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クラン昇格(1)

 『虹の飛島』

 ここ最近、名を上げてきている冒険者パーティーだ。

 冒険者としての活動は多岐にわたるが、名が知れ渡った契機については、人の口によく上る。


 番の野良竜種を、たった三人のパーティーで討伐した新進気鋭の冒険者の新星。


 竜種は、強大な種族だ。

 蜥蜴に分類されるワイバーンやリザード系のモンスターとは一線を画す。

 膨大な魔力量に裏打ちされた、強靭な肉体と強力な魔法行使能力。

 巨躯であり、生物の強度として考えるなら、人類など凌駕している。

 強大なものになると、討伐に万単位での兵士が必要なことを考えると、三人での討伐というのは群を抜いている。

 竜殺しとして名を馳せる一流冒険者ですら、本物の竜種と戦う時には、二桁以上の人数で挑むものだ。

 しかも、番の場合、単純に頭数が二倍になるわけではない。

 単体での竜種二頭より、番の二頭の方が圧倒的に手ごわいことは分かっている。

 番になることで、体内の魔力が混ざり合うことによる相乗効果か、あるいは単純に愛の力か。

 どちらにせよ、番の竜種は、一般的な竜種よりも危険度が格段に上なのだ。


 それを実質三人で討伐した。

 その功績で名を上げたこのパーティーは、今も躍進を続けている。



*****



―『虹の飛島』拠点・中央ホール―


「はい! 皆! ちゅうもーく!!」


 軽い調子で、ぱんぱん、と手を叩いて注目を集める女性がいる。

 褐色の肌、輝くような金の長髪と、宝石を思わせる碧の目の、気の強そうな美貌を持った女だ。

 上半身は、胸当てが形のいい胸を包み、その谷間を見せている。

 肩、背、脇腹は鱗甲型の装甲が包んでいるが、褐色の腹部は露出していて、形のいいへそが、しなやかな腹筋に囲まれているのが見える。

 下半身は、腰回りを同じように甲殻型の装甲が覆い、細身のレギンスと脚甲をかねたブーツが足元を覆っている。

 両腕は、指ぬきのグローブと籠手。

 すらりと滑らかなスタイルが、身体に張り付くような鱗甲型の装備によって明らかになっている。

 腰の後ろには、剣が二振り。

 双剣の剣士だ。


「発表です!」


 頭の後ろでくくった長髪が、女性が首を振る度、左右にしゃらしゃらと揺れて、室内の光を反射する。

 その光に照らされ、一層その女性は輝いて見えた。


 皆より一歩離れた位置に立つ女性に注目するのは、二十人余りの男女だ。

 鎧やローブに身を包み、剣や槍、魔術師の杖などを持った戦うものたちが十数人ほどと、作業着やエプロンを身につけた作業者が数人。

 総じて、皆若い。


「私が、『虹の飛島』を結成して! そのパーティーが、チームとなって、大活躍! チームランクは大躍進、です!」


 ふんす、と鼻息荒く、女性は宣言する。

 胸を張り、どやあ、という顔には、稚気があり、大人の女性の怜悧な美貌にそれが乗ると、愛らしさが見えて微笑ましい。


「この、ジェシカ・リランが、リーダーとして、このチームを引っ張ってきましたが! 私は、ここで、発表します!!」


 ジェシカは、一枚の書類を右手に握り、それを皆に見えるように突き出した。

 そして、溜めに溜めて、


「協会から! クラン昇格の認可が! 下りました!!」


 瞬間、囲む皆から、わ、と歓声が上がる。

 拍手や歓声、それを受け、得意満面、鼻高々、となっていたジェシカは、頃合いを見計らって、皆を落ち着かせる。

 そして、静かになったところで、口を開いた。


「これにともない、チーム編成を刷新します!」


 ざわ、と、空気が揺れる。


「まず、今までなあなあにしていた拠点ホームの管理、並びに装備品や道具の補給、点検、制作を担ってくれていたサポートメンバー」


 ホール中央に集まっていた面々とは、少し離れたところに集まっていた、作業着の面々。

 そこへ視線を向けたジェシカは、その中にいるエプロンドレスの女性へと、注目する。


「エリーヌさん」

「はい」


 呼びかけに、穏やかな調子で反応したのは、妙齢の美女である。

 侍女のお仕着せともいえる、紺色のエプロンドレス。

 濃い茶髪をまとめた、おだやかな風貌の女性だ。


「エリーヌさんをリーダーとして、サポートメンバーをサポートチームで一元化します。管理と統括、お願いします」

「承りました」


 品のある仕草で、すっと上半身を折る一礼。

 そして、顔を上げて、にっこりとした、慈愛ある満面の笑み。

 それに満足そうに頷き、ジェシカは一団へと向き直る。


「そして、冒険にメインで出るアタックチーム」


 ジェシカは、指を四本立てた。


「アタックチームは、四パーティーに分けます」


 内訳は、


「虹の飛島の初期メンバーである、私、ジェシカ・リランが一番隊のリーダー。アガット・ランドオールが二番隊のリーダー。それから・・・・・・」


 ジェシカは、ホール内を見回し、不機嫌に舌打ち。


「こんな大事な日に遅刻してやがるルディランズ・マラハイトを三番隊のリーダーにします」


 そんなリーダーの様子に、面々は苦笑を浮かべるのであった。

・冒険者のパーティ

4名以上でパーティ

パーティが2つでチーム(8名以上)

チームが2つでクラン(16名以上)

クランが2つになると大クランと呼ばれるようになる。

大クランが2つでギルド(64名以上)となる。

なお、ギルドが2つ以上合同でクエストにあたる場合は、レギオンと呼ばれる。

協会に登録する場合は、1名でもパーティとして申請する。

パーティ名に関しては適当

これは、冒険者がパーティの組み合わせをよく変えるため

なお、基本的に1人はソロ、2人はコンビ、3人はトリオ、パーティと呼ばれるのは、4人以上から。

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