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冒険者登録(2)

 ライセンスカードは、多種多様な機能を持つ。

 その一つに、パーティー登録機能がある。

 パーティーとして登録することで、メンバーの現在位置を調べたり、メッセージを送ったりする機能だ。


「つか、こいつも、多機能過ぎて気持ち悪いんだがね」


 ルディランズはぼやく。

 ブレアとのパーティー登録を終え、ルディランズは自分のカードを仕舞う。

 手のひらに乗せていたライセンスカードを、左腕の上で手放せば、吸い込まれるようにして消えた。


 魔道具、または、魔術具、と呼ばれる、魔術を使って作られた道具は、珍しいものではない。

 かなり昔では、異界から出土するごくわずかなものがアーティファクト、などと呼ばれ、極めて貴重ではあったが、既におおまかな技術は解明され、量産が可能なレベルにまで技術は高まっている。

 それでも、ライセンスカードのように、複数の複雑な機能を持った魔術具、というのは、職人によるワンオフとしても、そうそうお目にかかれるものではない。


「ステータスとか、見えるか?」

「大丈夫です」


 左腕を持ち上げて胸の前あたりまで持ってきて、ちょっと念じれば、半透明のボード上の映像が浮かぶ。

 その中には、ライセンスカードに記載された、冒険者個人のステータスが表記されている。

 主な内容は、名前、性別、種族、クラス、レベルなどだ。


 パーティー登録などでは、取り出して触れ合わせる必要はあるが、それ以外では外に出す必要はあまりない。

 協会のクエストを受ける際でも、体内に仕舞ったままの状態で手続きは可能だ。

 それ以外でも、使い道は多い。


「申請書には、ブレアの口座も申請してあるからな? 確認しろ」

「はい」


 冒険者向けの銀行機能は、協会が持つ機能の一つだ。

 どの町に行っても報酬が受け取り可能であったり、口座の引き出しが可能であったり、と利便性はかなり高い。

 協会が冒険者向けに行っているサービスは、すべて使えば、クエスト報酬の三割程度を天引きされる。

 ルディランズなどは、そういったサービスは多くを削って、現在の天引き率は五分程度だ。

 ブレアの方は、新人であることや、他いろいろあるので、今は一割五分程度。


「ライセンスカードは、レベルアップとかでもポイントもらえるからなー。強くなりたいんだったら、協会を積極的に利用するとよし」

「レベルですか」

「計っとくか?」

「いえ」


 冒険者のレベルは、それを計るための施設が存在する。

 俗に試験迷宮と呼ばれる、異界技術を使って作られた、特殊な施設だ。

 内部は、障害物も何もない、立方体の箱の中である。

 その壁や天井、床には、鍵のかかった扉がある。

 その扉を開けて、次の部屋に入れれば、レベルが一つ分上がる。

 扉はどの扉を開けてもいいが、扉を一つ開いて次の部屋へと進むごとに、扉には前の部屋で開けるために使った手段についての耐性がつく。


 力で破壊すれば、より頑丈になる。

 魔術で開ければ、魔術が効きにくくなる。

 技術で開錠すれば、より複雑な鍵がつく。

 といった具合だ。


 ともあれ、それでどの向きの扉も開けなくなるまで、迷宮を進む、というのが、レベルの計り方である。

 レベルは、進んだ部屋の数で決定する。


「ご主人様は、レベルはいくつなのですか?」

「俺? 二六」

「・・・・・・?」


 ブレアは首を傾げる。

 レベル二六というのは、低い。

 中堅冒険者の平均でも、もっと高いものだ。

 正直言えば、今のブレアでも、二〇くらいまでなら上げられる自信がある。


「意外か?」

「はい」

「でも、別に、試験迷宮は途中で切り上げることもできるしな」


 確かに、脱出はいつでもできる。

 諦めるまで挑戦できるのが、試験迷宮だ。

 だが、途中で切り上げるメリットは、特にない。


 ライセンスカードに刻まれるレベルは、高ければ高いほどに、その冒険者の能力の証明になる。

 加えて、前回のレベルを更新できれば、その分だけ、ライセンスカードの機能強化のためのポイントが手に入る。

 いくらかの挑戦料は取られるにしても、さほど高額でもないし、自分が成長したと思ったら、試験迷宮で腕試しをするのは、冒険者なら当たり前のことだ。


「なり立てのころに一回計ったきりだなあ」


 ルディランズは、のんきに笑っている。

 ただ、笑いごとではない、とブレアは思っていた。

 レベルの高さは、そのまま冒険者の強さ、能力を表す、というのは、一般的な常識だ。

 それだけに、『虹の飛島』という有名クランの初期メンバーでありながら、レベル二六程度、というのは、明らかに舐められるはずだ。


「ああ、心配ない」


 そんなことを、ブレアがルディランズに問えば、くくく、とルディランズは笑った。


「そういう舐めた態度取ったやつは、もう全員しつけてあるから」

「・・・・・・はあ」


 何と答えてよいか分からず、ブレアは沈黙した。

 そのブレアの頭を撫でて、


「ほれ、とりあえず、お前の装備揃えに行くぞ、と」

「あ、はい」


 向かう先は、職人街だ。

・試験迷宮

冒険者協会が、冒険者のレベルを計るために設置した迷宮。

異界技術を使っており、内部は異界となっている。

立方体の部屋の中、壁、天井、床のいずれかにある鍵のかかった扉を何らかの手段で開くことで進むことができる。

どの方向の扉をどの手段で開くかは自由だが、一つ開く度、次の扉を開くための難度が上がる。

最終的に、どれだけの部屋を開けることができたか、という数を、レベルとして計測する。

途中で切り上げることも可能だが、特にメリットはない。

現在の最大到達レベルは、世界最強の一角である、『剣聖』オシア・レビエナスの三九八。

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