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勇者一行の馬車移動とすれ違うもの

 がらごろがらごろ、と馬車が走っている。

 この世界で、馬車は割と乗り心地がいい。

 異世界の知識を持つ異相存在からもたらされる技術知識による、車そのものの発展。

 ゴム製のタイヤこそないものの、モンスターや魔獣などの素材を用いることで、ゴムタイヤより高性能なタイヤの開発に成功している。

 あるいは、サスペンションや、座席そのもののクッション性。

 魔術を用いて、軽く車体を浮かせることにより、衝撃を減らす、などの技術。

 何より、帝都と六大都市をつなぐ基幹街道をはじめとした主要街道は、コンクリートによる舗装が行われている。


 これらのことから、少なくとも都市間を移動する馬車については、かなり乗り心地がいい。


「高い馬車ならなおさらだ、と」

「どうした? ソウタ」

「いや、平和だなあ、と」


 ぽつん、とつぶやいた声に、ベイナスが反応した。

 それに対して、ソウタは肩をすくめて答える。


「魔王を討伐したかいがあったね」


 ははは、とベイナスは笑った。

 顔がいいよなあ、とその笑みをぼんやりと見る。

 主人公っていうのは、こういうやつのことを言うよな、とちょっとあきらめの入った思いを抱く。


 聖遣隊は、教会傘下の部隊だ。

 だから、その移動については、教会がいろいろ費用を出してくれる。

 今、聖遣隊が乗っている馬車もそうである。


「で、その魔王討伐の成果を報告するために、教会本部のある帝都に向かう、と」

「今回は、きっちり聖剣でトドメを刺したからね」


 腰に提げた聖剣の鞘を見せて、ベイナスは笑う。

 聖剣は、魔王を討伐するごとに力を増す。

 魔王の死後の呪いによる被害を出さないためにも、できれば聖剣で討伐することが望ましい。


 だから、魔王を聖剣で討伐した場合、その聖剣を教会本部のある帝都大聖堂へと持っていくことが、勇者には義務付けられている。

 現在教会が管理している聖剣の情報を更新し、また、聖剣が新たに得た力が何なのかを調べるためだ。

 そういうことは、教会本部の方が正確な調査ができる。


「・・・・・・これで、ベイナスが開けられる鍵の数も上がるか?」

「それは間違いない。今も、感覚で第四聖鍵まで開けられるのがわかるよ。開けないけどね」

「なんで?」

「あぶないからさ。・・・・・・鍵を一つ開く度に、私は死にかけているんだよ。これでもね」


 ははは、とベイナスは笑った。

 笑い事じゃねえだろ、とソウタなどは思うが、


「そんな難しいもんなん?」

「聖鍵の開放は、基本的には身体強化だ。ただ、その強化率が半端ないからね。そういうのは、反動が大きいし、制御も難しい。・・・・・・今回、教会本部へ向かうのは、あそこの訓練施設を使うためなのも、理由の一つなのさ」


 聞くところによると、第一聖鍵の開放時などは、軽くやってみたらいきなり空高く吹っ飛ばされたらしい。

 幸い、一命はとりとめたものの、運が悪ければ死んでいたそうだ。

 以降、新しい聖鍵の開放は、常に教会本部のある大聖堂併設の訓練場で行うようにしているという。


「あそこなら、治癒施設も完備しているからな」

「そんなに・・・・・・」

「まあ、魔王退治は、教会が主導している。その報告は、教皇猊下へ行うのが通例なのさ」


 ソウタは、へー、とうなづく。


「・・・・・・お?」


 そして、聖遣隊の馬車が別の馬車とすれ違った。

 それを、ソウタは目で追う。

 豪華な馬車だ。

 その周囲は、数十人の騎士たちによって囲まれ、移動していた。


「・・・・・・あれは・・・・・・」

「帝国貴族の馬車だな。それに、私兵団か」

「挨拶とかいらねえの?」

「街道ですれ違った程度で、いちいち足を止めてまで挨拶しろって? さすがにそれは、相手にも迷惑だよ」


 ベイナスが苦笑するのに、そういうもんかね、とソウタは首を傾げるのだった。



*****



「おや、教会の馬車か。・・・・・・あのマークは、聖遣隊だな」


 アルノーは、蒸留酒を注いだ杯をくるくると回しながら、のんびりとつぶやいた。


「は。先だって、アビロアで魔王討伐が成った、ということですし、それを成した第三聖遣隊でしょう」

「ふ。知っているとも。小生のかわいいかわいいベアトリスたんが参加した、という話だからな!」

「・・・・・・はあ・・・・・・」


 向かいに座るアランは、アルノーのテンションの落差についていけず、ぽかん、とするしかない。


「しかし、ベアトリスたん、ですか」

「そういえば、アラン君は、ベアトリスたんとは会ったことがあったかね?」

「いえ。私は修行で帝都を離れていましたし、帝都に戻ってきたときには、彼女はすでに冒険者として帝都を離れていましたから」

「そうだったかね」


 ほうほう、とうなづき、アルノーはにやり、と笑った。


「では、見とれるかもしれんな!」

「ははは。一応、私も閣下の血を引く身です。そうそう魅了されたりなどしません」

「ははは、そうだといいな」


 アルノーは、にこやかに笑い、酒杯を呷る。


「しかし閣下。御身自ら出向かれるほど、大事なのですか?」

「もちろん!」

「しかし、ベアトリス嬢とて、もう一人前の淑女でしょうに」

「いくつになっても、子供はかわいい! そして、いくつになっても、子孫をかわいがるのは、祖先の特権だとも!!」


 実に酒がうまい、とアルノーは快哉を叫ぶ。

 とても楽しそうだ。


「いやあ、楽しみだね」

「私も、見聞を広める機会をいただけて、うれしく思います」

「いいんだよ。君だって、小生のかわいい子孫だからね」

「は、光栄であります」


 旅路は続く。

・異相の技術

馬車に、ゴム製タイヤはないが、魔獣素材を利用したタイヤがある。

サスペンションやベアリングなど、快適な馬車を作る技術は異相存在からもたらされている。

異相存在によってもたらされる知識は、他にもいろいろあり、日常生活に浸透しているものも多い。

例えば、冷蔵庫や洗濯機など。

ただ、この世界には魔道具がある。

そのため、魔道具技術と組み合わせることで、一部の技術は相当に発展している。




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評価などいただけると励みになります。

よろしくお願いします。


別のも書いてます

『竜殺しの国の異邦人』

https://ncode.syosetu.com/n0793he/

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