6.四人全員が集まって-待機室にて-
全48話予定です
日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)
「あら、もう帰って来たの? もっとぉ、こってりぃ、しっかりぃーっと怒られてくるもんだと思ってたのに」
部屋に入るなり、軽い嫌味をぶつけてくるのは、トリシャだ。
「あれっ、トリシャがいる。どしたの?」
先程の話ではないが、トリシャは作戦が終わって帰投すると真っ先に一人でどこかへ行ってしまうのだが、今日は珍しく部屋に残っている。
よく見ればカズを含めて四人全員が集まっていた。
「今日は特別よ。あんだけ被弾したでしょ? おまけにリミッターは外すし。で、怒られてしょげてくるのを指さして笑ってやろうと思って」
相変わらず口の悪いトリシャを横目に、
「本当はレイリアさんの体を心配して残っていたんですよ。何しろリミッター解除なんて初めてですし」
すかさずトリシャが[違うわよ!]と反論するが、
「ありがとー、トリシャ、大好き!」
とスリスリしながら抱きついていく。
「何でそうなるのよ! 離れなさいってば! あんたたち、帰ってすぐに呼ばれたからまだ着替えが済んでないでしょ? 汗の、に、お、い、がつくじゃない!」
言われてみれば、カズとレイリアはまだパイロットスーツのままだ。他の二人は既に着替えを済ませている。多分、ついでにシャワーも浴びたのだろう、待機室にはほのかにシャンプーの香りがしている。
「えーっ、パイロットスーツは完全に外気を遮断するから臭わないはずだよ」
そう、彼や彼女たちがいつも着用しているスーツは機密性が高く、大事なところにはパットが入っているので大丈夫なのだが、それ以外の部分は体のラインがしっかりと浮き出ているくらい密着性が高く、そして薄い。そしてその性能はと言えば、ヘルメットさえしていればそのまま宇宙空間に出せるくらいのシロモノなのだ。これなら敵が毒物を使った攻撃をしても耐えられる。
だが、スーツの至る所に仕掛けられた爆薬といい、パイロット本人といい、機密のカタマリなのは間違いない。
「でもそんなスーツ、着てて気持ちのいいものじゃないでしょ? 早く着替えだけでも済ませなさい、っよ」
やっとレイリアを引きはがしたトリシャがカズに言う。
「ああ、そうするよ。シャワーは……俺はそんなに動いてないからなぁ、更衣室のカーテン越しに話をするのでもいいか?」
「あたしもシャワーはいいや」
ここの更衣室はパーテーション等で区切られておらず、上からいわゆる病院などで使われているナイロン製の黄色いカーテンが吊るしてあるだけである。しかも丈が膝のあたりまでで、その下は区切るものが何もない。なので、隣で誰かが着替えているとうっすらシルエットが見える、しかも足は丸見えというのもカズを悩ませたものだ。
だが、それにも理由は存在する。
パイロット同士、お互いを監視させる為である。
「私は構わないけど、っていうか何であたしから一番近いとこに入るのよ。他にも空いてるんだからそっち行けば? 何、見せようとしてるの?」
「んな事ないって。たかが布一枚、されど布一枚。声がよく聞こえたほうがいいだろ? それに俺の裸見てトリシャは興奮するのか?」
ちょっと挑発気味に振ると、
「そんな訳ないでしょ!! 誰があんたの裸なんかみて喜ぶの!?」
とまくし立ててくる。
それを今まで黙っていたクリスが、
「まあまあ、皆さん落ち着いて。もしもしレイリアさん? そこで覗こうとしない」
どさくさ紛れに下から覗こうとしているレイリアを隣のスペースに誘導しながらそう言う。
「クリスは本当に世話焼きだなぁ。将来、いいお嫁さんになるよ」
――まぁ、パイロットだからね。恋愛も結婚も禁止なんだけどさ。
「そんな事ないですよ。で、どうでした? 整備班の所とは別に司令部、出頭されたんですよね? 私が一緒に報告に伺いますって言ったら[当の本人を連れて来い!]って、えらく怒っていらっしゃるご様子でしたので」
話を軌道修正してくる。
「あれだけの損害、初めてだもの。やっぱり相当言われたんでしょ?」
トリシャも興味はあるようだ。
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