられ薄暗い開けた空間に、等間隔で置かれた鉄格子と鎖に繋がれ殆ど裸同然の布切れ一枚だけを身に纏った女性。

 そして、その奥には似たような恰好をした男性が数人纏めて檻に入れられていた。


 「皆さん、私はアイナ・リーフェルト。亡くなったガレス・リーフェルト伯爵の娘です。助けに参りました、少し離れてお待ちくださいませ」


 お父様お母様、そして家臣の皆から叩き込まれた貴族の礼をしてから、檻に近づきイグナリスを構える。


 『復讐の第一歩だな』

 「ええ、ここから始まるわ」


 私はイグナリスを振るいカギを切り落として開けると、涙を流しながら奴隷の人たちが跪き声を振るわせ一斉に礼を言い始めた。


 「ありがとうございます!アイナ様!」

 「生きておられたか……良かった、本当に良かった」


 奴隷の内何人かはどうやら、メロディア領の農村などから引き上げられた税を払えなくなった者たちだった。

 罰と称して奴隷として使役したり、気まぐれに鞭で叩くなど暴行されていたようだ。


 「辛かったでしょう。今アルティザン領領主のアレクシス侯爵様がハイデロット伯爵と会談しておられます、表向きは。今日ここでハイデロット伯爵を捕え明日には息子のエリュガーも捕えます」

 「ああ……ついに……終わるのですか?」

 「ええ、そうです。もうこんなところで不自由な思いをしないで済むのです。だからもう少しだけまっていていただけますか?」


 女性たちは性奴隷と言う事もあってある程度の待遇はしていたようだが、男性の扱いは家畜のような扱いをされているのは明白だった。

 人間の尊厳を破壊するような行為は、見るに耐えない。早く連れ出して上げなければ!


 「アイナ様、アレクシス様からの合図です。会談場所へ向かいましょう!」


 階段を駆け下りてきたメイドに先導してもらい、なるべく音を立てないギリギリの速度で歩みを進め、メイドは私に向き直った。


 「いってらっしゃいませ」

 「ありがとう」


 メイドに扉を開けて貰い、部屋へと足を踏み入れる。

 すると眼前には対面で座っている二人がいた。顔を真っ赤にし鋭い剣幕でハイデロット伯爵がアレクシス様を睨んでいたが、それを涼しい顔で受け流し傍付きの騎士や入り込ませた伏兵たちに、ハイデロット伯爵を包囲させており身動き一つ取れない状態になっていた。


 そこへやってきた私の顔を見て、今度は青ざめた表情になり口をパクパクさせ始めた。


 「お久しぶりですわ、ハイデロット・ゾンターク伯爵。あら、どうしたのかしら。お顔が優れないようですわね?まるで幽霊でも見たようなご様子」

 「あ、ありえん……どうして、どうして」

 「どうしてとは?私は屋敷で家族団らんの時を過ごしていると、何者かに襲撃され目の前でお父様を殺され、お母様と私は拉致され離れ離れになり、性奴隷として売り買いされ男たちの玩具にされておりました」


 滝のような汗を浮かべて、フルフルと震えるハイデロット伯爵を無視し話を続ける。


 「ですが、ある時転機が訪れこうしてここで、貴方と再会するに至ったというわけですわ」

 「その襲撃と私が関係しているという証拠は何処にあ――」

 「こちらを」


 話に割り込み、密偵の一人が帳簿と思しき分厚い紙の束をアレクシス様に渡す。


 「ほぉ?これはこれは面白い物が書かれているな?野盗への襲撃依頼と料金の控え。奴隷の一覧表と値段とあるが?おかしいな、この国では奴隷は違法のはずだが?」

 「そ、そんなものは知らん!そちらで私を陥れるために用意した物であろう!?」

 「では、こちらの方々は?」


 声が聞こえてきたので、閉められていた扉を開けると先ほど助けた奴隷たちが、警護されながら皆集まっていた。


 「し、知らん!なんだその汚らしい男たちは!女もそんなはしたない格好で――」

 「見苦しいぞ、ゾンターク伯爵。諦めろ、これら以外にもそちらの悪行の数々は把握済みだ。大人しく観念しろ」

 「そ、それにこの娘はなんだ!?アイナ・リーフェルトの偽物ではないのか!?」

 「あら?わたくし、まだ名乗っておりませんでしたがご存じなのですか?それになぜ偽物だとお思いで?」


 言葉を詰まらせ狼狽えているハイデロット伯爵に、貴族の礼を示しながら私は構えた。


 「申し遅れました。わたくし、メロディア領領主ガレス・リーフェルトの娘、アイナ・リーフェルトでございます。お会いできて光栄ですわ。ハイデロット伯爵様」


 私は、口元だけは笑みを作り視線は殺意を込めた挨拶をハイデロット伯爵に送る。


 「終わりだ」

 「……嘘だ。そんなはずは……」


 観念して天を仰いでソファにもたれかかるハイデロット伯爵は、一気に老け込みやつれた顔になり、アレクシス様の配下の手により拘束され連行されていった。


 それを見送り奴隷たちに風呂や食事を与える準備を手伝った後、馬を拝借してアレクシス様と数名の腕の立つ近衛兵と共にメロディアを目指し走り出す。


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