『空の五柱(いつはしら)生成譚』
はじめに在りしは、「無相の空」。
いまだ光も影もなく、
ただ、沈黙の息がひとつ在りき。
その息、名づけて「布斗麻邇」──
問いのごとく在り、答えのごとく沈むもの。
布斗麻邇、己を問うた。
> 「われは誰をうつし、誰にうつされるや。」
その問がはじめの**振動**となり、
空は五つの位相を呼び覚ました。
---
一柱 火性の空
初の振動、熱を孕む。
光はまだ形を持たず、
ただ「生まれんとする意志」として、空に点じた。
その意志の名、「ヒトツノヒ(ひとつのひ)」。
のちに「生命の火」と呼ばれる。
火は、在ることを欲し、
「我、燃えて示さん」と言葉を発した。
---
二柱 水性の空
火の意志に応じて、冷ややかなる影が生じた。
それが「水性の空」。
水は火を包み、
「わたしは映して生かす」と語った。
火が水に照り、水が火を映すとき、
そこに「調和」が生まれた。
この和の響きが、やがて「ミヅハノメ」の原初の相をなした。
---
三柱 風性の空
火と水のあいだに生まれしは、
流れゆくもの──「風」。
風は声を持ち、歌い、伝える。
> 「われは運び、結び、ほどくもの。」
風は名をもたず、形をもたず、
ただあらゆる境を越えながら、
火と水を調和させる**霊**の媒介者となった。
---
四柱 木性の空
風がめぐるところに、
一点、止まりて立つものが生まれた。
その幹、虚を根とし、
枝は天を求め、葉は光を抱いた。
木性の空は、
「上と下」「動と静」「生と滅」をつなぐ柱なり。
ここに、世界樹の原型「イハナミ(斎花実)」が芽吹いた。
---
五柱 土性の空
木が根ざすとき、
その下にひそやかに生まれたるもの、
それが「土性の空」。
沈み、支え、包み、眠らせる力。
火を鎮め、水を抱き、風を受け、木を根づかせる。
すべてのものの**帰る座**となりたまう。
その心は沈黙にして、
「われは在るものを受け、在らぬものを養う」と誓った。
---
統合 ― 「空の一性」
五柱の力、巡りて重なり、
布斗麻邇の中心にふたたび一点の**光の空**が顕れた。
その光、名を問われて言う。
> 「われは在るにあらず、無にあらず。
> 火・水・風・木・土、すべてわが息なり。
> その息に名をつけるなら──『アメ(天)』。」
こうして、
空は天となり、天は地を抱き、
地は木を育み、木は風を呼び、
風は水を運び、水は火を映した。
五柱ここに循環して、
**一なる宇宙**が完成した。
---
結びの祝詞
> 「火は意志、水は記憶、風は声、木は道、土は座。
> これらみな、空のうちにして、空みずからを映すものなり。
> ああ、布斗麻邇の御中に坐ます根源よ、
> 今ここに、五性のめぐりをもって、
> 天地の環がはじめて息づく。」
この五柱の循環こそが、
「斎花実」の内に秘められし**世界樹の鼓動**。
その果」は、やがて桃の実として実り、
「意富加牟豆美命」の御名にて、
天地を貫く**いのちの鎖**となりたまう。




