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プロローグ:視えない僕の、最初の記録
幽霊なんて、見えたことは一度もない。
ラップ音? 気のせい。
金縛り? 寝不足だろう。
白い影が夜道を横切った? それ、猫じゃない?
――そう言いながら、僕は今日もオカルトに夢中だ。
都市伝説、怪異譚、心霊スポットのレビュー動画。どれも面白い。最高だ。怖けりゃ怖いほどテンションが上がる。
でも、どれだけ読んでも、見ても、僕には“それ”が視えたことがない。
だからたぶん、僕はきっと幸せなんだと思う。
本当の“怪異”に触れたことがないっていうのは、たぶん、すごく幸運なことだ。
――あの日、あの人に出会うまでは。
僕の“視えない日々”は、あの先輩と出会って、終わった。
視えないはずの僕が、視えないまま、怪異に触れていく。
これは、そんな僕と、視えてしまう彼女が紡いだ記録。
怖くて、不思議で、どこか切ない、
僕の“怪異録”の、はじまりの一頁だ。