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4.世界情勢は-ヤマニとレイリア-

全48話予定です


毎日2話更新はちょっとしんどいので、日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)

 西暦ニ〇四五年、世界情勢は大きく三つの勢力に集約されていた。国土では陸上の約半分を占有する帝国、と呼ばれる勢力と、同じく三十五パーセントを占める同盟連合、残りの十五パーセントが共和国である。


 ちなみにカズたちは同盟連合に属している。


 軍事バランスは、といえばこれまた絶妙な関係を築いている。小競り合いを続ける帝国と同盟連合、漁夫の利を狙っているのか、はたまた何か別の考えがあるのか、沈黙を保って一切仕掛けてこない共和国。


 世界はその三つの勢力の絶妙なバランスの上に成り立っていた。


 そこに同盟連合が開発した新しい人型兵器、それがレイドライバーである。その性能は他の最新鋭の戦車や兵器に比べて、機動性、可搬性ともに圧倒的である。なんと言っても二足歩行をしている点でその優位は歴然としている。


 もちろん、帝国軍や共和国軍にも新兵器開発の意欲はあるだろうし、すでに実証段階にある兵器もあるのであろうが、いち早く人型を兵器にした点では同盟連合に一日の長がある。


 そして、その戦績は言うまでもなく、であろう。まだ実戦には四体しか投入出来てはいないが、すでに戦線が接しているこの地域の防衛ラインは同盟連合軍が落としたも同然であった。具体的な数でいえば、三個大隊以上の破壊をこの一週間で成功させたのだ。そう、彼らがいる今この場所も一週間前までは敵地だったのだから。


 そんな、前線基地の整備ドックでの事。


「何だと? システムクロックのリミッターを外しやがったバカがいるだと? 今すぐこっちに連れてこい!」


 報告に来た兵士にものすごい剣幕で怒っているのが、ヤマニという、レイドライバーの整備主任である。


 その風貌はいかにも整備士、といった感じではなく、スーツを着れば[サラリーマンです]と言っても通用しそうなすらっとした、いわゆる好青年である。だが、その口から出てくる言葉は、お世辞にも風貌にあっているとは言い難い、いわゆる[おやじ声]である。


「それが……」


 そんな、ギャップの声に口ごもる兵士に、


「どうしたんや? 今から連れて来いっつってんだろ」


 と言い放つが、


「それが、帰ってきてから具合が悪いとかで、その……医務班のところにですね……」


「んなもん、リミッター外したせいだろうが。いいから、首に縄付けてでも連れてこい!」


「はいっっ」


 慌ててその場をあとにする兵士を横目に、ヤマニはレイリアの乗っていたレイドライバーに目をやる。


 デッキに固定されているというか、半ば[吊られている]と言ったほうが正しいかも知れない。前述のとおり、大破に近いやられ方をしているので自立が難しく、まるで昆虫標本よろしくあちらこちらで固定されているのだ。その関節からは動力系の圧力装置の液体だろうか、何やらそこらかしこから粘性の高そうな液体が漏れている。


「しかしまぁ、相当痛かっただろうに。よく頑張ったな」


 ヤマニはそう呟くとレイドライバーの装甲を撫でた。


 と、ちょうどその場に、


「あのー、ヤマニ主任、ただ今参りましたが……」


 レイリアが頭とお腹を押さえながら現れる。


 と、


「なんた、カズも一緒か」


 レイリアとカズが二人でヤマニのところを訪れていた。


「ええ、一応責任者ですし。怒られるときは自分も立ち会わないと」


 そういうカズを置いておいて、


「いいか、レイリア。何で呼ばれたかは分かってるだろうな? プロセッサーを焼き切りかねないのになんて事をしたんだ!」


 もうすでに怒っている。いや、先程からイライラはしていたのだが。


 それを見てレイリアは一瞬ひるんだが、すぐに、


「そんなに怒んなくても、機体が使えなくなったら、いざとなればパージして脱出することくらい出来……」


 パチーン。


 すかさずヤマニのビンタが飛んで来る。


 ――だわな、流石にヤマニさん激怒してるし。


「いいか、重要な箇所に被弾した時点で一時引いて、他のやつのカバーを待つのが基本なのに何やっとんねん!」


「でも、あんな敵……」


 パチーン。


「でもも機動隊もないわ、バカが。機密のカタマリというのもあるが、それで死んだら元も子もないだろ!」


 と言い放ったあと、


「レイドライバーを他の機械とかと一緒にするな! レイドライバーにはな、レイドライバーには……」


 気が付くとカズはヤマニを止めていた。


「ヤマニさん。気持ちはよく分かりますがそのくらいで止めてください」


 ――それ以上は流石に。


「分かっとる。分かっとるが、それでも言わずにはいられんのだ。カズよ、お前も分かってるだろう?」


「ヤマニ主任!」


 本当なら一緒に怒られなければならないはずのカズが一喝する。ヤマニはまだ言い足りないという顔をしているが、カズが無言で首を振って駄目押しする。


「まぁ、いいわ。とりあえずお前らもレイドライバーも無事に戻ってきたからな。だが、リミッター解除や無茶な独断専行は二度とするなよ。それは他の隊員を信頼してない、ともとられかねないのだからな」


 ようやく冷静になったのか、ヤマニの口調が少し冷静になる。


「ヤマニさん、レイリアはまだ隊に来てから日も浅いですし、もう一度この兵器についてよく教えてみては?」


 カズがそう提案すると、


「そうだな。まぁ、隊発足当時からいるカズには耳タコだろうが、一度説明したほうがいいだろう。しかし」


 とまで言ったあと、


「前回もそうだったが、質問は禁止とする。というか、多分答えられないだろうからな。それだけこの機体は秘密のカタマリという訳だ」


 ヤマニはレイリアの機体を離れて、


「んじゃあ、クリスの機体で説明しようか」


全48話予定です


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