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よき人生とは

作者: 日常茶番

 よき人生とは社会的地位を確立し、皆から称賛される事である。

 幼少期から両親に勉強をし誇れる職に就きなさいと言われた。私はそれが人生の正解だと信じ、必死に勉強をした。法科大学を出てその後は弁護士になり、困っている人に寄り添い数えきれない人を助けてきた。地元では皆から尊敬され、感謝され、讃えられた。

 よき人生だった。


 よき人生とは夢を叶える事である。

 小さい頃、カメラの魅力に取り憑かれた。今という歴史を保存できる喜びを知った。近所の公園や少し遠出して美しい風景を撮りに行った。将来はこの感動を与えられるカメラマンになりたいと誓った。

 やがて周りは手に職をつけ家庭を持ち始めた。カメラマンとなった頃の収入は食べていくのでやっとだった。親からは夢を諦めて現実を見ろと言われた。

 しかし、諦めずカメラマンとしての活動を続けていくうちに評価を受け、世界的にも有名なカメラマンになれた。

 よき人生だった。

 

 よき人生とは食べ物に困る事なく、餓死する心配がない事である。

 かつて住んでいた村では干ばつが酷く、毎日お腹を空かせていた。一日に一食でもなにかしら食べれたら良い方だった。毎年栄養失調で小さい子供が大勢亡くなっていた。

 今では干ばつもなくなり食べ物に困る事はなくなった。たまにジャンクフードも食べる。あの時の苦しい思いはしなくてすむようになった。

 よき人生だった。


 よき人生とは国のために命を捧げる事である。

 私はこの国を愛している。国のためならなんだってできる。隣国との戦争も、ますます激しさを増してきた。兵士として志願してから約一年経った。かつての仲間もかなり減った。手や足を失った者も珍しくない。

 これから私は敵陣地に自爆しに行く。少しでもこの国の勝利に貢献できるなら怖くない。

 よき人生だった。


 よき人生とは愛する家族と過ごす事である。

 私には妻と3人の子供がいる。収入は少ないが、とても幸せに過ごしていた。平日はディナーの時間、家族でテーブルを囲みその日あった出来事などを話しながら妻の作った料理を食べるのが楽しみだった。休日はサンドウィッチを作りピクニックなどに行った。

 子供達が自立した後は妻と2人で過ごす時間が多くなり余生を楽しんだ。年に数回、子供達が孫を連れてきてみんなでパーティーをした。暖かい家族と過ごせて本当に幸せだった。

 よき人生だった。

 

 よき人生とはこの辛い現実と決別する事である。

 私の人生は悲惨だった。子供の頃から虐待を受け、学校でもいじめられた。社会に出てからもうまく仕事ができず、上司や同僚から冷たい目で見られる。誰も助けてくれない。この先も生きていける希望が無い。でも、一つだけ解決策がある。

 私は今、ビルの屋上にいる。下には豆粒ほどの人が沢山見える。やっと苦しみから解放されるのだ。

 よき人生だった。

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