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ポニーテールの勇者様  作者: 相葉和
93/206

093 コーラルを守るために

風の精霊を取り込んで空が飛べるようになったわたしは、巨大火の玉を退治すべく、火の玉に向かって飛行していた。

魔力を駆使してイメージ通りに飛べるわたしは、水の防御で空気抵抗による衝撃を緩和しながら、できるだけ高速で火の玉に向かっていった。


・・・さて、どうやって火の玉を食い止めようか。


「ねえ、サラちゃん、火の玉の落とし方なんだけどさ」

(ほー。ふーん・・・)

「サラちゃん、聞いてる?」

(ああ、これか・・・え?ユリ?何よ?)

「何って、話しかけているんですけど」

(ああ、そうなのね。何かしら?)


サラの反応がなんかおかしい。

おかしいというか怪しい。


「まさか・・・わたしの記憶、見てなかった?」

(見てたわよ)

「ちょっと!勝手に見ないでよ!」

(少しぐらいいいじゃないの。せっかくディーネちゃんにこんな面白いことがあるって教えてもらったんだもの。魔力をあげる代わりにそのぐらいの役得があってもいいでしょ)


くっ、ディーネちゃんめ、サラに何を吹き込んでいるのよ・・・


(さっきのユリの技と記憶の繋がりを追ってみたけど、あれは頭の毛が無い人の技が参考になっているのね。実に面白いわ。魔力は『気』というものに通じるのかしらね。そういえば今飛んでいるのも『気』の技を参考にしているのね。名前は確か舞空じゅ・・・)

「サラちゃん、そこまでよ。今は急ぎで大事な相談があるの」


これ以上、記憶を勝手に読まれてはたまらない。

いや、まあ別に読んでもいいんだけど、今は火の玉を落とすことが最優先だ。


「サラちゃん、あの火の玉だけど、例えば方向を逸らすのはどうかな?」

(んー。あの火の玉はおそらく指定の位置をめがけて勝手に飛んでるっぽいわ。だから軌道を逸しても元の方向に戻るんじゃないかしら。であれば方向を逸したところで無意味でしょうから、撃墜するしか無いんじゃないかしら)

「撃墜ね・・・」


あんなでっかいものを破壊するほどの魔力を紡ぎ出せるだろうか?


(ユリ、あなたは今、私と、ディーネちゃんの力を持っているのよ。それは分かるわよね?)

「はい、分かります」

(それがどういう事かも分かる?)


わたしは飛行を続けながら、サラの問いについて考えを巡らせた。


・・・わたしは風の精霊と水の精霊の御力を得ている。

つまり・・・どういうこと?

人ひとりが持つには過ぎた力だということは分かる。

だって、この星の大精霊って六つ柱ぐらいだっけ?

そのうち二つの力を借りているわけだし。


「えーと、身に余る力を持っている、と思います」

(まあ、正解だわね)


『正解』の言い方がちょっとアキムっぽくて、少し懐かしく、そして寂しく思った。

サラが解説を続けた。


(あなたはこの星を維持するための精霊の力の、三分の一を持っているのよ。自信を持ちなさい。自信は魔力に力を与えるわ。貴方は必ずあの忌々しい火の玉を破壊できる。信じでぶちかましなさい)

「・・・うん。わかった。ぶちかましてみる」

(あなたが昔から一生懸命練習していた、あの『かめは・・・』)

「言わせないわよ!」


この短時間でそこまで記憶を漁るとは・・・

サラちゃん恐るべし。


でもやるべきことがハッキリわかったわたしは飛行をやめ、空中で停止した。

停止した位置は、向かってくる巨大な火の玉の進路上だ。

陸からはそこそこ距離がある。

ここで火の玉を破壊できれば、破壊の衝撃による余波があったとしても、おそらくそれほどコーラルに被害は出ないだろう。

むしろ直撃に比べればかわいいものだ。

わたしはここで食い止める覚悟を決め、魔力を紡ぎ出した。


・・・イメージするんだ。

あの火の玉を破壊できるほどの攻撃力を持ったエネルギーの玉を作る・・・

どれくらいの大きさ?

ええい、めんどくさい。

とにかくできるだけ強力ででっかい玉になれ!


アキムからは魔力の効果的な使い方をたくさん教えてもらった。

偉大な師からの教えはわたしの中で生きている。


・・・持っている最大限の力で、魔術を行使する。

見ててください、アキム様!


わたしは両手を上に上げると、風と水の魔力を駆使して魔力の玉を紡ぎ出した。

そして魔力を注ぎ続け、玉をどんどん巨大化させていった。

風の精霊から借りた魔力をほぼ使い切るほどに、魔力を集中させていった。


(ユリ、一撃必殺よ。二撃目は無いわ。ぶちかましてやりなさい)

「うん!」


風の精霊の力で、魔力の玉を飛ばす道筋も作り出した。

道筋はまっすぐ火の玉に伸びている。

魔力の玉はそれに沿って飛ばせばいい。


・・・飛ばす方向、良し。行け!


