第一の変化.2
「眠鈴!悪い、撒いたつもりだったけど追いつかれた」
「集はいつも詰めが甘い、だから私が苦労する。で、マーカーは?」
「しっかり確保済みだし、ほら見ろそいつに盗られたりもしてねぇよ……って!眠鈴何やってんの!?バカなの!?」
ビルからの見事な着地を決めた眠鈴に状況を説明しながら胸ポケットから今回の騒動の元になっているマーカーを取り出してみせた瞬間、眠鈴はマーカーをサッと奪い取り屋上へと跳躍し着地を決めると縁からひょこっと顔を出した。
「集は無能力だし、そのワニ男から逃げるの無理でしょ?ここからは私が1人で持っていく。おつかれ」
指で摘んだマーカーをこちらに見せつけそう言い置くと縁から顔を引っ込ませビルの上を走り去っていった。その場に置いてけぼりになった男二人は呆然とビルの屋上を眺めていた。
「って誰がワニ男だ!いきなり来てマーカー持っていきやがって!待ちやがれ!」
追跡者であるワニ男は我に返ると眠鈴が跳躍したビルに向かってジャンプをした。しかし屋上まで到達することはなく数メートル下の壁にベタっとしがみついた、しかし鋭く変化したツメを上手く利用し壁のでっぱりにツメを引っ掛けスルスルと登っていった。
その様子をじっと見つめていた集は二人がいなくなりその場に一人きりになった。ワニ男の他に追跡者がいないか周囲を警戒するも問題無いことを確信すると
「……作戦成功っと」
そう呟きながら胸ポケットに手を入れるとさっき奪われたはずのマーカーを取り出した。
「商売敵の行動や言動を素直に信じちゃいけないよーワニ男君。っと、さっさと会社に届けないとな」
そう言うとマーカーを胸ポケットにしまい込むと次にはカードを取り出し眼前に掲げた。その瞬間、集の身体はフッと消え去った。
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