表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/48

11.戦闘は泥沼の様相を-敵兵士、レイドライバーって言ってたぞ-

全48話予定です


日曜~木曜は1話(18:00)ずつ、金曜と土曜は2話(18:00と19:00)をアップ予定です(例外あり)

 しばらくして、


「貴殿の意見通り、高射砲車両で牽制して損耗を防ぎ、撤退する」


 と無線が返ってきた。


 戦闘は泥沼の様相を呈してきた。


 レイドライバーは確かに機動性に優れているが、装甲は戦車よりは薄い。そんな中、こんな狭い峡谷での打ち合いである。


 幸いにもトリシャの持ってきていた炸薬散弾という、指定した距離か、敵に当たるかのどちらかの条件を満たすと爆発して周囲にさらに小型の爆裂弾をばらまくという新装備が功を奏したのか、右射線は何とかもう少しで黙らせる事が出来るというところまで来た。

 だが左側と正面は、流石に友軍戦車もいるとはいえ、厳しい事に変わりはないのは事実である。


 戦車は基本的に平面に対して威力を発揮する武器である。その構造上、どうしても上下には動きづらい。


 そしてゼロゼロやゼロスリーも、盾装備していたので大破までいかないものの、右だったり左だったりの肩や腕をやられている。現に空になったマシンガンの弾倉を換えるのに、本体を一度足に挟んで片手で換えているような状況だ。


 レイリアはというと、


「あたしが前に出るからゼロスリーは援護をお願い」


 と言ったかと思うと、おもむろに崖を登り始めた。


 確かに崖、というよりは正しく言うと、丘陵のその地形ならレイドライバーなら登坂が可能だ。まさに盾を前方にかざしながら、まるでそれがピッケルの役目でも果たしているかのように、しかも狙われにくいようにジグザグに登っていく。その間もマシンガンの斉射は続けていた。


 ここでも連携が取れている証拠に、どちらが言った訳でもないのにゼロワンが弾倉を交換する時に狙われないようにゼロスリーが援護する、そして弾倉を交換したあとはゼロスリーが交換するといった具合である。お互いに無意識に相手の装弾数を、そして自分の残り装弾数を計算しながら戦闘している。これは軍事教練の賜物だろう。


「ゼロワン、無事か?」


「もちろん、多少弾は喰らったけど、ううん、大丈夫。ちゃんとヤマニさんの忠告は聞いて背中は守ってるから。リミッターも外してないよ」


 こんな時のレイリアは本当に頼りになる。


 絶望を希望に変える、と言うと大げさかもしれない。だが、実際その動きは同型機とは思えないほどである。


 レイドライバーはパイロット専従なのは前述の通りなのだが、それぞれの機体に[個体同調率]というものがある。これは、その日のパイロットの体調だったりに左右されるのだが、一言で言うと[操縦に対しての機体の同調度]を示している。


 もちろん体調が悪くて操縦不能になるような事はないのだが、レイリアは常にその同調率が常に高い数値を保っている。


 具体値で言うと、まったくの手足のように扱える状態、つまり完全同調を百としたら、ほぼ九五以上は常に叩き出している。なので、他のレイドライバーよりも早く、よく動いているように見えるのだ。


 カズの恐れていた[全滅]の二文字はどうにか峠を越して、飛んで来る弾丸が散発的になってきて他の戦力に任せても大丈夫になった頃、カズはクリスを哨戒につかせながら沈黙しつつあった前面の敵戦車を一台一台見て回っていた。


 ほとんどが装甲を抜かれて炎を上げている中、一台のまだ動きそうな車両を見つけた。カズはその車両の砲身を銃で破壊し、さらにそれを突きつけながら外部マイクで、


「そこの敵戦車の兵士に告げる。おとなしく降伏しろ、そうすれば条約にのっとって捕虜としての扱いを保証する」


 そう告げると、中から怯えた兵士が出てきた。


「あれが例の、レイドライバーとかいう……。降伏する、撃たないでくれ」


 両手を上げて出てくる。それを友軍の、まだかろうじて残っていた兵士のトラックに合図して捕縛する。


 泥沼化していた戦場はようやく終結を見たのだ。


見ればトリシャ以外の各レイドライバーは満身創痍である。レイリアも、クリスの援護があったとはいえ左射線に向かって突っ込んだのだ、いくら盾を持っていたとはいえそこら中に弾の当たった跡がある。だが、幸いにも全機体とも動けなくなるような致命傷には至っていなかった。


「カズ、大丈夫?」


「隊長、大丈夫ですか?」


「まぁ、大丈夫だと思うけど」


 三者三様の呼びかけがあったのを、


「おれば大丈夫だから」


 と答えたものの、


「確かに敵兵士、レイドライバーって言ってたぞ」


 カズにはそれが腑に落ちなかったのだ。


全48話予定です


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