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冒険者登録(1)

 帝国、レギナ領、都市『アビロア』。

 名物は、中央にそそり立つ尖塔、その名もそのまま、『アビロアの塔』。

 近隣の冒険者協会の出張所のまとめ役とも言える、冒険者協会支部があり、多くの冒険者が過ごす都市だ。


 支部では、朝の混雑が終わり、昼に入って、人の流れが落ち着いたころであった。

 ルディランズは、ブレアを連れて、協会を訪れていた。


「おいーす」


 そんな軽い声をかけられて、ミーシャが顔を上げる。


「ああ、ルディランズ君」

「どーも。昨日の申請の、結果を聞きに来たんだが」

「ああ、はいはい」


 ミーシャは、ごそごそと書類を出してくる。

 その際に、ちら、とブレアの方へと目をやった。


「そちらの子、ブレアさんだったわよね?」

「はい。ブレア・フェスです」


 こくり、と小さく頷いたブレアに、ミーシャは一枚の紙と、それからカードを差し出す。


「はい。こちら、新規のライセンスカードです」


 ブレアが、ライセンスカードを受け取る。

 ライセンスカードに刻まれるのは、その冒険者としての証明だ。


「で? もう一つの方は?」

「募集についてですけれど、とりあえず、昨日時点では、まだないですねえ」

「お? さすがに、昨日の今日じゃまだないか」

「ええ。募集を貼りだしたのも、昨日の夜ですから」

「ふむ」


 昨日、パーティーに参加する前に、ルディランズはミーシャにメンバー募集の手続きを頼んでいた。

 虹の飛島は、名を上げている途中。

 クランに昇格が認められたこともあって、これからに期待が持てる。

 おそらく、それなりに応募はあるはず、と踏んでいる。


「まあ、応募あったら、とりあえず拠点のエリーナさんに渡しといてくれ」

「ええ。分かっています」


 でも、とミーシャはブレアを見た。


「君も変わってますよ。メンバーに奴隷を入れるとか」

「そうか? 結構多いと思うが?」

「そういう人たちは、基本的に人数合わせ。ルディランズ君。その子をきっちり正規メンバーにするつもりでしょう?」

「そういう素質あり、と見てるぞ? むしろ、かなりの掘り出し物」

「・・・・・・ふうん?」


 なんとも言い難い目を向けるミーシャに、へん、とルディランズは笑って見せる。


「その割りには、その子、装備もきちんとしてないけれど」


 確かに、ブレアの服装は、昨日と同じ、少しぼろい薄手の衣服だけである。


「ライセンスカードもらってからの方が、いろいろ効率いいからなあ」

「気持ちはわからないでもないけれど、せめて服装ぐらいは、まともなものにしてあげなさい?」

「これから買い物だよ。ブレアは、前衛向きだから、中衛、もう一枚前衛を入れたいんだけどなあ」


 ルディランズは、パーティーリーダーとして、戦力をどう集めるか、と考えている。

 とはいえ、おそらく、ジェシカやアガットとは、ルディランズのパーティーの傾向は、大きく異なるだろう、という想定はある。


「まあ、ともあれ、虹の飛島はこれからだしな」

「期待していますよ」

「おうよ」


 用事は済んだ、とルディランズはミーシャのいる受付から離れる。


「ああ、それと応募者はできるだけ、新人メインで送っといて」

「・・・・・・分かりました」


 ミーシャに別れを告げ、ルディランズは支部を後にした。



*****



 服、と考えて、さてどうしたものか、とルディランズは考える。


 クランホームに戻れば、サポートチームがいる。

 武装の類ならば、あちらに頼んでもいい。

 衣服の類も、用意してもらおうと思えば、用意はできる。

 ただ、それでは、少々もったいなくもある。


「・・・・・・んー」


 この都市には、冒険者向けの生産者が多くいる。

 それらの店を探し、よさげなものを見つける、というのも、楽しみの一つではある。


「さて、とはいえ、まともな服が必要ってのは、そうだからな」

「はい?」


 ライセンスカードを見ていたブレアは、ルディランズを見上げて、首を傾げた。


「なくす、ということはないにしても、大事にしておけ。便利なものだからな」


 くく、と笑う。

 ライセンスカードは、複数の機能を持った魔術具だ。

 たとえば、体内への収納、経歴の自動記録、などは、最たるものだろう。

 ただ、ライセンスカードの最大の効能はそこではない。


「ライセンスカードは、持っているだけで、持ち主に微弱でも強化効果を与える。加えて、スキルもな」


 強化効果は、分かりやすい強化だ。

 スキル、というのは、ライセンスカードを持つことで得られる、特殊な技能のことだ。

 協会の依頼をこなすことで与えられるポイントを割り振ることで、これらの効果は強化が可能だ。

 つまり、高位ランクの冒険者ほど、ライセンスカードのおかげで強くなる。


「法に反しない限りは、デメリットはない。ちゃんと大事にすることな」

「はい」


 ふ、とルディランズは笑う。


「ともあれ、行くぞ。買い物だ」


 そして、ブレアを連れて、歩き出した。

 

・ライセンスカード

冒険者に、協会が発行する魔術具

個人の証明としての効果のほか、経歴の自動記録や、体内への収納などの効果を持つ。

また、持っているだけで所有者に強化効果を与える。

強化効果は、身体能力の強化や、耐性の強化などの効果がある。

加えて、協会が管理しているスキルの付与効果を持つ。

協会依頼をこなすことで得られるポイントを消費することで得られる汎用スキルと、本人の適性によって開花する、依存スキルの二種類がある。

依存スキルは、本人の適性によるところが大きく、ユニークなものも多い。

冒険者が、協会に登録する最大のメリット

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