わたしは、魔力の玉を火の玉に向けて撃ち出した。


どちらかといえば、『元気を分けてもらって放つ技』のほうに似た結果となったが、そんなことはどうでもよろしい。


わたしは衝撃に備えて水の防御を全身に厚めに張り、固唾を飲んで成り行きを見守った。


魔力の玉はまっすぐに火の玉に向けて直進し、そして衝突した。

とんでもない爆発音が火の玉を中心に起こり、激しく空気を震わせた。

魔力の玉は火の玉に直撃すると、そのまま火の玉の核に命中し、内部から激しい爆発を起こした。

台風のような暴風が吹き、海上も激しく荒れ、大波を引き起こした。

衝撃と波で、多少はニューロックの港町に被害が出るかもしれない。

でもこの程度ならむしろマシだろう。

住人は避難しているし、命を落とすような被害は出ないように思われた。


やがて、爆発による煙や水煙が収まると、もうそこに火の玉は存在していなかった。

火の玉は見事に粉砕されていた。

そして、火の玉はその勢いと爆発の威力で破片を盛大に飛ばし散らした。


「やった・・・やったよサラちゃん!」

(見事だったわよ、ユリ。私が力を貸しただけのことはあるわね。でもちょっとまずいわね・・・)

「え?・・・ああっ、破片がコーラルの方に!」


破片と言っても、もともと質量が大きい火の玉だ。

馬車や家ほどの大きさになった無数の破片が、コーラルの町に向けて大量に飛んでいるのだ。

このままでは、さながら多数の軍艦による艦砲射撃のような被害が出てしまうことだろう。

破片の勢いはかなりのもので、港付近だけではなく、住人が避難した内陸のほうにも破片による被害が及ぶだろう。


「まずいよ!大変だよ!急いで破片も食い止めないと!」

(でも数が数よ。それに追いかけても間に合わないわ)

「それでもよ!わたしのせいだし、できる限り食い止めなきゃ!」

(・・・そうね、やるだけやりましょう)


わたしは火の玉の破片を追いかけてニューロックに向けて全力で飛んだ。


・・・だめだ、破片の速度も速いし、本当に数が多すぎるよ。

それでも!


わたしは手を伸ばし、かつてナーズの浜辺で、水の精霊の力を借りて兵士達を薙ぎ払った光線を放った。

そして、幾つかの破片を粉砕することに成功した。


「おお、無意識だったけど普通に撃てたね・・・」


今まではそれほど高威力の遠距離攻撃を放つことはできなかったが、風の精霊の魔力も取り込んだおかげで、長射程で高威力の光線を放つことができるようになっていた。


「よーし、できる限り撃ち落と・・・あれれ・・・」


その時、ガクンと飛行速度が落ち、一気に力が抜ける感覚が襲ってきた。


「え、なんで・・・?」

(ユリ、魔力の使いすぎだわ。さっき火の玉を落とした時に使った魔力でほぼ底をついたわね。しばらくの間は回復が必要よ)

「そんな・・・今食い止めないといけないのに!」


飛ぶ力も弱くなり、フラフラしながら、わたしは間もなく町に降り注ぐ火の玉の破片を、恨めしく睨みつけ、悲愴な叫びを上げた。


「お願い・・・みんな逃げて!はやく!」


町まで聞こえるはずもないその叫びをあざ笑うかのように、まもなく町に多数の火の玉の破片が降り注ぐ。

その凄惨な光景をもうすぐ目の当たりにすることとなる。


みんな・・・ごめん・・・


その時だった。

町に火の玉の破片が着弾するその直前、破片は空中で急停止すると、街の反対側に弾き飛ばされたり、その場で粉々になっていった。

次々に降り注ぐ無数の破片も同様だった。

そして、勢いを失って止まった破片は、妙な動きで海や港付近に落ちていった。

まるで町に半円のバリアが張ってあり、その表面を転がり落ちるかのように、ポロポロと破片は落下していった。


「何?何が起きているの?サラちゃんが何かしてくれたの?」

(私じゃないわよ。今は魔力がすっからかんだし)

「サラちゃんじゃないなら、ディーネちゃん?」

(・・・そうね。ディーネちゃんの力も感じるわね。でもディーネちゃんは少し力を貸しているだけのようね)


ディーネだけではない?

では何だろうか。

アキム様が何か魔道具を残してくれていたとか?


考えている間も、コーラルの町を襲う火の玉の破片はすべて謎のバリアにブロックされ、町の安全は保たれ続けていた。


「すごい・・・理由はわからないけどすごいよ!助かった・・・」

(もしかしたら・・・そうね、たぶんそうだわ)

「サラちゃん、何か分かったの?」

(最初の巨大な火の玉。あれの襲撃を感じ取って目が覚めたのかも知れないわね)

「目が覚めた?何が?」


サラと話をしている間に、コーラルに飛来した全ての破片はバリアのようなものによって防がれ、今度こそ完全に安全な状態となった。

すると、薄っすらと、巨大な何かの形が現れ始めた。

それは徐々に人型を形作っていった。


・・・ああ、これはわたしも見覚えがある。

あれは魔石発掘の時にドルッケンの上空から見た・・・


そして、サラも確信を持って言った。


(コーラルの町を守ってくれたのは、間違いなく、土の精霊よ)


週明けに次話投稿予定です。


じわじわとですが、見てくださる方が増えてきたように思います。

レビュー、ブックマーク、評価、誤字指摘などいただけると大変励みになります。

よろしくお願いいたしますm(_ _)m

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