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子猫の3兄妹

子猫の3兄妹 黒い影の襲来

作者: 所ゆたか

とら:

 どんよりと淀んだ空の下、僕たちが毛づくろいをしていたとき、それは、やって来た。頭の上に不吉なものを感じて、空を見上げる僕。空に浮かぶ黒い十字架が、だんだんと大きくなってきた。黒い影は、不機嫌そうに毛づくろいをしている しろを狙っていた。危ない。しろを助けなければ。だけど、恐怖に怯えた僕の足は、動かなかった。

 間一髪。しろは、悪意を剥き出しにした鋭い爪を避け、壁の下に逃れた。僕は、脱兎のごとく駆け寄り、壁の下にいる しろを探した。しろは、不安に怯える目を、僕に向けてきた。ほっとする僕。だが、安心するのは、まだ、早かった。

 上空で、大きくUターンした黒い影は、再び、襲ってきた。同じ過ちは繰り返さない。僕は、しろをかばうために、壁から飛び降りた。動けない。僕の足は、柔らかな泥にはまり込んでいた。足を引き抜くことはできる。しかし、間に合わない。漆黒の闇を宿した目が、僕を狙っていた。

 もう、だめだ。僕は、大きな目を思い切り閉じた。ドスンという音が、耳に響いたとき、僕の意識は天国に旅立った。



しろ:

 今日は、なんて、やな天気。わたしの自慢の白い毛が輝かない。コンクリートの壁の上で、毛づくろいをしているわたし。毛が鼻をくすぐる。

 くしゅん。わたしは、大きなくしゃみをして、その勢いで、壁から落ちる。心配そうに見つめる兄さん。大丈夫。猫だから平気。心配しないでね。

 兄さんは、気まぐれに、壁から降りてくる。あら、足が泥に、はまったみたい。ドジな兄さん。

 ふと、視線をずらすと、光るものが目に入る。わぁ、わたしの大好きな鏡。わたしは、迷わず駆け寄る。鏡に前足を置いて覗き込む。なんて、綺麗な瞳。宝石みたい。雲の隙間からこぼれる太陽のスポットライトを浴びるわたし。鏡から天国への一筋の光が導かれ、その道を下るように、お花が降ってくる。この道は、スターへの階段かな。



ミケ:

 本日は曇天なり。晴れ間一つ無く、雲が広がっています。なんだか、不吉です。あっ、大発見です。上空に未確認飛行物体が現れました。あれ、すいません。誤報です。どこにでもいるカラスです。どうも、キザなカラスさんらしく、くちばしに、お花をくわえているようです。お花を投げ、こちらに向かってきます。念のため、ミケは、土管の中に退避します。

 きゃー。しろちゃん、危うし。カラスの獰猛なくちばしが、しろちゃんの尻尾をかすめます。しろちゃんは、壁の下に避難したもようです。ミケは、カラスさんを諭します。

「カラスさん、あなたは、しろちゃんのファンなのでしょう。唇を奪うなら、もっと、ロマンチックに攻めないと、だめですよ」

 ガードマンのとらちゃんが、カラスさんに立ち向かいます。かっこいいです。さすが、ミケのお兄ちゃん。無敵のヒーローです。カラスさんは、とらちゃんに向かってきます。しろちゃんに、ふられたカラスさんは、ストーカーに変身したようです。

 ピンチ。とらちゃん、危うし。とらちゃんは、泥に、はまって動けません。カラスさんは、狂気に満ちた目を、とらちゃんに向けています。あっ、今、しろちゃんの足元から、必殺のビーム光線が放たれ、カラスさんの目を直撃したようです。カラスさんは、バランスを崩して、壁に激突しました。ミケの瞳の奥で、炎が燃え上がります。

「種族をこえた恋。素敵ですね。これは、試練ですよ」



雲の合間から差し込む太陽の光を浴びて、毛づくろいをしている3匹の姿があった。


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