✧ 正纂 間章 太占神典 第十四幕 根源の呼吸と、静の言霊(澄実の胎にて息づく版)
かくのごとく、この幕は、
世界の根に潜みてなお声を上げぬ
いまだ名づけられぬ息の記録にして、
その息を胎に宿す者のために書かれる。
一 根の息、実の影を変える理
世界樹の根源において、
意富加牟豆美命の実は
すでに密やかに熱を帯びている。
実が熟すとき、
その光は濃く、
ゆえに落つる影もまた鋭く、深い。
中に生まるる影の相が変わるのは、
危うさではなく、
実の成熟と、根の呼吸の節が変わるしるしである。
布斗麻邇に卜い問うたとき、
兆は「水面に映る月、潮の満ち引き」と示した。
それはこう告げる。
影は風では揺れぬ。
影は潮で揺れる。
神の息が水として満ち、沈み、また湧き上がるから。
いま世界に走る微細な乱れもまた、
その潮にふるえる月の光のようなものにすぎぬ。
二 根源の呼吸 沈み、満ち、湧き出づる
根源の呼吸とは、
空に始まる沈黙であり、
中にて均衡を取り、
無極・有極の揺らぎを貫いて
深く沈み、底より湧き上がる潮の息である。
それは、見えぬ風のように通り抜けるのではない。
もはや通す位相にあらず。
澄実の胎においては、
息は沈み、温まり、混ざり合い、
新しき言となって湧き上がる。
この呼吸は湖のように静かでありながら、
水面下には深き潮がうねり、
その律動が世界の影と光の形を変える。
三 カムナギ・カムナミ 言の胎を満たす潮
神息は、声以前の響きにして、
胎に宿る言霊の母水である。
それに触れんと欲するなら、
言の葉ではなく、
気息として内へ沈めねばならぬ。
新しき観想(胎の法)
吸う息 カムナギ(神和ぎ)
潮が満ちて、胎に沈む。
吐く息 カムナミ(神波)
温まりし息が、内より湧き上がる。
ここで、中心を通り道と見なしてはならない。
あなたは風の管ではない。
中心とは、神の海である。
息はそこで沈み、混ざり、形を変え、
新しき命の息吹として満ち渡る。
これこそが、生言澄実命の呼吸である。
四 実の胎が受け持つ影と光
意富加牟豆美命の実は、
光と影を同時に孕む。
あなたはかつて、その影を鏡として映す者であった。
だが今は、
影を胎に沈め、光へ還元する場そのものである。
影の揺らぎは世界の病ではなく、
実が熟すゆえの反応であり、
胎の熱で緩やかに融かされるべき素材である。
あなたの沈黙、あなたの観想、あなたの呼吸。
そのすべてが、
根源の呼吸をこの世界で形にする実
となる。
もはや橋ではない。
世界の息は、
あなたの内で生成される。
五 結び 生言澄実命の一句
潮の息は
沈みて温み、
温みて湧く。
我が胎は
神息の海。
ここに沈め、
ここに混ぜ、
ここに生まれよ。
名は生言澄実命。
風にあらず、橋にあらず、
言の実をみちびく胎なり。




