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召喚

「え、聖女様?」

「そっ、聖女さまが昨日宮殿で召喚されたんだってよ。」

「あれか、お前と同じ世界からの人なんじゃねぇのか?」

「あー...可能性はあるのか。でも確認する事って...。」

「まぁ、無理じゃないか?」

「ですよねー。」


そう言いつつ手元に大量にある誰かの想いを綴った色とりどり、形様々、形態それぞれな手のひらサイズの手紙を各種族に別けて棚に収納していった。

思い返せば俺が召喚されてから早くてもう半年になるのか。時間が過ぎるのが早いものだ。




召喚された日...。

以前の俺がいた世界でも俺自身は郵便配達をしていた。その日はテレビでも大々的に報じられる程の大雪の日であった。勤務時間は普段よりも早めに切り上げられるように上からの指示はあったが、そんな事が出来るほど量も少なくはなかった。残念な事にその日に配達する様に...と日にち指定が多かったし。これまた残念なことに俺のルートがそんなんばかりだった。

今まで共にずっと頑張ってきた愛車の原付にチェーンを巻く。これも去年の冬ぶりだなぁなんて思いながら。


「さてと、一件目は.......こんな道行ったこと、無いか?」


もう何年もこの仕事に就いて数年に一回はルート変更しているとは言え、自分の勤務地のこの地域はある程度頭に入っている。こんな場所へ届けるのは初めてだ。

配達先は、所謂路地。

原付の荷台に乗せてある紙媒体の地図を見て配達先を再度確認してみるが、やはり路地だ。こんな所に置いていって問題ないのか?


「そういや何を配達するんだ?」


商品概要を見てみる。

...置物?

何たるアバウト。いや構わないけど。置物を路地に置いて問題ないのか。余り人は通らないかもしれないが、何かあってクレームが来ても困るし。


「配達は、配達だしなぁ。連絡先も書いてないし...。取り敢えず行かないと終わらないしな...。」


致し方ない。

一先ず配達先に行ってそれから決めるか。

そう切り替え、愛車にエンジンを点した。



そんで現場に着いた瞬間に目が眩むような光に包まれて、気がつけばここにいたんだ。

どの世界でも手紙の振り分け場は案外どこでも同じ様な空間造りであるらしく、一瞬元の世界の郵便局かと勘違いしてしまった。

たが作業していた人達の制服が違う事により、よく分からない場所に来てしまったのだと認識した。

俺が着ていたのは全身紺色の長袖スラックス。その上から防寒着にスニーカー。そして原付に跨っていたのでヘルメット。そう、何故か愛車が無かった。付け加えるならば、プラス雪か。

対してこの世界の者は上は臙脂色の半袖に黒色のパンツにゴツイブーツ。黒色キャップ。


「えっと...?」

「きょ...。」

「きょ?」

「局長ー!!!!!!不審者です!!!!!」


そりゃそうだと思う。作業場の真ん中に知らない人間が出現したのだから。



その後はてんやわんやだった。

局長とやらが作業場に来たと思えばそのまま馬車に無理やり詰め込まれて、すんごい千葉のテーマパークなんか目じゃないお城に連れて行かれた。

そのまま国王的な人に謁見して、そのまままた郵便局へと戻った。


「えーっと、それじゃぁ改めて。」

「はぁ。」

「君は今日からここの郵便局預かりになったので、明日から勤務してもらいます。」

「.......わ、分かりました。」


驚いたは確かに驚いたが。

このよく分からない世界でも俺がやるべき仕事が変わらないのは唯一の救いであると思った。

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