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5.レイドライバーという兵器-機密のカタマリ-

全48話予定です


 三人はクリスのレイドライバーに近づいていく。その間にヤマニは、近くで見ると意外と大きく見えるその機体を指足しながら、


「レイドライバーの構成は分かっていると思うが、全長八メートル、重量が……これはダメなやつだな、まぁそれなりにある、二足歩行する人型兵器だ」


 と、指さしながら言う。


「それくらいは分かりますぅ」


「まぁ、聞けや」


 ぶーたれるレイリアを一蹴し、


「主力火器はトリシャ以外はマシンガン。トリシャのがスナイパーライフル。あとは各自がハンドガンか。威力は、言わんでも分かるな?」


「いつもお世話になってます」


 レイリアが笑顔で答える。


「で、レイドライバーには幾つかの特徴がある。まず、コアにはベースとなるクロックが設定されていてそれに応じて制御されているのだが、これはオーバークロックする事が出来る。つまりリミッター解除だ。その副産物は、分かるな?」


 レイリアに問いかけると、


「はい、短時間でのレイドライバーの停止とパイロットへのダメージ」


 そう言いながら、レイリアは先程から頭とお腹の下のほうを押さえている。


「そうだ、お前が今押さえてるお腹、それに頭、お前らパイロットにはその二か所にプラグが埋め込まれている。理由は簡単だ、その二か所でバイタルを見ながらそれぞれ……これもダメか、まぁ、操縦しているという訳だ。だ、か、ら」


 と言うとレイリアを指して、


「お前らパイロットが敵に捕まるのもダメ、という訳だ。分かるな」


 そう言われたレイリアは、


「はい、パイロットスーツの至るところに爆薬が仕込まれていますし、レイドライバーにも爆薬が積まれていると聞きます。その起動権はここ、エルミダス基地司令と現場の隊長、カズにあると」


 素直に応じる。


「そう、機密が漏れそうになった時点で起爆される仕組みだ。次に、レイドライバーには[個体適性]があるという事だ、これも分かるか?」


 ヤマニが再び尋ねると、


「確か、レイドライバーのパイロットは専従だと聞きましたが」


「そう[適性]があってな、パイロットの入れ替えは不可能なんだ。理由は……これもダメだな」


「ダメですね、そういうもんだと思いなさい、レイリア」


 カズが助け舟を出す。


「で、だ。その次がもう一つの適性だ。パイロットは基本女性でないとダメだという事だ。お腹のプラグが刺さってる場所。それは……これは言ってもいいか、ズバリ子宮だ」


「えっと……」


 その声を察知して、


「何が言いたいかは分かるが、質問は禁止やぞ!」


 とヤマニがクギを刺す。


「まだ何も言ってないじゃんかぁ」


 またぶーたれるレイリアを横目に、


「お前が言いたいことくらい誰でも分かるわ。んで、だ。これが一番マズいんだが、背部への被弾。特に人間でいうところの[背中]は被弾したらいかんのだ。今回はたまたま当たったのが小火器のものと思われる弾丸だったからいいが、お前が[あんな敵]って言ってたその戦車の弾なぞ喰らったら一撃や」


 とまくし立てる。


 その時、ふとレイリアは、


「でも頭部にはちょっと大きく被弾しちゃったんだけど、それはいいの?」


 と聞いた。


「質問は……まぁ、いいか。頭部への被弾は基本的には大丈夫だ。そりゃあ、メインカメラやらソナーやらが収まってるんだ、こっちとしては壊してほしくないし、そんな事言ったらどこにも被弾はしてほしくないんだが、最悪、吹っ飛ばされてもええ。だが、背中はダメだ。あれはコアユニッ……」


「ヤマニさん!」


 思わずカズが声をかける。


「おお、そうだった、いかんいかん。とにかく自分と背中だけは守れよ。大事なんだから。そんでだな、最後にレイドライバーの整備は、それ自体が最高レベルに属する機密扱いだ。だから、ああやって戻ってきてもすぐに裏の作業スペースに移される。で、これでもかってくらいの護衛が建物の周りを監視してるちゅう訳だ。ウチ等にも当然だが守秘義務があるし、作業場に入るとき、出るときは全部ボディーチェックだ。しかもいまどき携帯持つのも許可制なんやぞ。それにトイレ我慢してても、な」


 忌々しそうにヤマニがぼやくのを見て、


「ヤマニさん、チビった事あるの?」


 とレイリアが聞く。


 ――それは……聞くものでは、ないよな?


「だれがチビったねん! あくまで[それだけ厳しい]っちゅう事や」


「危ない時はありましたけどね」


 と、横から声がする。


「うぉー! 何やねん! おるならおると言えよ、ビックリするぅ」


 ヤマニが驚くのは、いささか当然、とは言い難い。その人物は、少し前から[ヤマニ主任、ヤマニ主任!]と連呼していたのだから。


 ――この気配のなさがこの人の特徴なんだけどな。本当に声をかけられないと、忍び寄ってこられたら俺もビビる自信があるよ。このキーガンさんって人は今や、ヤマニさんの右腕といってもいいくらいの人物だ。そしてこれがなかなかにして美声のダンディーなんだよな。下手したらヤマニさんより見た目が年を重ねているかも知れない。


 カズはそんな事を考えながらキーガンを見る。


 確かに見た目的には年上、と言われてもおかしくない。それに、外見と声がミスマッチなヤマニと比べても、外見相応の声をしている。


 ――そう言えば、元はヘリの整備士だったって聞いたけど、あまりくわしくは話した事はないな。まぁ、軍隊ってものはそんなもんだろう。それを言い出したらトリシャだっていつも、帰ってきたら[あっ、お疲れさまでした]って言ったっきりどこかへ行ってしまうし。まぁ、でも今度機会があったらイロイロ話してみよう。


「あの時なんかは警備の人と俺たち整備士の一人がトイレの中まで付いていったんですから。で、ギリギリセーフってね。ヤマニ主任はひとたび集中すると止まりませんから。あと、話にリキが入ってるのは分かりますが、お国の言葉、出てますよ」


 そう言って何やら書類のようなものを持ってくる。


「おお、いかんいかん。あーあー、うん、もう大丈夫だ。で、用件はなんだ?」


「そちらのお話が済んでからでもいいですけど?」


 キーガンが逆に聞き返す。


「いや、説明は大体済んだ。だよな、カズよ?」


 とヤマニに問いかけられ、


「ええ、大体は。いいかと思います。ありがとうございました」


「……っとうございました」


 レイリアが遅れて反応する。


 ヤマニはキーガンと話をしながら去っていくが、去り際に[何ぃ、週末までに直せだあ?]と声が聞こえる。


 ――相変わらず大きな声で。なるほど、この大破した機体をあと数日で直せ、と。お疲れ様です。


「仕方ないです。守秘義務と命令違反は……」


 もうその頃には二人の声は聞こえなくなっていたが、そのあと何が続くかはカズにはよく分かっていた。


 ――一族皆殺しですもんね。しかし、これが本当に民主主義を謳っている、同盟連合のする事かね。


 そんな事を考えながら、レイリアを連れてパイロットの待機所がある建物に帰っていく。


全48話予定です


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